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Interview


新世紀未来科学

『新世紀未来科学』
ISBN:4-89350-395-2 C0040

金子隆一著、勝木雄二装幀、
小林伸光・細江道義イラスト

インタビューア:[雀部]

八幡書店 2800円 '01/2/28

内容:

第一章 宇宙開発
【軌道エレベータ】【エキゾチック・プロパルジョン】【太陽系開発】【テラフォーミング】【恒星間飛行】【宇宙改造】
第二章 医学
【人工冬眠】【臓器移植】【サイボーグ】【ヒト・クローン】【性転換】【脳移植】【不老不死】
第三章 生命科学
【有用生物の創生】【動物の知性化】【絶滅動物の復活】【バイオハザード】【人工進化】【宇宙生物学】【SETI】
第四章 コンピュータ/ロボット工学
【人工知能】【究極のコンピュータ】【汎用人型ロボット】【特殊環境ロボット】【マイクロ/ナノ・マシン】【フォン・ノイマン・マシン】
第五章 情報/通信
【ネットワーク社会】【新メディア】【新伝送媒体】【メモリー媒体】【人工言語】【脳/コンピュータ連接】【情報生命】【情報理論】
第六章 エネルギー
【核エネルギー】【太陽エネルギー】【量子ブラックホール】【対消滅】【フリー・エネルギー】
第七章 環境
【都市】【人口】【環境汚染】【地球温暖化】【気象制御】【宇宙的カタストロフィ】
第八章 ファーアウト物理
【慣性中和】【反重力】【フィールド推進】【テレポーテーション】【ワープ航法】【タイムマシン】【人間原理】

 以上のジャンル別に分類された各項目を取り上げている代表的SFの解説、及び実際の先端科学がどこまでSFに追いついているかを検証。



[雀部]  今月の著者インタビューは、2月28日に『新世紀未来科学』を出されたばかりの金子隆一先生です。金子先生よろしくお願いします。
 もうお一人、この本の出版元で、企画を立てられた八幡書房の、堀本さんです。
[金子]  こんな超マイナー出版物をとりあげていただき光栄です。
[雀部]  【宇宙開発】から【生命科学】、【ファーアウト物理】まで幅広い分野に渡って取り上げられているところが、金子先生の守備範囲の広さを物語っていて、素晴らしいです。私は、もう三回読みました。この分野では、SF作家でもあるフォワード博士の『SFはどこまで実現するか』(講談社ブルーバックス)が有名なのですが、ある意味『SFはどこまで実現するか』を超えたものに仕上がっていると思います。金子先生は、この本を書かれるとき意識されましたか?
[金子]  意識というより、最初から参照文献として重用していました。
 この種のファーアウト物理を扱った本としてこれをしのぐものは他に考えられませんし。本当は、最後の章は「全部この本を参照せよ」ですましてもよかったはずです。
[雀部]  そんなことはないと思いますが(笑)『SFはどこまで実現するか』には、既刊のSF本に関する記述はありませんし、やっぱり少しベクトルも違うようですね。
 読んでみて、これまたご専門でもある恐竜関係に単独で割かれた章が無いのですが、これは他にいっぱい恐竜関係のご著書は出されているせいなのでしょうか(笑)
[金子]  単に、恐竜学は未来科学とは直接結びつかないからです。【絶滅動物の復活】という節では多少ふれましたが、これは別に恐竜に限った話ではありませんし・・・。ただ、世間で、マイクル・クライトンがあのアイデアの創始者のように思われている点ははっきり正しておきたいですね。
[雀部]  なるほど、未来科学ではなくて、現在既に確立された学問なんですね。
 琥珀に封印された古代昆虫を利用して恐竜のクローンを作り上げるという考えを最初に発表したのは、本文中に言及のあるチャールズ・ペレグリーノ博士ですよね。
 '98年に『ダスト』という本が邦訳されましたが、面白かったです。なんせ実現可能な恒星間船のアイデアを提唱したり、海洋学者としてタイタニック号の探査計画に加わったり、宇宙生物学者としてエウロパやガニメデの表面下に海洋が存在するモデルを構築したりと、八面六臂の大変な科学者さんみたいですね。
 この本を執筆されるに当たって、一番ご苦労された点はどこでしょうか?
[金子]  それはもう、うろ覚えのSFの探索と内容の確認ですね。
 ムチャクチャ手間取りました。あんまりこれに手間取って執筆に時間がかかったため、前に書いた事を自分で忘れて同じ事を二回くり返して書いてしまった部分もあります。たとえば【テラフォーミング】と【気象制御】の所で、「失楽園」と「地軸変更計画」をともにとりあげたり。
[雀部]  では、反対に一番楽しかったのはどんなところでしょうか?
[金子]  実は同じ点なんです。この本は自分自身に対するSFオタク度テストでもあったわけで。特定のお題を出されてそれにまつわるSFをどれだけ思い出せるかというゲームとして大いに楽しみました。  しかし刊行後、しまったあれを忘れていたというのもいっぱいありましたが。
[雀部]  金子先生のお好きな作家(作家に限りませんが)をお聞かせ下さい。
[金子]  クラーク、フォワード、ベンフォード、バクスター、ニーヴン、セーガン、ベア、アンダースン、ブリッシュ、スターリング、ワトソン、ゼラズニイ、ヴォネガット、ベイリー、ラファティ他大勢。  日本では、小松、石原、堀、光瀬と並びます。
[雀部]  一般にハードSFの書き手と呼ばれている作家が多いようですね。
 ちょうど同じ時期にハードSF研の石原先生の『ハイウェイ惑星』が復刊されたのですが(2/28)、金子先生は、最初に読まれた時、どのような感じを受けられましか。私は、ちょうどSFマガジンの定期購読を始めた時('65/8)最初に買ったマガジンに掲載されていたので、すごく良く覚えています。道路のある惑星で進化した生命体は、必然的に車輪を持つようになるという論理は、中学生にも分かりやすく、はっとするほど新鮮でした。
[金子]  う〜ん。実を言うと最初に読んだのは中学生の時だったはずなんですが、その時の事は覚えてないんです。私がSFに本当の意味で目覚めたのは大学に入ってクラークの面白さに気づいてからで、その時以降に読み返した時の印象は鮮烈ですね。
 これをそのまま進化論の教科書にした方が、へたな本百冊読むよりずっと効果的です。ただ返す返すも残念なのは、この本で【人工進化】の項で、「ハイウェイ惑星」をとりあげるのを忘れていた事ですね。これは痛かった!!
[雀部]  人工的な環境で生まれた生物の進化という意味での【人工進化】ですね。
 それでは、金子先生は、ハードSF研に入会されたのと、執筆活動を始められたのは、どちらが早いのでしょうか?
[金子]  ちょうど同じ頃です。'82年ですから。私は中大SF研に在籍しつつそろそろ物を書き始めていました。
[雀部]  あ、そうなんですか。大学生のライターであられたんですね。
 この本は出版されて色々なところで話題になっているようですが、ハードSF研のメンバーの方々からの評判はいかがでしょうか。
[金子]  ふだんから広くハードSF研の方と交流があるわけではありませんが、直接私に感想をのべられた数人の方の反応はおおむね良好だったようです。少なくとも珍しい本だとは言ってくれました。  ただ、いろものさんさんからは【フィールド推進】の所でとりあげたネタが、実はトンデモであったという指摘はいただきましたが。
 また、大勢の方に言われた事ですが「今読みたくても読めない本をこんなにたくさん紹介されてもフラストレーションがたまるばかりだ」というのも身にしみました。
[雀部]  そうですね。文庫の雑誌化が言われて久しいです。最近は絶対に読まないと決めたSF本以外は、全部買うようにしていますが、置き場所が(泣)
 この本を出版された八幡書店の堀本さんにお聞きしますが、なぜこの企画を立てられたのか、なぜ金子先生に白羽の矢を立てら れたのか、よろしければお教え下さい。m(._.)m ペコリ
[堀本]  SFを読んでいると、所詮私のような文系人間(ディックあたりからSFに入っていっ た)のアタマでは、どこまでがホントの話で、どこまでがホラなのかわからないのが くやしくて……。そのような動機から、SFと実際の科学の境界線をひいてくれる本を 探していたんですが、これがないんですよね。ないなら作ろうって、五年前くらいに 思いたちました(要はコンプレックス解消本?)。
[雀部]  そうですね、あまりありませんね。ブルーバックスから出ているご自身がSF作家でもあるフォワード博士の『SFはどこまで実現するか』がこの分野の一押しですが、ちょっと古くなりましたもんね('88)
[堀本]  ジャンルを生命科学や医学にまで広げたものは皆無ですしね。それから企画を練り始めてからしばらくして、学研の最新科学論シリーズで金子先生が書かれたものに接し、文系の人間でも理解でき、明解でツボをおさえた文章、これだ! と思いました。
 また、SFでもサイエンスでもどっちでもこい! という著者は他に見当たらなかったので、先生にお願いしようと思ったのはごくごく自然なことでした。
 これだけの文字量、濃密な情報量、そしてクオリティの高さ……結構時間はかかりましたが、この企画は金子先生にしてはじめて可能だったのではないでしょうか?
[雀部]  なるほど、確かに壺にはまった人選ですね。文系のSFファンにも安心して薦められると思います。
 しかし、こんな企画をよく実現して下さりSFファンとしては感謝に堪えません。
 これからも、こういう分野の本を出されるご予定はあるのでしょうか?
[堀本]  この本が売れれば、続々出したいですね。何せSF関連本は売れないという現実。この本にしても、本来はタイトルに“SF”をつけたかったのですが、涙をのんでこのタイトルに。また、カバーデザインもこんなにビジネス書っぽくしなかった……。最近の若い人は、科学嫌い、SF喰わず嫌いだそうで、そんな人にも読んでもらいたい(切々たる思い)。
 ちなみに、5月刊行をめざして進行しているものは、SFに関連してはいますが、SFファンが喜ぶものかどうか……。
[雀部]  う〜む、楽しみですね。どのような内容なのですか?
 もしかして、他社に先を越されるといけないからまだ秘密とか(笑)
[堀本]  類書はないと思いますので、そういう意味では秘密です(含み笑)
[雀部]  それは、謎めいていて尚更期待できそうですね。
 金子先生、堀本さん、今回はお忙しいところインタビューに応じていただきありがとうございました。
 できますれば、これからも逆境(笑)にもめげず、この分野の充実にお力添えを頂きたいと思います。
[金子隆一]
科学ジャーナリスト、ハードSF研究家
'56年兵庫県生まれ。中央大学商学部卒。現在(有)コンタクト代表取締役。
ハードSF研所員。
古生物、生命史、宇宙科学などの分野を得意とし。ハードSFにも造詣が深い。
イベントやテレビの番組の企画でも活躍中。
著書に『恐竜学のすすめ』『軌道エレベータ』(共に裳華房)『ファースト・コンタクト』(文春文庫)『新恐竜伝説』(早川)『大絶滅』(実業之日本社)『哺乳類型爬虫類』(朝日新聞社)『テラフォーミング』『大進化する「進化論」』(NTT出版)など多数。
[雀部]
48歳、歯科医、SF者、ハードSF研所員。
ホームページは、http://www.sasabe.com/

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