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Author Interview

インタビューア:[雀部]&[児島]&[三上]&[ていとく]&[菊地]&[綾守]

『イリヤの空、UFOの夏 その1』
> 秋山瑞人著/駒都えーじイラスト
> ISBN 4-8402-1944-3
> メディアワークス電撃文庫
> 550円
> 2001.10.25発行
発端:
 中学二年の浅羽直之の夏休みは、UFOが出現するという園原基地の裏山での張り込みに費やされ、宿題等もろもろは当然お預けになっていた。明日から新学期が始まるという前の晩、開き直った直之は、せめてもの想い出にと学校のプールに忍び込んだ。驚いたことにそこには先客が居て、あろうことかそれは伊里野と名乗るカナヅチの可愛い女の子だった。泳ぎをマスター出来るように教えていた直之は、彼女の手首に卵の黄身大の金属が埋め込まれていることに気づくが……

『イリヤの空、UFOの夏 その2』
> 秋山瑞人著/駒都えーじイラスト
> ISBN 4-8402-1973-7
> メディアワークス電撃文庫
> 570円
> 2001.11.25発行
登場人物たち:
伊里野加奈 転校生。園原市立園原中学二年に編入。戦闘機パイロット。
浅羽直之 園原市立園原中学二年。新聞部員。真面目だが奥手
浅羽夕子 直之の妹。エキセントリックな性格
水前寺邦博 園原中三年。新聞部部長。超常現象マニア。将来の夢はCIA職員
須藤晶穂 直之の同級生。新聞部員。
椎名真由美 養護教諭。その実は、イリヤのバックアップ要員。

『イリヤの空、UFOの夏 その3』
> 秋山瑞人著/駒都えーじイラスト
> ISBN 4-8402-2173-1
> メディアワークス電撃文庫
> 570円
> 2002.9.25発行
その3の粗筋:
 三年生の水前寺と直之とその同級生の須藤晶穂の三人が所属する新聞部。そこに伊里野が加わったために生じた恋の鞘当てを描く「無銭飲食列伝」
 園原基地付近で起こった謎の爆発。その取材に赴いた水前寺の傍若無人(笑)の活躍を描く「水前寺応答せよ・前後編」
 まだ二年生の水前寺がネタとして超能力を追求する「番外編・ESP.の冬」

やがて悲しき物語

雀部 >  さて今月のインタビューは、9月に『イリヤの空、UFOの夏 その3』を出された秋山瑞人先生です。
 秋山先生よろしくお願いします。
秋山 >  秋山瑞人と申します。よろしくお願いいたします。
雀部 >  実は、昨年の7月号のブックレビューで『猫の地球儀』を取り上げさせて頂いたんですよ。で、過去のアクセスログを調べてみるとこのコーナーのヒット率がダントツに高くて、秋山先生の人気ぶりを改めて認識しました。
秋山 >  それって、そのページのどっかに「無修正」とか「18禁」とかいう単語が混じってませんでした?(笑) いや冗談はともかく、興味を持ってくれている人が多いというのは大変ありがたいことでありますね。
雀部 >  いえ「頑迷である」とか「猫のシーフォートだ」とかは入れた覚えがあるのですが(笑)
 秋山先生の著作というと、異星生物に蹂躙された地球が舞台だったり、ホロコースト後であろう世界が舞台だったりしますが、共通するのは面白くてやがて悲しき物語ということだと思います。そこでお聞きしたいのですが、これは最初から悲しい物語を書かれようと狙っていらっしゃるのでしょうか、それとも書いていくうちに悲しい物語になってしまうのでしょうか?
秋山 >  後者だと思います。特に意識してはいないんですけど、私自身がそういう話が好きなので、その好みがそのまま出てるのかな、とか。
雀部 >  前の質問に関連するのですが、『新世紀エヴァンゲリオン』以後、「通過できない青春もある」というスタンスに立った作品がヤングアダルト系にも増えてきていると思うのですが、秋山先生の作品も青春を通過出来ない(したくない)主人公が読者の共感を呼んでいると思います。また登場人物たちは、御約束のキャラのようであっても、ある意味読者の期待を裏切るキャラ設定ということで、ヤングアダルト系でもかなり先鋭化した物語設定だと思います。例えば、愛するものを守れない主人公たち、ちょっと壊れたヒロイン。私にとって象徴的だったのは、浅羽君が「十八時四十七分三十二秒」に手の届かない遙か上空のUFOと踊るマイム・マイム。イリヤとの埋めようとしても埋められない距離の切なさを感じてじ〜んときてしまいました。
秋山 >  キャラクターとかに関しても、基本的に「こうしてやろう」みたいな意識は特にないです。自分ではわりと類型的かなあと思ってるくらいで。ただ、ヤングアダルト系のレーベルだからこういう展開は避けようとかこのへんは書かずにすませようとか、そういうことはあまり考えないので、そのへんが尖がって見えるのかもしれません。
 「十八時四十七分三十二秒」のラストシーンについてはイメージ先行で、あの絵が見えたので『イリヤ』を書く目算が立った、みたいなところがあります。

キャラそのものは類型的だと思うんです

雀部 >  あ、そうなのですか。やはり印象に残るシーンだけのことはありますね。
 ヤングアダルト系の本というと、わりと強くて逞しい主人公と綺麗なおネェちゃんとか、最近では頼れる強いヒロインとちょっと頼りないが誠実そうな男の子(笑)とか、女の子の二人組が無茶をやるとか(爆)、割とパターン化していた印象がありました。その主人公たちに感情移入して、自分の好きな主人公なりヒロインなりが出てくる小説=好きな作家というような感じで。
 秋山先生の主人公たちは、家族とか友達にいたら困ってしまうようなキャラ、どちらかというと「おいおい」と言いたくなる(あ、ごめんなさい^^;)のに、あれだけの感動を呼ぶというのは大したものだと感心していますが、そこらあたりの匙加減は最初から考えられているのでしょうか?
 例えば『イリヤの空、UFOの夏』の水前寺君のかなり誇張されたキャラ設定なんかは?
秋山 >  んーとですね、やっぱキャラそのものは類型的だと思うんです。水前寺にしたってよくあるタイプであることに変わりはないと思うし。ただ、そのキャラの心情とかそのキャラの周囲の状況とかをびっちり書き込むようにはしているので、読んだときの「解像度」みたいなものが違うのかもしれません。よくあるキャラがよくあることをやっているだけでも、読んだときにそれが高い解像度で想像できれば新鮮味が違ってくる……といいなあ(笑)。いや、それが達成できているかどうかは自分でも心許ないし、目標みたいなものなんですけど。
雀部 >  よくあるキャラと言えばそういう気もしますが(笑)なんか現実に友達にいたら困るぞという気にさせるあたりが、秋山先生の上手さなんでしょうね。
 たぶん秋山先生は、ご自分の小説を書くにはどういう表現形式が良いかと考えられて、SF的な設定を持ち込まれていると思うのですが、その際特に気を付けられていることとかはおありでしょうか?
秋山 >  あ、SF的設定を持ち込む理由についてはですね、「考えた結果」ではなく「こういうの(も)好きだから」という理由が第一だと思います。ただ、当たり前ですけど設定というのはあくまでも設定にすぎないので、あんまりそればっかりがうるさくならないように気をつけてはいるつもりなんですが……。
雀部 >  なるほど確かに。キャラの立ち方と設定の妙が、秋山ワールドの最大の魅力だと私は思っておりますので、まさに!の感じです。
 では二番手には、『猫の地球儀』を五回読んで、ますますその魅力の虜になったとおっしゃられている児島さんにお願いします。では、児島さんよろしく。

表紙的に女の子型がよかろうなと(笑)

児島 >  初めまして、児島康子と申します。よろしくお願いいたします。
 初めて読んだ秋山先生の作品は『猫の地球儀』ですが、圧倒的な表現力、そしてそれにも増して心の奥底に響いて来る猫とロボットそれぞれの「想い」に、打ちのめされました。以来、ことあるごとにこの本を開いています。人によっては『猫の地球儀』はいつまでも心に持ち続ける、例えば『夏への扉』のような位置付けとなり得る作品だと思うのですが(単に猫が出てくるからでなく)、先生はこのことについてどう思われますか。
秋山 >  ううう、そんなに持ち上げられると続編が書きにくくなってしまう……(笑)。
 『猫』に限った話ではないのですが、書いてからずいぶん時間も経っているし、いまになって読み返すと何だか恥ずかしいものがあります。これは、良くも悪くも私が「変化している」ということなんでしょうけど。
児島 >  そもそもどうして、登場人物が猫とロボットと言う組み合わせだったのでしょうか。(もちろん、登場人物が人間であれば、インパクトは弱かったかと思いますが。)
秋山 >  『猫の地球儀』はですね、まず、私が大学生の頃に小説同人サークルで書いた同タイトル別内容の短編が母体になっています。放棄された軌道上のコロニーにヘンな猫が妙な社会を形成していて、そこに迷い込んでしまった人間の主人公が一匹の猫とともにコロニーから脱出しようとがんばる……みたいな話で、設定的にはタッド・ウイリアムズの『テイルチェイサーの歌』(ハヤカワFT)と、ロバート・A・ハインラインの『宇宙の孤児』(ハヤカワSF)の影響がモロです。猫が電波で意思疎通をするとか地球を「あの世」と思っているとか、そのへんの設定は当時からありましたが、ロボットはまだ出てきていませんでした。
 で、そいつを電撃文庫で長編化するにあたって、色々考えているうちにロボット混ぜてみようかなと。主人公のロボは表紙的に女の子型がよかろうなと(笑)。たしかそんな経緯だったと思います。
児島 >  『猫の地球儀』の登場人物では楽が一番好きなのですが、無邪気さであるとか、芯の強さであるとか、楽とクリスマスの設定には何か似通ったものがあるように思うのですが……。
秋山 >  むむ。楽はともかく、クリスマスの「性格」に関しては、私の中ではけっこう微妙なものがあったりして。
 ご質問とは少しズレちゃう話かもしれませんが、『猫の地球儀』って私的には「映像にできない話」というつもりで書いたもの、だったりします。事の顛末を人間の目で見て人間の言葉で語るとああなる、というか。作者がこんなこと語っちゃうのは、まるで「このギャグはどこが面白いかというと」って自分で説明してるみたいで無作法というか無様というか、そんな気はしますが……。
 たとえば、あの話の中では登場人物である猫が「ニヤリと笑った」りしますが、厳密に言うとそれは「人間の動作や心情に翻訳すれば『ニヤリと笑う』にあたることをその猫がやった」という意味であって、猫が本当に人間みたくニヤリと笑ったんじゃないわけです。こういうのを映像でやるのはものすごく大変ですが、文章ならそのあたりの説明を一切ぬきで、あえて「猫がニヤリと笑った」とやってしまうことが可能です。
 これがロボットであるクリスマスになるとコトはもはや悲劇的で、たとえあの世界の猫たちの目にさえ「無邪気」で「芯が強そう」に見えようとも、そんなのはバグにまみれたプログラムの判断や動作を「あえて表現すればそう」であるというだけで、奴には本当の意味での心なんてないのかもしれません。動くヌイグルミと会話する子供と一緒で、クリスマスの天気予報や震電の目ピカピカや日光月光のうなり声が何事かを語っているように思えたとしても、それは見る側あるいは聞く側(あるいは読む側)の想像が投影されているにすぎないのかも。ロボットというだけで何となく感じる物悲しさの核心って、やっぱりこのへんにあるんだろうと思います。ラストシーンでダンボール箱の中に入っているクリスマスと、道ばたに捨てられているボロっちい人形との間に果たして線は引けるのか、みたいな。
 だけど、ここまでくると「じゃあ『本当の意味での心』ってなんだ」とか、「そんなの人間同士でも事情は一緒ではないか」ってことになってきます。『猫』はそれが真ん中にくる話ではそもそもないし、そっち方向に本気で踏み込むと私の手に余ることになりそうな気がして、あんまり徹底せずに適当な線でお茶を濁しちゃったんですけどね。
児島 >  大反則の質問です。幽は地球儀に到達したのでしょうか。(これは本当に知りたくて、でも絶対に作者に聞いてはいけない質問だとわかっていますので、省いてくださって結構です。でもこれが一番思い入れて止まない点でもあったりします。)
秋山 >  あー(笑)。さて、どうなんでしょう。無事だといいんですけどね(笑)。

伊里野はものすごく書きづらいです

児島 >  この夏は『イリヤの空、UFOの夏』を三冊一気に読んで、遠い(マジで遠い^^;)学生時代に想いを馳せていました。現代っ子ばかりが出て来るお話なのに、こんなに懐かしい雰囲気を持っているのは、秋山先生の意図があってのことでしょうか。
秋山 >  それはたぶん、書いた私もおっさんだからだと思います(笑)。
 『イリヤ』は「今のこの世界とはちょっと違う現代」の話で、科学技術的には今より進んでいる部分もあるという設定ですが、いかにも今風っぽく見える雰囲気は意図的に排除したところもあります。舞台となる園原市には明確なモデルはなくて、今まで私が住んだことのある町の光景をパッチワークしてストーリー上必要な物を混ぜ込んだ合成像なんですが、やはり私自身が中学時代を過ごした山梨県の割合が大きいです。そのあたりの、わざと強調した田舎っぽい雰囲気がノスタルジーを喚起するのかもしれません。あと、新聞部の活動とか学園祭なんかは、中学生レベルでリアルに書いてもそれ自体はあんまりおもしろくならないので、大学生でもここまでやれんだろうというくらいに誇張しています。そのへんも、「こうだったらよかったなあ」的な気持ちを生むのかも。
児島 >  この作品では、特に伊里野可奈の性格に魅かれました。秋山先生がこれまでの作品中の女の子たちとはまるで違うタイプの女の子ですが、先生自身とても楽しんで書かれていらっしゃるのではないかと感じます。実際のところはいかがでしょうか。
秋山 >  ホントのこと言っちゃうとそれ逆です。伊里野はものすごく書きづらいです。
 『E.G.』のペスカトーレなんかもそうですが、あの手のキャラは普通に喋ってくれないし普通に反応してくれないしで、単純に動かす上での縛りがきついわけです。プロットを立てた段階で行動や台詞がある程度決まっている部分はいいんですけど、それ以外の部分でうっかり顔を出してくれちゃったりすると、いちいち考えながら書かなきゃいけなくなってほんとに苦しいです。伊里野は一応ヒロインだから全然出さないってわけにもいかないし(笑)。

私は「泣ける」派ド真ん中でした

三上 >  初めまして。
 目についたものは何でも読む、そのへんの単なる読者のみかみと申します。
 普段、わりときつい物も読んでいるつもりですが、『猫の地球儀』では物語に打ちのめされ、いっぱいいっぱい泣かされてしまいました。
 ですが、泣いたのは悲劇に対してだけではなく、幽の決意などから感動も受け取ったわけで、読後感が悪かったということは決してありませんでした。今後もこのようなきついけれど濃い作品を生み出してくださるのを楽しみにしております。
秋山 >  は。がんばります。
三上 >  ところで、SFを読んで泣いたといった経験はおありでしょうか?
秋山 >  ありがちなパターンで恐縮ですが、ぱっと思い出せるのは『アルジャーノンに花束を』ですか。あれって「泣ける」派と「泣けない」派がすっぱり分かれるみたいですが、私は「泣ける」派ド真ん中でした。
三上 >  それぞれの作品世界が、実は地続きである可能性はあるのでしょうか?
 どれもが微妙につながっていそうな、同じ世界のできごとで通りそうな気がしなくもないのですが。
 もし全く関係がないとしたら、希望があまり持てない状況下でのサバイバルということに何かこだわられているのでしょうか。
秋山 >  よく言われるんですが、地続きということはないです。『E.G.』と『鉄』はそれぞれ原作もあるわけですし。
 たぶん、私が似たような単語を作品にまたがって使い回したりするせいだと思います。『ルパン三世』の『さらば愛しきルパンよ』と『天空の城ラピュタ』には似たようなロボットが出てきますが、両者は別世界の話ですよね。あんな感じだと思っていただければ……(苦)。
三上 >  今までのところ、原作付きの作品も多いわけですが、原作者によって設定されていた部分と独自の設定との割合なんかを、それぞれ教えていただけないものでしょうか。
秋山 >  まず『E.G.』に関しては、最初にキャラや舞台の設定と大まかなストーリーをもらって、そこから自由に話を膨らませていきました。キャラで言えば、カデナ・メイプルリーフとかGARPなんかは私の後付けです。
 『鉄』については、執筆開始時点では原作の方が連載中だったこともあって、その時点で原作の方で明かされているキャラと設定を使ってサイドストーリーを一から作っていく、という感じでした。
 当時の私というのは今にも増してぺーぺーのチンピラで、とにかく無我夢中で「思いついたことは全部やる」という方向に突っ走っちゃったわけですが、原作つきの仕事をあれだけの自由度でやらせてもらえたというのはものすごくありがたいことだったと今さらながらに思っています。
三上 >  『イリヤの空、UFOの夏』について少年時代、やはり、UFOを探そうとして人工衛星に詳しくなってしまったり、仲間内で暗号でやりとりしたりというような日々を送っていらっしゃったのでしょうか。
 (私は、バスなどに乗るたびに、車内にテレパスがいる気がして、ガードしようとして無駄に頭に力を入れたりしたものですが)
秋山 >  それはしてないなあ(笑)。
 逆に、「そういうことをしたかった」という願望が『イリヤ』に反映している部分もあるのかもしれませんね。
三上 >  なんか瑣末なことで何ですが、榎本と木村の関係は、浅羽と水前寺との関係に似ていると思うのですが、今後の話で木村が間接的な会話以外に登場することはあるのでしょうか?
秋山 >  うーん、登場の予定はない、と思います。でもどうだろう、最終回とかで顔を出すかも。

これはもー完全に親父の影響です

雀部 >  では、秋山瑞人先生のファンサイトを開催されているていとくさんと菊地さん。秋山先生の熱烈なファンでいらっしゃる綾守さん、よろしくお願いします。
ていとく >  秋山先生には、一昨年のSF大会(2001年)の企画ではお世話になりました。
 こういう機会に呼んでいただきまして、アニマ・ソラリス様もどうもありがとうございます。
 早速ですが、質問の方に移らせていただきます。
 秋山作品は「ミリタリ色が濃い」と言われることがありますが、どういうきっかけで軍事方面へ興味を持たれたのでしょうか。
 結構、ミリタリ好きの方の間では良く出る話題なのですが。
秋山 >  これはもー完全に親父の影響です。
 うちの親父はオタクなのです。戦争映画とか大好きです。ガンダムとか宮崎アニメとかも昔から好きで、『めぐりあい宇宙』を一緒に劇場まで見にいった記憶があります。親父は映画の始まる時間というものにまったく頓着せず、途中だろうが何だろうが「次の回をもういっぺん最初から見りゃいいんだ」とばかりに映画館の中に入ってしまうタイプで、あのとき劇場内に入った私が最初に見たものは忘れもしない、デギン・ザビのグワジンが連邦の艦隊もろともコロニーレーザーでやられるシーンでした。
ていとく >  入館して、いきなり「あれを光らせてはいけないんだ!」とは、これは強烈な体験ですね。
 私なんかは、親が全然理解の無い世代だったので、お話を伺っていると大変うらやましい気がします。ああ、そんな父親が欲しかった…(泣)。
 さて、気を取り直して、次の質問に移らせていただきます。また、あんまり作品内容に関係ない質問になってしまうのですが。
 作品を執筆されるときに、その構成をどこまでお考えになって見えるでしょうか。
 また、執筆途中で展開が変わられることもあるのでしょうか。
秋山 >  事前に立てるプロットは、印刷すればペラで2〜3枚というところだと思います。キャラと話の進行を大づかみに決めて、あとは「予定は未定」という感じです。なので、細かい部分については途中で変わることもよくあります。
ていとく >  あまり、きっちりした設計図はお書きになられない、と言うことでしょうか。作品は「生き物」ですから、ある意味当然という感じですね。
 私の質問の最後としては、これは是非聞いておきたい、と言うことで…。
 ゲーム、アニメ、コミックなどの作品で「これは面白い」と思われた作品が(いわゆる「はまった」作品が)おありになりましたら、教えていただけないでしょうか。
秋山 >  私の物書き人生の始まりにウイリアム・ギブスンがいます。いわゆる「サイバーパンク・ムーブメント」には賛否両論がありますが、それ以前のSFをあんまり知らなかった当時の私は単純に「何じゃこりゃスゲー」と思いました。いま人に薦められるかと言われると「?」ですが、真似して書いてみたいと思った最初の出発点はやっぱりあのへんだと思います。
 アニメとコミックに関しては今も昔も手薄なんですが、ゲームは昔から大好きで、とりわけ対戦格闘ゲームには生活が傾くくらいにハマった口です。大学時代、ストIIとバーチャファイターのシリーズには一体幾らお金を使ったかわからない……。
ていとく >  秋山先生の作品の、独特の「格好良さ」、また格闘描写の原点を聞かせたいただいた…という気がします。
 来年のSF大会(2003年)でも秋山先生関係の企画を出させていただく予定ですので、その時にはまた、よろしくお願いいたします。

「鉄人定食」

菊地 >  『イリヤ』以降、ぐーんと認知度が高まったようで、コミケでも、SF・FT以外のスペースで秋山作品の同人誌を多数発見できるようになりました。
 それらをご覧になったご感想は?
秋山 >  実は、コミケって大学時代にサークルの販売要員として何度かスタッフ参加したことがあるくらいで、もう何年も足を運んでいません。なので、「最近けっこうあるらしい」というのを何となく聞いているだけで、現物を目にしたことはあまりないのです。ただ、コミケに関しては私よりもこつえーさんの力だよな、とも思ったり。
菊地 >  あの「鉄人定食」を再現する人がいたり、「鉄コミ」原作のお芝居('02/10/25〜27)が再演されたりとなにやら体育会系なファン活動(?)をよく目にします。
 わたしは、秋山作品に濃厚な冒険小説的なヒロイズム・ロマンティシズムのにおいを感じるので、さもありなんと思います。
雀部 >  「鉄人定食」!!私も見ました。ここはぜひ秋山先生のご感想もお聞きしたいです(笑)
秋山 >  いやあー(笑)、何と言うかこう、うれしいような悔しいような。
 うれしいのはもちろんですし、こういうのは今後もぜひぜひじゃんじゃんやってほしいのですが、やっぱモノ作る人間の端くれとして、「実はこっちの方がパワー負けしておりゃせんか」みたいな、何とも言えない微妙な気持ちも少しあるんです。うかうかしていられないですよねホントに。
綾守 >  甲乙はつけがたいと思うのですが、『イリヤ』のなかでいちばん筆が乗るキャラは誰でしょうか? (綾守の予想は「椎名真由美」です)
秋山 >  あー、そうですね。椎名真由美とか須藤晶穂とか西久保とか花村とか、そのへんの「脇役系」の方が書いててなごみますね。ちょっと特殊な位置にいるのが水前寺で、基本的には伊里野なんかと同じ「ネタを仕込まないと動かないキャラ」なんですが瞬間最大風速は一番、という感じです。
綾守 >  秋山作品には、魅力的な「姉御肌キャラ」が必ず登場しているように思うのですが(アマルスin『EG』・アンジェラin『鉄コミ』・円in『猫球』・晶穂&真由美in『イリア』)、失礼を承知で踏みこみますっ――タイプなのですか?
秋山 >  かも(笑)。
 なんだろう。多少は男っぽいセリフの方が書きやすいから、かな。

色々あって微妙だったりします

一同 >  最後にお聞きしたいのですが、次回作としては何が出る予定なのでしょうか?
 また、執筆予定のある作品がございましたら、よろしければお教え下さいませ。
秋山 >  次は『E.G.Final』、と言いたいところなんですが色々あって微妙だったりします。他に可能性が高いのは『猫』の続編か、でなければ電撃ゲーム小説大賞の応募作をばちっと書き直すか。それ以外では、まだ仮のタイトルも決まっていないのですが、「犬がいっぱい出てくる話」を仕込み中です。
一同 >  今回はお忙しいところ、長いインタビューに応じて頂きありがとうございました。
 これからもますます刺激的な作品を我々に読ませて下さいませ。
雀部 >  うれしいニュースが飛び込んで参りました。秋山先生の「おれはミサイル」が第14回「SFマガジン読者賞」受賞作に選出されました。秋山先生おめでとうございます。


[秋山瑞人]
'71年生、山梨出身。東京都某所在住。その某所が最近微妙に変わった。でもやっていることに変化はない。パソコンを前にひたすら苦悩する日々。
[雀部]
50歳、歯科医、SF者、ハードSF研所員。
ホームページは、http://www.sasabe.com/
[児島]
昨年11月に転職して、翻訳コーディネーターになりました。
仕事に追われる今日この頃。
もっぱらの心のなぐさめは、友人の3歳の娘とアニメの話で盛り上がることです。
[三上]
その辺に落ちている(?)本を片っ端から拾って読んできたため、ジャンル不問の悪食に。
いそがしい時・疲れている時ほど、なぜか読書量が増える。自分では否定したかったけど、やはり重症の活字中毒患者だったようです。
[ていとく]
SF、YA、架空戦記などのファン。それに関するサイトを運営中。S F大会では、秋山瑞人も含めた電撃文庫関係の自主企画をやることもあり。2003年のSF大会「T−CON」でも、たぶん企画をやる予定(ちょっと弱気)。
teitoku37@mail.goo.ne.jp
http://www.ipc-tokai.or.jp/‾tei-musyu/
[菊地研一郎]
74年12月24日生(D・ピース『1974 ジョーカー』の、あの悪夢的なラストの日。嬉しいような悲しいような…)。長崎生まれの神戸育ち、現在つくば市在住。秋山瑞人ファンページ「EGoism」管理人。主に同人活動によって秋山作品の布教を行う。
xmaseve74@msh.biglobe.ne.jp
http://www2u.biglobe.ne.jp/‾EGoism/
[綾守竜樹] Ayagami, Tatsuki
特殊系エロ作家。ジャンル不問の文字読みで、登場キャラクターの関係性における密度と温度に酔う。
「貧乏クジを引きがちな秀才」をこよなく愛でる。早くカデナに会いたいです……。
piper@mub.biglobe.ne.jp

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