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Author Interview

インタビュアー:[雀部]

『全力おしゃれ少女☆ツムギ part1 金星のドレスはだれが着る?』
> はのまきみ著/森倉円イラスト
> ISBN-13: 978-4083211690
> 集英社みらい文庫
> 620円
> 2013.8.10発行
 桃川紡は、学校の勉強はイマイチ苦手だけど、おしゃれがだ〜い好きな小学5年生。ファッションに関することなら何にでも全力投球!毎朝どんなコーディネートにするか考えたり、仲よしのお友達に似あいそうなお洋服を妄想したりするのって、め〜っちゃ楽しいよ。そんなある日。小さなコップみたいな形の銀細工を見つけたの。それを磨いてみたら、なんとびっくり……

雀部> 今月の著者インタビューは、8月10日に集英社から『全力おしゃれ少女☆ツムギ』を刊行された、はのまきみさんです。
 はのさんよろしくお願いします。
はの> なにとぞよろしくお願いします。SFじゃなくてすみません!
雀部> いえいえ。先月の著者インタビューは、最近は時代ミステリのご著作が多い和田はつ子先生ですし。
 はのさんには、なんどか「アニマ・ソラリス」に投稿して頂いてるんで、デビューは人ごととは思えません。おめでとうございます。
 ちなみに、プロデビュー前に「アニマ・ソラリス」に投稿下さった作家の方では、上田早夕里さん、てりさんに続き3人目ですね。
はの> どうもありがとうございます。「アニマ・ソラリス」は、もともとは上田先生のお名前で検索していたらインタビューにヒットして、それで知ったんです。ここに自分の小説を載せてもらえたらモチベーションあがるよなぁ、と思って投稿しました。三作も載せてもらえて嬉しいです。実際、モチベーションあがりましたし、すごく感謝しています。
雀部> 羽野蒔実名義で「ベアトリーチェを救うには」「イエロー・サークル」「老人と海と少年」と、三作品を掲載させて頂いているんですが、「イエロー・サークル」を読ませて頂いた感じではなんとなく男の方かなと思っていたんですよ(汗;)
  ちょっと小松左京先生の『果しなき……』に似た、あのハードSF風味がとても素敵で、これはたぶん相当なSFファンの方かなぁと想像していました。
はの>  男性と間違えていただけて、なんだか光栄です。ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアほどの力がないので、すぐにバレちゃいましたけど(笑)。私は小松先生の熱心な読者ではないのですが『果しなき……』は好きです。この手の、あちこちにぶんぶんとばされて、否が応でも俯瞰しなければならなくなるようなタイプの物語は好きです。
雀部> ティプトリー女史は、惜しい人を亡くしましたよね〜。
 他にお好きなSF作品、SF作家はいらっしゃいますか?
はの> 作家だと、カート・ヴォネガット(・ジュニア)。高校時代に現代アメリカ文学ブームがあって、そもそもSFというよりそっちのひとつとして、アーヴィングやらと同じように読み始めたんですけど。ヴォネガットは私の中ではブラック・ジャック先生に次ぐマイ・ヒーローです。私、ボコノン教徒なので。
雀部> お、私も一時ボコノン教徒でしたよ(笑)
 年を経て、だんだんとSF味が薄れて行くのが残念でしたが。
はの> 私も、後半はけっこう読み飛ばしてました(笑)。そんなわけで、SFは好きなのですがマニアというほどではないんです。ただ、わりとミーハーなので、SF本の解説や書評で触れられてる作品を「これは読んどかなきゃ。おもしろそう」と思って、次々と手を出していった結果、早川とか創元の本がやたらと増えてしまったと。そんな感じです。恐怖のSFスパイラルですね。
 マイベスト作品はわりと変動するほうですが、ここ10年ばかりコニー・ウィリスの『航路』が上位にいます。ウィリスの短編だと『デイジー、日だまりの中で』。あと、野尻抱介先生も好きです。未来やテクノロジーに対してためらいがなくて、登場人物がぐいぐい先に進んでいくので、どれを読んでも元気になれます。それから田中ロミオ先生の『人類は衰退しました』のファンです。大好き。
雀部> コニー・ウィリス女史、良いですねぇ。
 あれでもう少し短かったら、SFファンならずとも、誰にでも太鼓判をおして、お薦めできる作家さんです(笑)
はの> 一連のタイムトラベルものも、SFをあんまり意識せずに読めそうですよね。時間移動の手段云々はわりとどうでもいい扱いで、主に移動先での大冒険譚ですし。長いですけど(笑)。実際のウィリスさんがどのような方か存じ上げないのですが、私の中では「お喋り好きおばさん」っていうイメージなんですよ。「たけのこ煮すぎちゃったのよー」とか鍋ごとおすそわけしてくれそうな感じの。たぶん合ってないと思いますが。
 『航路』に関しては、手に汗握る展開もさることながら、肉体と意識が死へ向かう過程がああいった形で書かれていることに衝撃を受けました。タイタニック号というメタファーが生々しい。私が想像する死への過程にも近かったので、既視感すら覚えました。恐ろしかった……。
雀部> 『航路』は確かに傑作ですね。SFファンならずともお薦めできますし。
 この度、集英社みらい文庫から『全力おしゃれ少女☆ツムギ』を出されるようになった経緯を教えて頂けますか。
はの> みらい文庫大賞というのがありまして、その第1回に応募したんです。ジュブナイルSFで。最終で落ちてしまったんですが、その話に脇役で出てくる「オシャレ好きでミーハーな女の子」を主人公にして別のお話を書きませんかと、編集部の方に声をかけていただきました。
雀部> 「三十六光年のリリ」、最終選考まで残ったんですね。選考委員のあさのあつこさんは、岡山の方で、最近NHKのローカルニュースでも良くお見かけします。もちろん著作も読んだことがあります。ついでに言えば、旦那さんは歯科医なんですよ。
 選評で言うと、石崎洋司さんの『児童文庫とは児童が読みたがる本のことです』というのはなるほどなと納得しました。
 はのさんの『全力おしゃれ少女☆ツムギ』に関して言うと、内容からするとたぶん真のライバルは児童書ではなくて、小学生向けのアクセサリーとかお洒落用品なのでは?と感じました(服とかは両親が買ってくれると思うし、子供のお小遣いの使い道を考えると)
はの> 没作品のタイトルをご存じとは……恐縮です。
 あさの先生は岡山の方なんですね。岡山というと、岩井志麻子様のイメージが強烈すぎて!
 児童文庫のことで言うと、一冊書くことが決まった時、まず編集者の方に「児童文庫は、親が選んで買い与える本とは違います」みたいなことを教えてもらいました。
 子供は事前情報がないまま書店で本を選ぶので、手に取りたいと思わせるカバーイラストと、続きも読みたいと思わせる冒頭数ページが大事、とか。
 で、雀部さんのおっしゃるとおりで、たぶん気合いの入ったおしゃれ好きの子は、本よりも服やアクセサリーや小学生向けファッション雑誌が欲しいと思うんですよ。
 そもそも主人公の紡が「本を読むのは苦手」な子ですし(笑)。そんなわけで、実際に『ツムギ』を読んでくれるのは、特別おしゃれ好きっていうわけでもない、ごくごく普通の小学生も多いと思っています。そういう子達も面白く読めるお話というのを目標にしてます。
雀部> 岩井志麻子女史のイメージで、岡山県民を想像されると(汗;)
 しかし、今頃の小学生高学年の女の子って、そんなにファッションに興味がある子が多いんですか?
はの> 実は私もわかりません!
 早くから興味を持つ子もいるようですが、多分に親御さんの影響があると思います。小学生だと、親が買ってくれない服は着られないですし。ただ、昔よりおしゃれやファッションが身近になってるとは思います。子供向けブランドがたくさんあるし、ブランドじゃなくても、安くてかわいい服が大量に売られてます。選択肢が多いですよね。それに、昔は着せ替えっていうと紙やバービーなんかでやってましたが、今は服をコーディネートするゲームでどんどんアイテムを組み合わせていける。バーチャルにおいても選択肢が多いです(笑)。
 よくメディアで取り上げられているような、派手なファッションの小学生は、ごく一部です。全身ブランド服でかためたりするのは、親御さんの気合いが相当入ってないとできないですよね。
雀部> ですよね。お金(気合い)は相当かかるでしょう。
 そういえば、最近10歳の読モの女の子をTVでみました。私らの世代には信じられない(笑)
 『全力おしゃれ少女☆ツムギ』の登場人物は、悪い人は出てきませんが、これは編集の方からの要望もあったのでしょうか? 安心して読めるし読後感も良いので……
はの> キャラクターは特に編集者からの要望はなくて、自由にやらせていただきました。悪い人は……そういえば出てきてないですねー。悪い人をぎゃふんぎゃふん言わせまくるような話も、機会があったらやってみたいです。
雀部> 各女の子が、それぞれ得意分野を持っているところが一番素敵ですね。読者の女の子(ファッションに興味のある男の子も)が、どの子かに感情移入できそうで。
 将来、ファッション業界で名をあげた人が、『全力おしゃれ少女☆ツムギ』を読んで、この業界に入ったとか言って下さると、作者冥利に尽きますよね。
はの> そんな読者さんがいたら、もうね、本気で泣きます。号泣しますよ!
 私としては、ただ「かわいい服を着るのは楽しいね」だけじゃなくて、ものを作る人の話にしたかったんです。服を作って見せるまでの作業を1人の子供がやるのはちょっと高度すぎるし、あんまり面白くないので、アイデア担当・作成担当・モデル担当の3人に分けました。1人だけがスーパーな話じゃなくて『チャーリーズ・エンジェル』みたいだとかわいいかな?とか。
 もちろん、キャラを各種ご用意してどこかに引っかかっていただければラッキーという、汚れた大人の戦略みたいな部分もありますが(笑)。3人の中では、今のところなぜか琴子ちゃんの人気度が高いみたいなんです。想定外でびっくりしてます。
雀部> 琴子ちゃんて、地味で腐女史風だけど実はお裁縫が上手ってところが萌えポイント高いんでは。女の子は女の子に萌えないか(笑)
 小説家になろうと思われたのはいつ頃からなのでしょうか。
はの> 子供の頃から漠然と思っていて、中学・高校あたりからノートにぽろぽろ書いたりはしてました。誰にも見せずに。中二病的で完結もしないようなものを。ぽろぽろ書いていればいつか小説家になれるんじゃないかと、その頃は勘違いしてまして。なれるわけないですよねー。
 学生時代はとにかく遊びまくっていて、もしかしたら遊んでいるうちに小説家になれるんじゃないかと思ったんですけど、これも勘違いでした。
 今もまだ小説家とは言えないですよね。10冊くらい本を出せたらやっと小説家になったと思えるかもしれません。
雀部> 他の賞とかにも挑戦されていたのでしょうか。
はの> 20代の頃に10本くらい応募したことがあります。賞は2回いただきましたが、どちらも商業出版につながるような賞ではなかったので、受賞して終わりでした。そのうち「評価が怖いし、才能もなさそうだし、小説は読む方がいい」と思い始めて、応募するのをやめてしまったんです。その頃はフリーライターをしていたので、書くのは雑誌の記事で十分だな、と。
 でも、ある時期から、評価とか才能とかどうでもよく思えてきたんですよ。たぶん年を取って図々しくなったからだと思うんですけど。まずは他人に読んでもらわなくちゃと思って「文藝学校」という通信講座を受講して、いくつか短編を書きました。実は、そのうちのひとつが『ベアトリーチェ』です。
 で、書き始めたら、なぜか書く機会が増えていったんです。ライター時代の知人から「そういえば小説賞に応募したことあるって言ってたよね」みたいなかんじで、オーディオドラマの原案とウェブ小説の仕事をいただいたり。絵を描いている友人がデジタル絵本づくりに誘ってくれたり。みらい文庫大賞も、知人からの情報で知りました。

※下記、デジタル絵本です。峯悦子という友人がイラストを描いています。
「遠いひつじの国」ものあみん
「大人も読みたい絵本アワード」というイベントでyahoo!アプリ賞をいただきました。
雀部> 10作品ほど読んでみました>「デジタル絵本」
 結構バラエティに富んでますね。「遠いひつじの国」もそうなんですが、シュールな物語が多くて驚きました。対象年齢は、何歳くらいなんでしょうね。
はの> あのサイトに投稿している方は、子供向けだったりそうじゃなかったりと、まちまちみたいですよ。「遠いひつじの国」は……たぶん大人向けです。子供向けにするなら意識して作らないと、大人が作るものはたいてい大人向けになってしまう気がします。子供の視線ってなかなか思い出せないです。
雀部> 『全力おしゃれ少女☆ツムギ』の副題が“金星のドレスはだれが着る?”で、“part1”と書かれてますが、“part2”はもう執筆されているのですか。
はの> 今ちょうど作っているところですが、苦労しています。私は、それこそ子供の心は何十年も前に忘れてしまっているし、身近に子供もいないので、正直なところ、お子さん達にとって何が面白くて面白くないのかが、実感としてわかってないんです。こういうこと言うと、読んでくださった方をがっかりさせてしまいそうですけど。今は暗中模索の真っただ中です。暗すぎて側溝にはまったりしてます。
雀部> NHKの朝ドラ「カーネーション」も、ファッション業界が舞台で、けっこう視聴率も上げていたんで、需要はあると思います。
 ファッション業界が舞台のSFって、短編が少しあったような気がするくらいだから難しいんでしょうけど、挑戦してみて下さい(笑)←無責任です
はの> 「カーネーション」大好きでしたよ!! 私はほとんど朝ドラは観ないんですが、唯一全話制覇したのがあのドラマです。賞の応募作にお裁縫キャラを入れたのは、まさしく「カーネーション」の影響なんですよ。ファッションとSFも、おもしろそうですね。「ファッションで読み解く偽宇宙史」とか、なんだかよくわかりませんけど、そういうのでっちあげてみたいです(笑)。
雀部> ファッションセンスだけで宇宙征服しちゃうとか。『カエアンの聖衣』かよ(笑)
 期待してお待ちしますので、ぜひ頑張って書いて下さい。
はの> 『カエアンの聖衣』も面白いですよね! ああいう、バカでかっこよくておかしい、というかいろんな意味でおかしいだろっていう小説が書けたら最高ですよねー。あんな傑作を作れる気はぜんぜんしていないのが残念なのですが、やっぱりSFもひっそり書きたいと思っているので、書けたらまた投稿させてください。よろしくお願いします。
雀部> おお、それは楽しみにお待ちしております。そして、その方面の編集者の方の目にとまりSFデビューとかも期待!!
 今回は、インタビューに応じて頂きありがとうございました。
 投稿して下さった方が、プロデビューされるというのは、なんか誇らしい気分になれてうれしさ百倍なんですよ。


[はのまきみ]
東京都出身。『全力おしゃれ少女☆ツムギ』が、作家デビュー作品。「小学生の頃からお裁縫は苦手なのに、アレンジしたがり&つくってみたがりです。」
[雀部]
う〜む、女の子のファッションなんてわからないぞ(笑)
孫娘は一才半なんだけど、面白がってくれるかな。ともかく小学3年くらいには読ませてみたい。

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