帯に曰く「突如、ワープ航法が不可能になったセラエノ星系に取り残された工作艦明石ほかの艦船と150万の植民者たちを待ち受ける運命とは?」
帯に曰く「150万市民が孤立するセラエノ星系。そこから唯一ワープ可能だったアイレム星系で、工作艦明石が遭遇した文明の意外な正体とは?」
帯に曰く「明らかになるワープ航法の真実に翻弄されるセラエノ星系の人類。隣接星系に逼塞する異種知性イビスは150万市民たちの末路か?」
表4の帯に曰く“次巻完結『工作艦明石の孤独4』4月刊行予定”だそうです!
スマホ等で、書影・粗筋が表示されない方は「林譲治先生著者インタビュー関連書籍」から
今月の著者インタビューは、1月24日に『工作艦明石の孤独 3』を出された林譲治先生です。
遅くなりましたが、《星系出雲の兵站》シリーズ、第52回星雲賞と第41回日本SF大賞のダブル受賞おめでとうございます。
前回のインタビューから申し訳ないことに9年近く経ってしまいましたが、今回もよろしくお願いいたします。
よろしくお願い致します。
さて、『工作艦明石の孤独 1』の格好良い表紙画に描かれているのは、明石と作業艇のギラン・ビーなのでしょうか。とても気になります(笑)
明石とギラン・ビーです。イラストレーターの堀内さんの手によるものです。
ありがとうございます。
この良く考察された素敵な装画は、本書を読む上で非常に助けになりました。
ということで、イラストを担当された"Rey.Hori"こと堀内さんにもご参加いただけることになりました。
堀内さん、初めましてよろしくお願いいたします。
初めまして。お声掛け戴いて恐縮です。早速の嬉しいお言葉をありがとうございます。宜しくお願いします。
こちらこそよろしくお願いいたします。
「日本SF大賞特別企画:《星系出雲の兵站》イラストアンサー1, 2」を拝見すると、おぉここまで考えられた結果、あのイラストが出来るんだと感嘆しきりなのですが、『工作艦明石の孤独 1』の装画で苦労されたところはどこでしょうか。
苦労というかある意味で楽しんだところになりますが、1巻ではとにかく明石の形状ですね。新シリーズのタイトルを飾る主人公たる艦ですし、林先生の一つ前のシリーズの《大日本帝国の銀河》ではあまり宇宙船が描けなかったこともあって(笑)意気込んでいました。
破損した2隻の艦の艦首部分を切り出して1隻の艦にくっつけた、という設定なのでベースになる艦をまず粗く作りました。そこから明石を考えたわけですが、当初前向きの艦首2本を横並びにした双胴船風の前部に、後部はベース艦と同じ単胴船にした形を考えたのですが、戴いた原稿をよく読むとハンマー型とあったので、林先生にお聞きしたら2つの艦首は横向きに付くんだ、ということで(笑)。
でもハンマー型の艦首と言えば、某スター・ウォーズの某ブロッケード・ランナー(笑)になってしまいかねないので、細部のアレンジや後部のデザインで出来るだけ似ないように気をつけたつもりです。あと、横向きの2つの艦首の「(艦の加減速で外れてしまわない程度に)無理矢理くっつけた感」も作画カロリーの高いところです。
読者は、まず最初に堀内さんの表紙画を見ているから、そこは間違えないですね(笑)
無理矢理くっつけた感、中央部のあれかな。工学系は素人なのでよくわかりません。
「ブロッケード・ランナー」、分からなかったのでググってみたらこいつかと。
確かにハンマーヘッドですね。シュモクザメ系というか。「明石」は遠近法の関係か、あまりシュモクザメには見えないですね。
はい、そいつです(笑)。おっしゃる通り、構図で差別化したということもありますし、左右の突出部の断面を円形にしないとか、艦首中央を少し突き出すとか、機関部を大きくし過ぎないといったところも差別化ポイントです。
無理矢理感のほうは単純に、追加部分の切断面がいかにも「外しやすいところで切った」感じで幾つか開口部もほったらかし、滑らかなフェアリングなどを付けずに支持部材や配管を見せることで醸し出そうと試みています。
堀内さんに教えて頂いた明石の別アングルの艦影が見つかりました。これは確かにハンマーヘッドだけど、バックシャンは同意!(笑)
表紙画のもうひとつの艦影「ギラン・ビー」なのですが、こういう形だったんですね。個人的には、もっとディッシュ部分が大きいのかと想像してました(汗;)
左右の円盤部を結合している主船体部分が機器配置的には重要かな、と思ってこの部分を大きく取ったので平面形が長円に近づいてしまい、結果的に円盤感を少し削いでいますが、全体のサイズは作中の記述に沿っています。
確かに。→主船体部分が重要
『工作艦明石の孤独 2』の表紙画なんですが、手前がギラン・ビーで、奥の超デカいのがあれだとすると、間にあるのは探査衛星なのでしょうか?
遠近法を考慮するとけっこうな大きさだと思うのですが。
それは1巻7章で言及されているギラン・ビーの大気圏内飛行用のフェアリング(空力的に滑らかに成形された「外皮」)です。中央の厚い部分にギラン・ビーがすっぽり収まるサイズですが、それほど巨大というわけではありません。フェアリングと本体がずっと手前にあって、奥のナニはかなり向こうにあるのです。ちなみにギラン・ビー前面の4つの枠状のものが後付けされたフェアリングの取付けインタフェースです。上面にも似たような枠が付いています。
1巻と2巻のギラン・ビーの形状を説明した画像がありますので、ご参考にご覧下さい 。
あ、それに気が付かなかったとは(大汗;)←大気圏内飛行用のフェアリング
素のギラン・ビー君が衝突したんだろうという思い込みが(恥;)
しかし、これはお宝画像ですね。ガンダム世代には特に受けそう。
私はマジンガーZとかグレンダイザー世代(より前かも)なんですが、グレンダイザーのあれとか共通点がありそう。燃えます(笑)
その画像は「作った以上は見てもらいたい病」の発露なのですが、本文を楽しむ上で少しでも足しになれば嬉しいです。
読者の皆さん、堀内さんをフォローしておくとお宝画像が!
『工作艦明石の孤独 1』のあとがきによると、林先生は80年代の終わり頃から似たような構想を温めておられたとか。で、その構想の中の話にも、“事故を起こした有明と石狩を組み合わせて誕生した明石という工作艦が登場”と名称の由来が書いてありました。
最初、明石だから明石海峡のある明石市にちなんだ名前かと思ったのは内緒です(汗;)
ググったら日本海軍唯一の新造工作艦も「明石」というんですね。それはともかくとして、有明と石狩から二個一で出来た工作艦というのは、辺境の様々な事情を考えさせるネーミングだなあと思いました。
そもそもどこから思いついたかをよくよく考えると、建国の黎明期のイスラエルで、砲塔が壊れたシャーマン戦車と車体が壊れたシャーマン戦車を共に屑鉄として輸入し、使える砲塔と車体で稼働するシャーマン戦車を調達したという歴史からですね。
明石もスクラップになった二隻のクレスタ級の使える部分を繋ぎ合わせて完成させたのには、なんとそういう歴史的経緯があったとは(驚)
もう一つ、ワープの原理については良くわからないながらも、ワープできるからOKの精神で使用されてますが、この設定が面白かったです。
で、“ワープを制御するAIが因果律は存在しないと認知すると、相対性理論と絶対座標の矛盾を回避できるという因果律否定論”とからめると、人間がワープの原理を理解したらワープできなくなるんじゃないかと思いました。(ミンコフスキー空間において、人間が認知できない因果律が及ばない世界(非因果領域=光速度を超える世界線)が存在するのは確実視されてますし)
そこは四巻で。
おっと、三巻では片が付かないんですね。四巻を楽しみにお待ちします。
あと、地球圏から断絶した後のセラエノ星系の文明を維持するために設立されたマネジメント・コンビナートのアイデアも本格的に考察されていてとても面白かったです。
最近は「SFプロトタイピング」とか良く聞くようになったのですが、林先生は「ワンマンSFプロトタイピング」だと感じました。
日本では組織論の研究者くらいでしか知られていない概念でティール組織というものがあります。マネジメント・コンビナートとは基本的そうしたものを踏襲しています。国内でも一部企業で実践されています。
とはいえ日本は未だ権威主義的社会なので、こうした組織論的な話は拒否反応が強い。体育会系のマネジメントが21世紀でも大手を振っている。で、経済成長率はOECDの平均にも満たない。
全く知らない概念だったので泥縄で『[イラスト解説]ティール組織――新しい働き方のスタイル』という本を買ってみました←イラストと書いてあったから(汗;)
ティール組織の特徴は「組織を一つの生命体」として捉えているみたいで、医療業界の端くれとしては取っつきやすい概念ですが、よく分かってません(汗;;) 実践できれば、診療所等などでも効果がありそうなんですが。在宅介護支援の新しいモデルの成功例もあるようなので、介護認定審査会でも聞いてみようと思います。
二巻の終わりの方で、外科医のアイデアで“緊急性の高い問題解決のために、資金自身の判断で予算配分に自動性を持たせる”というのが出てきていて凄いなぁと感じたのですが、これなどもティール組織の考え方を外挿したもののように感じました。
ところで、登場人物に「狼群涼狐(艦長)、狼群妖虎(工作部長)」とか個性的な名前がでてくるのですが、これは“日本SF大賞特別企画:《星系出雲の兵站》特別編 キャラクター名の背景について”と同じような理由からなのでしょうか?
今から400年後の話なので、名前を成立させる社会的な諸条件が変わっているという意味合いで狼群姉妹は考えました。多分、400年後では姉妹で狼群と名乗るようなことさえもうないと思いますが、理解不能な名前では困りますので、そこは妥協ですね。
ありがとうございます。
『工作艦明石の孤独 2』で、椎名が目覚めて色々と推理するシーンが非常に論理的で凄く好きなのですが(面白かったし)、林先生も楽しんで書かれたんじゃないかと想像しているのですが、どうでしょうか?
アマゾンで「工作艦明石の孤独」で検索すると、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』も出てきます。これも冒頭の冷凍睡眠から覚めて、不確かな記憶を補完すべく色々推理するシーンがあって、同じくらい好きなんです。
椎名の覚醒シーンは「星系出雲の兵站」の時から考えていたのですが、特に使う場面もなく終わりました。なので『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を読んだ時には、正直、焦りました。
描写そのものは、病院勤務時代にICUの患者さんも検査していたので、その経験が参考になりました。
それは、読んでいて感じました→病院勤務の経験。
そういう所とかも含めて『プロジェクト・ヘイル・メアリー』とは推理のベクトルがちょっと違うのではないかと。それこそシンクロニシティなのではと思いました。
私もそこらあたりについておうかがいしたいと(笑)。ギラン・ビーと椎名ラパーナ様のネーミングについて。
最初に連想したのは「ギラン・バレー症候群」だというのは内緒です(汗;)
私の口からはダンバインとは言い難い(∩´∀`)∩
古代アニメのコレクターか研究者が名付け親とか(笑)
で、椎名ラパーナ様なんですが、一巻に比べると言及される回数が五倍増してます。これはストーリー展開を考えると当然なのですが。ギラン・ビーくんも倍増だし。(「名称出現頻度表」)
で、一巻を大いに賑わせてくれた松下紗理奈運用長が、1/3と大幅減なのが目を引きました。二巻でも重要な仕事をやったんですけどね。
この松下運用長が一巻ではっちゃけたのは、宇宙軍から民間(たぶんその逆も)への転身が珍しいことではないことを表すストーリーの都合上のことと読んだのですが、堀内さんはどう感じられましたでしょうか。
彼女は林先生のSFの近作に共通する「賢い女性」の系譜に連なるキャラクタですが、狼群妖虎パイセンと並んで得意分野が工学寄り(あるいは工学も網羅している)という点を新鮮に感じていますので、明石への転属はこの二人が並び立つための必然だったのでしょう。また彼女については2巻のあるシーンでの、人めがけて工具をブン投げるというチャーミングなところも大変素敵です(投げつけられたいとは言ってません(笑))。
2巻では椎名様に押されて登場場面は減ったかもしれませんが、3巻も含めて存在感は薄れていないと思っていますし、物語の完結に向けてのキーパーソンであって欲しいとも願っています。
女性キャラに関しては社会の側の変化も明らかに感じてます。基本的に私の書く話に登場する女性キャラは、同じ早川のAADDシリーズの頃から変わっていません。ただ受けての反応はかなり違っていました。
AADDの頃は、自立していて自分の考えをはっきりと表現する女性描写への反発というのが大変強かった。作品に登場する彼女たちは空想の産物ではなく、私の体験の中で出会った人たちを参考としていた。でも、「あんな女は実在しない」という反応はSFファンダムでも男性には多かったし、面と向かって「AADDのような社会には住みたくない」と言われたこともあります。
それが20年経過すると、「空想上の自立した女性」という人はほとんど見られず、現実の存在として認識されるようになりました。それだけ社会の意識に変化があったのでしょう。作家の方々の意識も今と昔ではずいぶん違う。
このあたりは周囲の方々に恵まれたということも大きい。一例をあげるなら、SF作家クラブの理事や会長を勤めさせてもらったときも、周囲の女性理事や事務局員、選考委員の方々の仕事ぶりを見ていたので、私の中では自立して聡明な女性というのは、不思議でも何でもない存在ではあります。
ちなみに女性キャラが登場人物で多いのはAADDの頃から意識していることで、ジェンダーギャップ指数がOECD諸国で最低グループの日本の現状を考えたら、有能な女性を多く出しても受ける印象は男性キャラとトントンだろうという予測のもとです。ただ最近は以前よりは50:50に近づけてはいます。
デジタルケイブでの「『星系出雲の兵站』シリーズ完結記念トークイベント」(会員のみ視聴可)で、MCの福田先生も、女性が活躍している作品が多いとおっしゃってましたね。
まあ、SFファンはある面非常に保守的だったですから。今は違うと思いますが。
また、椎名様関連で食事のことなんですが“ただ人間の消化器官や脳神経系の健康などを加味すると、噛むという動作も重要であった。”と書いてあり、我が意を得たりと(笑)。ちゃんと噛んでいると脳の血流が増すんですよ。
今年、血中の悪玉コレステロールが基準値を超してしまった私が言うのもあれなのですが(汗;)
あの状況でコミュニケーションを成立するためのリソースとしては人体しかないだろう、というのがあります。
あと脳神経外科で脳波を計測していて、表面的には意思の疎通はできないが、表情もあれば、脳波も活発にうごいている人もいて、脳波計でも脳の活動はわかっても意思はわからないという体験も背景にはあったのだといまは思います。
それは、リアル『ジョニーは戦場へ行った』ですね。
(ここまで1,2巻を読んでの感想。ここから3巻を読んでの感想。)
『工作艦明石の孤独 3』の装画ですが、最初見た時「左下のデルタ型のは何だろう」とコメント付けた記憶があります。でもよく見ると三角錐型なんですね。
ということは、これは「E2」がアイレムステーションに接近しつつあるところでしょうか?
いえ、3巻カバー画の左下、帯に隠れる位置に見えているのはE1です。2巻で登場した、外装が白いのと黒いのの2機ある無人探査機E1/E2の白いほうです。そのE1が接近しつつあるのはアイレムステーションではなく……3巻を未読の方がいらっしゃるといけないので敢えて伏せますが、同巻のある章でその存在が明らかになる宇宙船です。
一般にカバー画を描く時に私は、戴いた原稿のどのシーンを絵にするか(あるいはどのシーンでもない妄想画にするか)について可能な限り複数の案をお示しして選んで戴くようにしているのですが、この3巻のカバーでは林先生のほうからモチーフや構図について「この章のこの船をこの向きで」というご要望を戴いた(今のところ)珍しい例なのです。
ただ、この船を描くことになった時点ではその登場章がまだ拝読出来る状態になっていなかったため、船の形などは林先生とメールをやり取りして定めて行きました。またこの船はある事情で半ば解体され、荒っぽく改造され、更に経年劣化した姿にする必要があったので、その感じを出すのに作画カロリーを使いました。船の各部が暗い影の中に沈んでいるのは、船がほぼ死んでいることを表す演出の一つです。
ありゃ、E1君とあのボロい宇宙船だったのか。ひょっとして間違えていたのは、読者の中で私だけかな(恥;)
帯の煽り文句に“明らかになるワープ航法の真実に翻弄されるセラエノ星系の人類。隣接星系に逼塞する異種知性イビスは150万市民たちの末路か?”とあります。ほとんど内容を説明しちゃってるんですけど、イビスがそこそこの文明を維持しているらしいことを鑑みると、「末路」という否定的とも思える単語は4巻目の展開と関係あるのかと勘ぐってしまいました(笑)
ワープ航法の原理が明らかになるのではなく、予想外の事象が明らかになって、どう解釈すればいいか途方にくれるのが三巻です。四巻では(言及する人のいない惑星バスラの生態系とか)を含め、諸々明らかになります。古今の時間SFに喧嘩売って終わります。
ワームホールを用いたタイムパラドックスの論文などを読んだことがありますが、結局のところ思考実験なので考えねばならない基本的な問題を無視している。タイムマシンものは大抵そう。
惑星バスラの生態系については、悩ましいところですね。明らかにイビスの邪魔をしているとしか思えないので、個人的には根幹的な問題とリンクしているような気がしてます。
堀内さんは、読んでどう感じられましたか?
当初は『星系出雲の兵站−遠征−』に描かれたような、他の現象とは独立した人造環境の暴走のようなものを想定して読んでいましたが、今は私もそう感じています>根幹的な問題とのリンク。未読の方のために敢えて引用しませんが、3巻で最後から2番めの妖虎の台詞もあって予断を許さない気もしつつ、バスラの環境の件、ワープ不能問題や時間の件、ひょっとするとボイドの来歴やワープをそのように発現させている時空の構造までもが(あるいはこのうちの幾つかが)ひとつながりなのではないか、そうだとしたらノケゾるなあ(笑)、という期待をここに来て抱いています。ただの期待過多だったらごめんなさいですが(笑)。
イビスと人類は概ね似たような技術水準で、これをどう解釈するか。ある部分は必然であり、技術が低すぎればワープなど不可能だし、技術が十分高度ならワープには制約はない。あるレベルの文明だけがボイドに到達することになる。
(以下ネタバレ気味につき白フォント)
堀内さんからも話が出ましたが、ラストで妖虎が「我々は何かに導かれている、 あるいは何かのシナリオで動いているのかもしれない。」とつぶやくシーンが何を示唆しているか、四巻で明らかになるのでしょうが、楽しみです。
時間の流れが違うというか、非因果領域の認知については、なにものも光速を超えることが出来ないという時間線と独立している限りにおいて可能な気がしてます。例えば、「人間が死ぬ直前、一瞬未来を垣間視る」ような事例です。
まだワープ航法の「真実」は明らかにされてないし、「“認知不能のワープを含めて全体のシナリオは、誰が意思決定を行うかが決まった時点で、刺激に対する反応の蓋然性から一意に決まる”という推測がワープ現象の本丸に肉薄しているのではないか」と書かれているということは、もう一波乱ありそうですね。
惑星バスラの生態系とシンメトリーな構造です。これもあってイビスは地下で生活しているのですが、ここは彼らの宇宙観に関わる部分です。
どうシンメトリーなのかうかがいたいところですが、ネタバレになりそうなので楽しみに4巻をお待ちします(笑)
たぶんその宇宙観が、古今東西の時間SFとは全く違っているのではないのかなぁ。
3巻を読ませて頂いた感じと4巻目が待っていることを勘案すると、「起承転結」の「転」まで進んだように思いました。となると4巻目待ちですね(汗;)
で、細かいところをつついて申し訳ないのですが、帰還するE2での西園寺の席がぼほ中央に位置するのは、やはり安全面を考慮してのことでしょうか。
慣習的に船長は中間席ということですね。昔、さる有人宇宙船の研究会に参加させていただいたことがあるのですが、航空技術者と宇宙技術者で有人飛行に関する認識が全然違う。
非力なロケットで汲々しているロケット側はできるだけ軽くしようとするが、航空機側は安全のために質量を増やしたがる。
そうした議論で圧巻はキャビンの設計。ロケット側は大きな空間に全員載せようとする。航空機側は客室からコクピットを完全独立させるべきという。理由は事故が起きてもコクピットのパイロットだけでも生存していれば、事故分析が大きく進むから。パイロットは乗客が全滅しても生き残らねばならないという発想でした。E2の乗員の扱いが雑なのは、その辺りの文化の継承もありますね。
細部に神は宿るということで、ちょっとした記述でリアリティが増すので感心したシーンでした。しかし、それ以上の意味(文化的継承)もあったんですね。
当サイト編集部でそっち方面にも詳しいおおむらさんに聞いてみたところ、
「直接知ってるわけではないですが、言われてみるとそういう傾向あるかもです。ロケットが重量をとにかく削りたがるのは事実で、多段式にする関係上、ペイロードは一箇所に集めざるを得ません。航空機は逆に積荷を分散させて置くことで水平方向の重量配分が一定になるようにしますね。空港で荷物の重量を計るのはそのためです。前が重くても、後ろが重くても、左右で重さのバランスが崩れても飛行機は飛びにくくなるので。
宇宙船の場合は、事故がおきれば必ず全滅なので、分散させるメリットはないですね。与圧部を複数設けることになれば重量の増加につながるし。」
とのことでした。
件の勉強会にはISASの長友先生や航空機に関しては鳥養先生なども参加なさってました。まだSSTOに幻想を抱けた時代。
着陸脚についてもロケット側が「最小構成3脚」を唱えている中で、航空機側から「3脚なら一つの不都合でロケットが転倒する。安全のために二系統6脚にすべき」という意見が出ました。
基本的にロケット側が構想を発表し、航空機側が意見を言うという構図だったのですが、航空機側の意見を入れるとロケットがどんどん重くなり、勉強会終盤ではロケット側の研究者の周辺がどんよりとした空気に覆われておりました。
おおむらさんから
「二系統6脚に笑いました。そうそう、安全のためには必ず冗長を組むというのが原則なので。(あやふやな記憶では、スペースシャトルは安全系を5系統組んでいたと聞いた気がしますが……。)」
1,2,3巻の帯の煽り文句に共通して“150万”というセラエノ星系の人口が出てくるのですが、これが10万でもなく1000万でもないあたりに格段の理由があるような気がしますがいかがでしょうか。滋賀県、山口県が140万人くらいですね(実感がわく地元岡山県は190万人。自動車、石油関連、製鉄、小型家電工場等あります)。
だいたい札幌の人口ですね。札幌と旭川だけで文明を維持できるか?みたいな。食料はなんとかなりそうだが工業らしい工業はない。
札幌と旭川だったとは。工業が貧弱というところがポイントなんですね。
林先生、堀内さん、今回はお忙しい中、著者インタビューに応じて頂きありがとうございました。
3巻の帯に“次巻完結『工作艦明石の孤独4』4月刊行予定”の文字がありました。4巻の刊行を首を長くしてお待ちいたします。
次号も可能ならば、引き続き林先生の《大日本帝国の銀河》・《星系出雲の兵站》シリーズ及び、昨年出版された『不可視の網』についてもおうかがいする予定にしています。