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Author Interview

『エンデュミオン エンデュミオン』
> 平谷美樹著
> ISBN 4-89456-258-8 C0293
> 角川春樹事務所
> 1390円
> 2000/6/8

 21世紀初頭、地球と月世界上で不可思議な事件が頻発する。共通項は"セレネ"と"エンデュミオン"だったが、その関連に気付いたものは居なかった。
 月面基地エンデュミオンの完成に関わった元宇宙飛行士たちは、その事件が、人類の市域から放逐され月を最後の砦とする神々の意志であることを知り、大統領の依頼にのって、セレネとの交わりを感じる少年ヤンとともに、再び月へと旅立つのだが……

 神々の扱い方からは、ちょっとブラッドベリ氏の雰囲気が感じられますが、展開はけっこうハードで重厚そのもの。そのギャップを気にしなければ、楽しめる作品です。


『エリ・エリ』
> 平谷美樹著
> ISBN 4-89456-911-6 C0093
> 角川春樹事務所
> 1900円
> 2001/7/8

 第一回小松左京賞受賞作品。
 東北の寒村歌詠崎の教会の神父である榊和人は、心のどこかで<神の不在>を感じ、己の信仰に自信をなくしかけていた。
 宇宙船の推進システムの特許を持ち、SF作家でもあるクレメンタインは、ラグランジュ点で進行中の外宇宙探査プロジェクトへの参加を認められ、その準備に明け暮れていた。精神病医であるタウトは、アプダクション<宇宙人による誘拐>の治療専門医として名を馳せていたが、その実、自分自身も宇宙人によって皮下にインプラントを埋め込まれたことを信じていた。
 プロジェクトが進むある日、地球が大量のニュートリノ嵐に見舞われ、その原因が、太陽系外から侵入してきた人工物体によるものと推定された。

 小松左京賞らしい重厚なテーマの作品です。前半は、地味だけど興味深い進行を見せますが、地球外からの巨大宇宙船(?)が登場するにおよび、一気にSFらしくなってきます。でも、実際のファーストコンタクトはこんなものかも知れないなという感想もある反面、もっとドラマチックな終わり方は出来なかったのかとも思います。


『運河の果て』
> 平谷美樹著
> ISBN 4-89456-928-0 C0093
> 角川春樹事務所
> 1900円
> 2002/4/8

 火星に住むアニス・ソーヤーは、男性でも女性でもなく、ある時期にどちらかを選択(あるいはどちらも選択せずに)できる遺伝子を持った<モラトリアム>という性別猶予者だった。<モラトリアム>は、自分の性別を選ぶために「導師」と呼ばれる先輩の元<モラトリアム>に半年から一年師事し、その後、性決定するのが習わしとなっていた。
 アニスが選んだ一人は、考古学者のトシオ・イサカ・ヴァインズ。彼は、かつて火星に文明を築き上げていたと考えられている原火星人の遺跡を発掘しては、生命としての痕跡をあまり残していない火星人が、宇宙空間に逃れたのかどうか考えあぐねていた。
 もう一人は、政治家リン・ワースリー。彼女は、火星以遠の外惑星域に存在する恒久基地や宇宙都市群の人間で組織された自治政府「外惑星連合暫定自治区」の議員として、木星の衛星カリストの近くの宇宙都市「アヴァロン群島」に住み、外惑星が地球や火星といった地上に暮らす人々のから独立するためには、木星に外殻を作ってそこに住むしかないという持論を展開し、それに必要な小惑星帯の鉱物採掘権を獲得しようとしていたが、奇妙な誘拐事件が発生し、その事件を追うことに。
 トシオを導師に選んだアニスは、彼と共に原火星人の遺跡調査のために運河をさかのぼっていくのだった。

 ジェンダーと政治的陰謀を背景に、様々な<選択>の形態を描くことによって人類を行く末を照らし出した意欲作です。

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