今年のアメリカ夏のブロックバスター紹介もこれが最後となりました。しかし、タイトルをご覧になればおわかりのように、最初の2本はこの原稿がアップされる頃には日本でも公開済み・・・イヤな世の中になったものです(笑)。とはいえ、どちらもまだ公開したてですので、『新鮮さ』という面ではギリギリOKだと思います。そこで、今週は『Jurassic park III』『Planet of the apes』、そしてこれは日本では秋公開の『Final Fantasy』のいかにもエスエフ・ファンタジー・ドット・コムらしい3本のレビューをお届けしましょう。
■Jurassic Park III
冷えこみつつあった今年の全米夏興行の救世主。公開から5日間で100億円稼いでほぼ直接製作費を回収!恐竜フランチャイズの強さを見せつけました。監督のジョー・ジョンストンは製作総指揮スピルバーグの『A.I.』(アメリカではコケた部類)をはるかに凌ぐ成績に戸惑ってたりするのかも。
ストーリー的にはPart1の続編に近いのですが、今回は無駄なサイドストーリーは一切無し。まさに、『ユニバーサルスタジオ』のアトラクションそのものの映画です。導入の20分がややダルイのですが、Part1の登場人物の意外なその後が語られたりしますので、まあ許しましょう。しかし、舞台が例のサイトBへ移ってからは危機また危機の連続。危機からの脱出があまりにもご都合主義ではありますが、そこはそれ、アトラクションですから。そのあたりを気にしなければ存分に楽しめます。
映像的にはこれまでのシリーズよりは洗練されてきているのでしょうが、昨年のディズニー『ダイナソー』やTVシリーズ『Walking
With Dinosaurs』の後でもあり、特に革新的な映像とまでは感じられません。ただ、このシリーズでこれまでやってこなかった恐竜好きにはお待ちかねの二つのシーンが存分に入っていますので、これまで肩透かしだったという方も満足感は得られるのでは?(3作目でやっと・・・って気もしますが。)無駄な部分を削ぎ落としてテンポよく進むのですが、最後の15分がいかんせん足踏み状態。主人公たちを絶体絶命の危機から救うには信じられないほどセコイ展開であったのが残念。
でも、後半が単なるゴジラになってしまったスピルバーグの『JP2』よりは楽しめるのではないでしょうか。92分という上映時間の短さまでまさにスリルライド(爆)!頭を空っぽにして映像と音響の真っ只中に飛び込んじゃいましょう!評価は中盤の盛りあがりに★★★☆。
■Planet of the apes
鬼才ティム・バートンが往年の名作をリメイクならぬ、『リイメージ』した意欲作。興行的にも公開最初の週末3日間では85億円とJPIIIに負けない好調さを見せています。ティム・バートン作品自体は最終的に100億円前後しか稼げないフランチャイズなのですが、それが爆発したところはやはり『猿の惑星』の名前に負うところが多いのでしょう。
個人的には『スリーピーホロウ』に見られたようなカルト的な彼独自の想像力豊かなビジュアルを求めていたのですが、その面では期待を裏切られました。いつもの芸術的なセットは影を潜めて、他の監督が撮ったものと大差ない雰囲気。確かにあまりエキセントリックな雰囲気を感じてしまうと、観客がひいてしますから、この作品ではある意味では普通に仕上げることが重要だったかもしれません。それでも、もうすこし『バートン印』を感じられるものを含んでいて欲しかったですねー。
基本的なストーリーラインは旧作と大きく変わることはないのですが、さすがにビジュアル面では最先端の技術が詰めこまれており、見応えがあります。特にチンパンジー将軍のメイクアップはメイクアップとは思えないほど。それでも元の人間の雰囲気が感じられないワケでもなく、日系人のTagawaさんが演じる元軍人猿はどことなくオリエンタルなのでありました。また、猿軍団が4つ足で疾走するシーンはサーカスのパフォーマーから猿の走り方を習った役者をワイヤーで吊って、しかもそれをデジタルコピーして大群に仕上げた・・・ということもあって、そのスピード感が見事でありますね。宇宙シーンはいまやどうこうと批評するのがはばかられるほど自然に出来あがっていますが、冒頭の宇宙ステーションのミニチュアだけはちょいと出来具合に疑問。作りこみがアッサリしすぎ。
私自身はストーリー面では、なぜか常にハイテンションなチンパン将軍についていけなかったり、宗教面がやたら前面にでてきたり、人権擁護派のメスザルの登場が胡散臭い・・・等、もうひとつ乗り切れないものを感じてしまいました。しかし、『猿の惑星』と言えばやはりラストのオチ。・・・旧作の衝撃を期待してしまうとその落差に打ちのめされてしまいます。難しいのは十分理解できますが、これじゃあ、TV番組の映画パロディ並みじゃあないでしょうか・・・そんなわけで評価は★★★どまり。アメリカの観客も『失笑』しておりました。
■Final Fantasy - The Spirits Within
日本資本の映画としてはこれまでの最大スクリーン数で公開されたこの映画。興行的には一部マニア層しかひきつけることができずに大敗。公開4週間でほとんどの劇場から消えることとなりました。
それでも、作品的には『映像の未来』を語ることができるエッセンスが詰まっていたように思います。とにかく『世界初のリアルCG劇場アニメ』として映画史に残る作品でもあります。
ごぞんじのように日本発の大ヒットゲーム『ファイナル・ファンタジー』の名前を冠した作品ではありますが、この映画自体は名前だけを借りてきて、まったく新しいストーリーに仕上げられています。
数十年前に飛来した、人間の生気を奪い取ってしまう謎のエイリアンのためにごく限られたシェルターでの生活を強いられる地球人。主人公の科学者アキはそのエイリアンの正体を探り、解決の糸口を探ろうとしますが、無理解な軍部の強攻策のためにエイリアンが暴走。地球そのものが壊滅的な危機に追い込まれます。しかし、アキ自身が持つ秘密が地球をエイリアンから救うカギでもあった・・・
主人公たちはこれまでにない精緻さでCGIにより表現されています。それを見るためだけにでも劇場に駆けつける価値はあります。特に主人公アキの上司の老博士はそのリアルさにビックリします。ただ、それ以外の人物は人間らしく見えるか?と言われると少し違うようにも思えます。やはり表情が足りないので無機的な雰囲気。また、長い髪の表現なども現実のものとはかなり異なります。逆に武装した人物などはやはり人工のものを身につけているせいか、恐ろしくリアルなのですが、生身の人間との格差にちょっと冷めてしまいます。
CGI表現で特筆すべきは『照明』の見事さかもしれません。地球の廃墟、異星人の惑星等、それぞれのシーンでのライティングはよくぞここまで表現できたなあと感心。また、各種メカの巨大感も満足のいく出来です。ただ、核爆発時の炎やラストのエイリアンの変態表現等、もう一工夫欲しかったように感じました。爆発シーンにいたってはまんまスタートレックだったりするし。
それより何より最大の問題はストーリーそのものが映像に比較して圧倒的に弱かったことでしょう。結局『壮大な怪談』で終わってしまうとは・・・また、軍部の描き方はまるでバカそのもの。これでは盛り上がりようがありません。『トイ・ストーリー』や『Shrek』といった先輩CGアニメはその点では申し分なく、一般観客の支持を集めていました。『FF』は技術面に気を取られて作品の『Spirits
Within』を自らが失ってしまったのかもしれません。評価はそれでも★★★。
この作品の興行的な失敗は、今後このタイプのリアルCG作品を製作するにあたっては障壁となるかもしれません。しかしながら、この映画は実写との組み合わせで、信じられないような映像を登場させることができる可能性を示唆しているように思います。今後はそちらの面でこの作品の技術が活かされていくのではないでしょうか。・・・ワタクシ的にはもう一本、ストーリーがしっかりしたものを見てみたいのですが。
ところで、この作品、DVDが2パターン発売されることがすでに決定しています。1つは通常のDVDソフト。そしてもう一つが『プレステ2』用のソフト。『プレステ2』用では主人公をはじめとする人物をマルチアングルでグルグル回して楽しめるとか。・・・うむ、つまりはこれが目的だったのか。(笑)
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