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mitch の American Movie Express

さよならサンカク、また来て???・・・
『地獄の黙示録−Redux』&もっと踏ん張れアメリカ映画!

mitch

はい、サブタイトルからもこの連載が最終回だということがおわかりいただけるかと思います(笑)。昨年の10月号から始まったこの連載も何とか回を重ねて12回。ちょうど一年経ったというわけで、今回を持ちまして円満に(爆)終了させていただくこととなりました。

最大の理由はワタクシのアメリカ滞在がおそらくあと数ヶ月で終了するであろうということ(平たく言えば『帰任命令』が間もなく出るであろうということ)です。でまあ、帰任間際にバタバタしてご迷惑をおかけするよりも、早めの店じまいを選択させていただいたわけでございます。

で、最後のネタが・・・う・・・無い(汗)。実際、アメリカは8月中旬から10月中旬までは興行の中休み。『Rush Hour2』なんてえお約束映画が2億ドルを稼ごうかっていう大ヒットになってはいますが、ここで取上げるほどの映画でもございません。ふーむ・・・困ったなあ・・・

・・・とあれこれ考えながら今年見た映画のリストを眺めていて、やはり最後を飾るのはこれしかあるまい!という作品が見つかりました。・・・『Apocalypse Now - Redux』。

ご存知、御大フランシス・フォード・コッポラの22年前のベトナム戦争大作『地獄の黙示録』の未使用フィルムからコッポラ自身が大幅に追加・編集した、ある意味では『最終版』とも言えるバージョンです。

よくよく考えるとコッポラ監督って『ゴッドファーザー』シリーズ以外には大ヒットがないようにも思います。(実際にはそれで十分ですけど。)それでも『ワン・フロム・ザ・ハート』の映像や法廷ドラマ『レインメーカー』の語り口の巧さ等、やはりオールラウンドな巨匠といって差し支えないのではないでしょうか?最近ではあのウォルター・ヒルがサジを投げたSF大作『supernova』(監督名はアラン・スミシーならぬ、トマス・リーになってます。)を編集して劇場公開にこぎつけた・・・との噂もあり、ハリウッドには無くてはならない存在でもあるようです。(笑)

しかし、こと『地獄の黙示録』に関しては、戦闘シーンの迫力はともかく、後半部分のあまりのワケの判らなさに消化不良を起こしたのを覚えています。(大阪出身である私は最初のバージョンを『シネラマ・OS劇場』で鑑賞しました。懐かしい・・・)その後も名画座等でエンドクレジットがついた別バージョンも鑑賞したりしたのですが、当時は若かったせいもあってか、私にとっては凡作で終わってしまいました。

そしていつしか私も不惑の歳になり(号泣)、バージョンアップした『地獄の黙示録』とアメリカで再会することとなったのでした。

再会の感想は・・・コッポラはやはり天才でした。

22年前のオリジナル版よりはるかに素晴らしい出来映えです。オリジナル版に不満があった方は何がなんでもこのReduxバージョンを見なければなりません。

画質・音響ともに現在の映画と比べてもなんら遜色ありません。リストア・リマスタリングされたことによって、例のワグナーの『ワルキューレの騎行』を流しながらのヘリコプターでの総攻撃シーンや銃撃戦はオリジナル版から迫力倍増です。(MOZさんに言わせりゃ、攻撃シーンに『ロケット花火』を使ってる手抜きが許せない!・・・ってことにはなるのですが、そこまではリストアできなかったようなんで、許してやってください。)音響面では特に今回追加された雨のシーンのサラウンド感は秀逸です。

ストーリーはオリジナル版に比較して1時間ほど長くなっており・・・かなりダルイです(爆)。ダルくてダルくて、頬っぺたをつねってしまうことも一度や二度ではありませんでした。「いつまでやっとんねん」と思うこともしばしば。しかしながら、前半はかなりユーモラスな描写を加えたことで物語に厚みが増し、下層兵士たちの絶望の旅路がさらに際立ってきます。22年前はなんのこっちゃさっぱり判らなかった後半のマーロン・ブランドがらみのエピソードも相変わらずダルくて判らないなりに説得力を持って訴えかけてきます。さらには中盤のあのプレイメイトたちを待ちうける悲惨な運命等、涙なくしては見られません。また、このバージョンではフランス人プランテーションシーンが復活しています。他のベトナム戦争映画ではほとんど語られることのなかった『フランス戦争』としての側面から真実を描こうとするあたり、やはりこの作品が並みのベトナム戦争映画で無かったことを証明しています。

あ、そうそう、ちなみにこの作品は『The Matrix』のローレンス・フィッシュバーンの出世作でもあるのですが、今と同一人物とは思えないくらい細長いです。少年と言って良いくらいの年齢で、体型的にはスリムではありますが、その当時から存在感を存分に醸し出しております。

年末あたりにはアメリカでこのバージョンのDVDが発売されるのでしょうが、その際にはオリジナル版や各種バージョンも選択・比較できるようにしておいて欲しいものです。

とにかく22年を経て、21世紀の初頭に本当の意味で見事に完成したこの作品、必見です。評価は★★★★☆。今年公開されたどの新作映画もぶっちぎってしまいました。最近の映画が逆に退化してるんじゃないか・・・と不安な気持ちにもさせられましたですね。


さてさて、最後の作品レビューも無事終了。最新アメリカ映画の素晴らしさ・楽しさを(辛口批評もありましたが)何とか日本公開前にお届けしようと奮闘してきたつもりなのですが、いかがだったでしょうか?私自身、この3年半アメリカで映画を見つづけてきて、どうも最近のアメリカ映画の『噛み応え』の無さに不安を抱くようになってきました。特にここ1年ほどの作品は『アイデア倒れ』の傾向が顕著になってきたようです。・・・しかし、こういった閉塞感のなかから新しいものを生んできたのがハリウッド映画。我々を驚かしてくれる作品がこれからも必ず、次々と登場してくれるものと信じています。

私自身は来年の春までには帰国して、日本の映画館で皆さんと一緒にアメリカ映画を楽しみ、檄をとばしていることでしょう。エンドクレジットで頭を抱えながらスクリーンに向かってブツブツ言ってるヤツがいたら、それは私かもしれません。(あぶねーな)

今回の連載はこれにて一旦終了。しかしながら、いつかどこかで別の形で皆さんにお会いすることは間違いないと思います。その際にはまたよろしくお付き合いくださいませ! その時まで「See you and have a good one!」

(完)

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