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第六章 砂丘

 緑の要塞を出発したセルダン達は、一路北へと進んだ。そこはすでにソンタールの領内であったが、南方においてはすでにその支配力は落ち、比較的容易に旅する事ができた。一行がゾール砂漠と呼ばれる広大な砂漠地帯の近くにある、テルススの町についたのは出発から二週間後の事であった。
 セルダンは砂漠というのは平らなものだと思っていた。しかしテルススの町の向こうに聳える砂の山を見た時にその考えを改めた。マルヴェスターとデクトならばこの砂漠を容易に越えたかもしれない、しかしアーヤもセルダンもエルネイアも強大な魔法を持つ聖宝の守護者であっても肉体はただの人間であった。一行は注意深く用意を整え、馬の代わりにテラスと呼ばれる巨大な砂漠の生き物を買った。テラスは人の背丈の倍の大きさと幅広い背中をもったおとなしい生き物だった。アーヤとエルネイアは断固としてその生き物を丸ごと水洗いする事を要求したが、テラスは水に弱いためそれができなかった。二人は生き物の臭いに顔をしかめながらも、輿のような座席に香水を振りまいて座った。
 その間にも戦闘の様子は刻々と町に伝えられた。ブライス率いるザイマンの艦隊はエルバナ川の河口に集結しつつあり、やがてソンタールの七つの要塞に攻撃を仕掛けるだろう。エルバナ川の西岸をカインザーのトルソン侯爵とベーレンス伯爵が、東岸をロッティ子爵とクライバー男爵が進む事になっている。セルダンが最も気にしている東の将の要塞に動きは無かった。
 すべての準備が整った朝、五人は砂漠の入り口に立った。先頭に立ったセルダンはマルヴェスターを振り向いてほほ笑んだ。 「さあ、行きましょう」

(第七章に続く)

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