[4]
急きょ『ハルバン』を発進させて問題の『惑星』の恒星面通過(トランジット)観測を試みた彼らはこの天体がどうやらただものではないらしいのをあたらめて思い知ることとなった。
「いったいなんなの? これって――放物面鏡の制御プログラムのバグ?」
「いや……ゼータ・リベリニス自身の輪郭ははっきり結像しているよ。ぼやけてるのはべつに観測装置のせいじゃないと思う」
「じゃ、どういうこと? なんでこうもはっきり見えないの?」
「わからない。――でも恒星面に入る真際のゆらぎはきちんと観測されているんだ。ということは間違いなくあの星は主星のこちらがわにある。そしてかなり濃い大気をもっているっていうことだ」
「でもそのあと太陽面が隠れないじゃない? いつまで待っても影がぼやっとしたままで……」
「焦点はあってるな――ほら、こうして光球表面をフィルタリングするとよくわかるだろ? プロミネンスのイメージはきちんとでている」
「そうよねえ――」モニター画面に鼻をすりつけるようにしてカシルは言った。「気のせいかしら? ねえ……中央付近の赤みが以前よりずっと強くなっていない?」
「ふーん、――そう言われればそうかもしれないな。でも、光度が増してる……ってことは、こいつはこの星自身がはなつ光じゃないってことだぜ――」
論理的結論に達したもののあまりそれを認めたくない者のあやふやな口調でウィリアムはつづけた。
「つまり、やっぱり主星の光で輝いているわけだ……ただ、反射じゃない。信じがたいけど――透過しているんだ!」
まるで幽霊でも見たようにカシルは画面からゆっくり後ずさった。
「透明な惑星ってこと? そんなことってある? ……無気味だわ!」
戻る/進む