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「でもそれじゃなお不可解――。塵以上にそんな希薄なガスが惑星みたいな完全な球形を形づくるなんてはずないでしょ? こんなに主星に近い場所ではなおさらね。そもそもなにか引き止めるものがないかぎりおそかれはやかれ恒星風で吹き飛ばされてしまうはず――つまり気体は強力な重力場か、あるいは球状の皮膜のようなものであの場所とあの形にとどめられているってこと」
「うむ」
「でも重力場じゃないわよね。なぜならこの透過光は見てのとおり周辺も中心部分も明るさに大きな差がないから――それは密度に差がないってこと。重力場ならかならず核の部分を中心に圧縮されているはずでしょ?」
「うむ」
「じゃ、残りは球状の皮膜しかないじゃない。あなたは誰かが超特大のガス気球を作ってあの場所に置いたとでもいうの? あの天体は太陽系で言ったら火星なみのサイズよ」
 ウィリアムはため息をついた。
「攻め込んでくるなあ。でも観測される事実をうまく説明するのはそれしかないよ。合理的に推理していって、あり得ないことを消去して残ったものがどんなに信じられないことでも――それが事実だってことだろ?」
 まるまる一分ふたり顔を見合わせたのちついにカシルもため息をついた。
「ふむ、二百五十年目にしてようやく知ったな。それってシャーロック・ホームズを気取っていたのね?」
「え?」
「顎をすりすりするその癖よ」

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