[7−5]

「ほんとに」カシルはその壮大な眺めに見入ったまま、しかしどこか不満そうに同意した。「予想を裏切られることの連続だったな。あれだけ苦労したのに、けっきょく謎はひとつも解決できなかったわ」
「――まあ、そうかな。とはいえ収穫がなかったわけじゃないよ。それどころかクレイドルへの調査報告書に盛り込むデータは山ほどある。大変なのはむしろこれからさ」
 ウィリアムの言葉の中に含まれたある微妙な調子を敏感にかぎ分けてカシルは身を起こし、X線透視するスーパーマンのような表情で夫の顔をのぞきこんだ。
「ふうん?」
「なにがふうん、だ?」
「あなたわたしの気づかなかった何かに気がついたみたいね」
「……なんでわかる?」
「妻の勘ってやつよ」
 ため息をつき、見事見透かされた照れ隠しににんまりと笑いつつウィリアムは端末のキーに触れた。
「念のために言うけど、あくまでこれは仮説だから……」
「ひょっとして……この星の『重力の謎』への答えが見つかったとか?」
「まあ、たぶん――それを含めて、ね」
「いったい何を見つけたの? おしえて! おしえなさいってば!」
「……むぎ……く、首絞められたまましゃべれるわけないだろ?」
「あ、そうね。ごめん」
 襟首を締め上げている妻の手をのがれ息をととのえるとウィリアムはひとつの映像をモニター画面に呼び出した。
「こほ、――振動が激しいのであんまり鮮明でないかもしれない。これは脱出の直前のあの嵐の中心付近の映像だよ。ほぼ『ジェット』に沿って『真上』から写している。このままでは見にくいから静止させてみる。つまり百分の一秒の瞬間の映像だ。一見なにも写っていないように見えるけど……」
 彼が磁気ペンで画面に触れるたびに画像の拡大率があがっていった。
「わかるかな?」

戻る進む