[7−6]

「うん……中心にあいた穴のなかにわずかに滲んだ光の線が見えるわね。渦に巻き込まれた氷かしら?」
「ぼくも最初はそう思った。でもつぎのコマを見てみると……」
「ああ、光の線がもう一本――」
 ウィリアムは画面上に不器用に円を描いた。
「つまりここに超高速で互いのまわりを回転しているふたつの物体があるんだ」
「その場所……まさに嵐の中心部分に? うーん、でも……」
「言いたいことはわかるよ。そのためにはこの物体は気流の影響を受けないほど重たくなきゃならない。何度も何度も同じ場所にきらめきが見える――ということはこの軌跡が安定しているという意味だからね。たまたま気流の渦に巻き込まれてここの場所にあるわけじゃない。ぎゃくに嵐そのものにエネルギーを供給している可能性すらある」
「ちょっとまってよ……あの中心ジェットはまさにその軌道の中心から吹き出しているようだわ。それってまるで――」
「何かに似てる?」
「そう。あれよ、あれ……えー、なんて呼んでたっけ、円を描く道具。地球の人たちは……」
「コンパス座X-1かな――つまり、この渦巻きの形状は中性子連星の降着円盤と中心ジェットにそっくりと言いたいわけ?」
 カシルはうなずき、夫の顔から観測窓の外部に横たわる世界に視線をうつした。
「どういうことなの?」
「あれがほんとうに中性子星なみの密度を持った物体だとしたら――それはきみの捜していた謎の構造材そのものと考えられるじゃないか?」

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