[7−13]
「ただいま」
EVAハッチを漂いぬけヘルメットを外すと汗にまみれた顔でウィリアムは言った。
「おかえりなさい」
コンソールから振り向き耐Gシートから身をのりだすようにしてカシルが応える。
「お疲れさま――チェック項目すべてグリーン。エンジンの最終点検は無事終了よ」
「やれやれ……ようやくすべておわったか。これでいつでも好きなときにこの星を飛び立てるな」
「いまラブソングは近日点を通過してこちらに向かってくるところ。もしこれで調査完了ということなら、ただちにランデブーの準備をはじめないといけないんだけど……」
「ま、時間はまだある。これからどうするかはあとでゆっくり考えよう。とりあえずシャワーを浴びちゃうよ」
「うん、そうしていて。そのあいだにわたしは夕食の支度をするわ」
濡れタオルを片手にウィリアムが食卓につくころにはすでに調理器で温めた料理が食卓のうえに並び子供たちが待ちどおしげな顔をそろえていた。
「パパ、はやくっ」
「はいはい、おまたせ……ふうん、今晩はビーフシチューだね。おお、加えてとっておきの野菜サラダ。おやおや、ワインもあるじゃないか――どういうわけだい? えらく奮発したものだね」
「無事に初回探査が終わったお祝いよ――ほらほら、お父さん、お行儀わるい」
牛肉味の合成肉をつっついたフォークを負圧テーブルに置きなおしウィリアムは姿勢を正した。
「……母なるアリスマシンよ。家族全員の健康と今宵の糧に感謝いたします。願わくば宇宙の闇を歩むわれらからすべての危難を遠ざけたまえ。いつの日にか人々が光のなかで集い心安らかに暮らせる世界を与えたまえ。いなんな、じ、あむま、かんぱ、び、ざむま、かんぱ。いあ、いあ、いあ、べい、らづるき……。それでは――いただきます!」
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