[7−14]

 しばらく夢中で食べる子供たちのスプーンが加熱容器にあたる音だけが続き、ウィリアムはワインボール――透明なプラスチック球――にさしいれたストローからこれまた化学合成されたワインを味わいつつその様子を満足げに眺めていた。
「ほら、ウィル。なごみきっている場合じゃないわよ。よっぱらっちゃう前にこの後のことを話し合って決めておきましょ」
「うん、そうだった」
 しぶしぶワインを置き、テーブルが音もなく吸引する気流がそれをゆらゆらとゆらしているのを見つめながらウィリアムは応じた。
「いまランデブーを見送るとしたら、つぎの会合周期までの二年間この星でがんばることになるわ――もっとも燃料を底まではたいて1G加速で飛べばいつでも帰れるわけだけど」
「何が起こるかわからない以上、その可能性も考慮しておくべきだろうな。燃料は足りるの?」
「いろいろあってけっこう使っちゃったから……ぎりぎりってとこね。バーニアの推進剤も残り少ないし――まあそっちは生活用の水をまわせばなんとかなるでしょう」
「ということは、もしとどまると決めたらきみの蜘蛛たちに命令して食料や予備のヘリウム3をキャリアで打ち出してもらわなきゃならないね。いまのラブソングの位置からなら最少燃料でホーマン軌道を使えるだろう」
「それじゃ、いまここで決めちゃいましょうか。調査完了か――それとも続行かを?」
「どうする?」
「……あなたから先に言ってみて」
「ううん。まずきみの意見を聞きたいな……」
「ふうん、なんか煮え切らないわねえ――じゃあいちにのさんで同時に言ってみましょうか」
 しばし沈黙したのちふたりはタイミングをあわせて異口同音に言った。
「このまま調査を終えるなんでとうてい考えられない!」

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