[7−16]

 予想しなかった子供たちのき然とした意見表明に、ため息をつき苦笑をうかべたのち娘の頭にウィリアムは手をのばした。
「ミーちゃんはこれから何年もの間大好きなお庭に戻れなくてもいいのかい?」
 ミヒョンは問いかけるようにおにいちゃんを見、それに応えるかのようにきっぱりとユルグは言った。
「だいじょうぶ。いまお家に庭はないけどここには青空と雲があるもん。いままで見たことがなかったけど気にいったよ。空を見ながら風に吹かれるのって気持ちいい。それにお花畑も泉も……またお父さんたちが新しく造ってくれればいいんだよ」
「――なるほど」
 無重力でもちあがったミヒョンの髪の毛をねかしつけようと虚しい努力をつづけていた手でぽんとテーブルを叩き、その衝撃で揺れるワインボールを見つめながらつぶやくように彼は言った。
「そう、そうだ。ユルグの言うとおりかもしれない」
「あなた――子供たちに安請け合いしちゃあ……」
「うん――でもまあ、考えてごらん。この世界は予想をうらぎることばかり……ってことは何も危険ばかりあるわけじゃないんじゃないか? 逆に思いもかけない素敵な場所を見つけることだってまたあるはずなんだ。いま子供たちに言われてみてそれに気づいたよ。それをこれからじっくり時間をかけて捜せばいいってことさ――」
 子供たちに、そして半分カシルに語り聞かせるようにウィリアムは続けた。
「必ずあるはずだよ。セイジ一家のための新しいマイホームを建てる理想的な土地がね。そこは色とりどりの花たちの絨毯で包まれた緑の小惑星かもしれない。心に想い描いてごらん。お家のかたわらには小鳥たちのための美味しい果実をつけた小さな木と魚たちが泳ぐお池があるんだ。青い空には白い雲とぼくたちの小惑星の月になったサガが浮かんでいる――真っ暗な闇こそないけれどそこには短い昼と夜があるだろう。地平線に沈む日の出も日の入りも見ることができるんだ。家の外に持ち出した椅子に座ってね――ちょっと後ろに椅子をひけばおまえたち何度でも好きなだけ夕日を眺めることができる……」

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