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「最初はまず通常のダイヤモンド・ビットでやってみる……地表の厚みがどのぐらいかわからないから……」
 一億キロの距離を旅した指令コードが届くと探査プローブの下面から回転ドリルが伸びて地面に食い込んでいく。ビットの回転制御やキャリアに積まれたパイプの連結は自動的に行われるのでカシルは掘り進められる深度にだけ意識を集中していればいい。
「想像どおりやわらかい――ほとんど抵抗なく入っていっているわ。地球の岩石みたいに地殻内部の圧力がかかっていないから当然だろうけど。ちょうど鉱物質の微惑星を掘り抜いている感じかな」
「うん。でも慎重に十一分のタイムラグを計算してね……『辺(エッジ)』の内部構造はまったく予想できないから」
「そのあたりはまかせて――」
 掘削開始からわずか十数メートル掘っただけで探査機のドリルはそれ以上掘り進めなくなった。強固な表面でむなしく空転するばかり――何より固いはずのダイヤモンド・ビットがまるで歯がたたない。あきらかに『辺(エッジ)』そのものの表面に達したのだろう。ふたりは刃先を回転掘削からレーザー溶解にきりかえてさらに掘り進めていくことにしたのだった。レーザーの高熱に耐えられる物質はいまだ知られていない。事実時間こそかかるものの着実に掘削パイプは地中深く伸びていった。ついでに発生したガスにふくまれる元素の種類を調べることで『辺(エッジ)』の素材がほとんど純粋な炭素であることを彼らは知った。おそらくイシュタル機械と同じ炭素結晶材だろう。
「……つまり巨大なダイヤモンドのパイプってことか」
「うん。もはや人工物に間違いないわね」掘削の記録を確認しながらカシルは言った。


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