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「『ハルバン』のように赤道に下ろすのはやめます」
カシルは宣言した。
「極軌道に遷移して高緯度地方に降下するわ」
けっきょく『ハルバン』は生き返らず、いろいろ話し合った結果、ふたりは乏しい情報のもとでの有人惑星探査の意志をかためたのだった。『シーカー』という名称はもともとは居住可能な惑星を探し出す者たちを指す呼び名なのだ。こんなチャンスを逃すことなど到底考えられない、というのがしぶしぶながらも彼らの結論だった。
「うん、そのほうが賢明だ。赤道面はかなり込み合っているようだからね」
すでに惑星は球体ではなくモニター画面からはみ出す蒼球を抱き込む大温室の丸屋根となっていた。無数の梁から作られている巨大なジオデシック構造だ。ところどころ浮かぶ雲と圧倒的に厚い大気の中で拡散される青色の光が深部のディテールを隠しているが、透過する太陽X線を解析し探ったところでは大小無数の物体が浮遊しているらしかった。それらは微かな重力にひかれあい、気流に押し流され、赤道面のあたりに集まって楕円銀河か原始星雲のようなレンズ状のデブリ円盤を形成している。岩石や凝縮した水の球がぶつかりあっているであろうそんなゴミ溜のような中にいきなり飛び込んで行くのは確かにあまり賢いやり方じゃない。
「もうひとつ例の『イレギュラー』を確認するということもあるし」
『イレギュラー』と名づけられたのは球殻上に一箇所ある不規則な部分。おそらくかなりのサイズの隕石がたまたま衝突したのだろう。高緯度にある『辺(エッジ)』のひとつが大きく内側にむかって折れ曲がっているように見えた。この球殻を形成する物質の謎に悩まされているふたりにとってぜひとも近くから観察したいポイントだった。
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