[2−14]

「ふしぎだな。どうしてあんなに強力な嵐が発生できるんだろう?」
「こんどは嵐? つぎからつぎへまあよく疑問を思いつくわね」
「だってこの世界は『透明』なんだよ。夜と昼の交換もないし緯度による寒暖の差もごくわずかだろう。海洋もない。地球のそれのように強力なエネルギーを大気に供給するメカニズムがほとんどないはずだ。――でもあそこに見える嵐の勢力はかなり強そうだよ。地球の台風以上かもしれない」
「気象現象はカオスティックだからそんな大雑把な原則だけでは判断できないわよ。この世界は自転している。地球とほぼ同じ角速度でね。そして厚みのある大気をぬける間に太陽の光は内部をかならずしも均一に暖めない。雲があるし二酸化炭素の濃度に差があれば温室効果の働きも違ってくる。寒暖と回転による遠心力が働けば必然的に大気の循環もおきるわ。おなじみのコリオリの力も働くはずだし――」
「たぶんそうなんだろうな。げんに嵐はああしてあそこにある……」
 ごつん。
「ごつんといったよ」
 ユルグがいつのまにかコントロールルームのなかにいた。
「なんの音?」
「だいじょうぶよ。ユルグ、ミーちゃんをちゃんと見ていてね。……なんだか浮遊物が多くなってきたわ」
「この速度での衝突ならまず問題ないさ。シールドは秒速数キロで飛来する小隕石に対抗できる強度があるんだから」
「たとえそうでも無理をするつもりはないわ。見通しも悪くなってきたようだし……」

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