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もっとよく観察するとある種のロボットはもっぱら特定の種類のロボットのみを造り、あるいは壊すことになっていることがわかるの。XはYを造り、造られたYは今度はXを造る。あるいはXはYを造り、YはZを造る、だけど完成したZはつぎにはXを破壊する――さまざまなパターンがあるわけ。スマリヤンはけっきょくのところこうしたロボットたちのふるまいはプログラム相互の関係を規定するわずか八つの引用的言及にかかわる規則によって決定できることを示した――」
「ううむ、その話、大幅にはしょって結論だけというわけにいかない?」
「はしょると要点がよくわからなくなっちゃうんだけどな。つまりね、いままでイシュタル機械はただただ自分自身と同じXを作り出すだけのロボットと考えられてきた。でもそれでは集団として安定して存続できないのよ。むしろイシュタル機械もロボットの島のそれのように互いに複雑な関係をもつ複数のグループとして作り出されていただろうと考えるべきなの。いいかえるなら『イルスター』という存在は偶然生まれたものではなくて当初から『ギルガメッシュ計画』の必然的な要素だった、ということになるかな」
「ふーむ、なるほど――しかしそれがどう『長老機械』とつながる?」
「考えてみて――他のフォンノイマン機械を破壊するフォンノイマン機械という存在は本質的に自己矛盾を含むわ。もしそれらが『あらゆる機械』を破壊すべくプログラムされていたとしたら、最初に自己増殖したとたんに自分たち同士で壊しあいをはじめてしまうでしょう。それでは『イルスター』は長くは生き延びられない。いっぽうそれが自分と違った種類の機械だけを破壊するようにプログラムされていたら? こんどは『イルスター』自身がフォンノイマン機械として無限増殖をはじめてしまう。それではそもそも存在理由がない」
「なるほど、言われてみればたしかにそのとおりかも知れないね」

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