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「いったいぜんたいここの大気をつなぎとめている力はどこからわいてくるの? 腹がたつなー。納得いかないなっ?!」
 いきりたつカシルに、ことここにいたってはウィリアムも申し開きのしようがなかった。――なんで『申し開き』しなきゃならないのかよくわからないが――とにかく『辺(エッジ)』が予想していたよりずっと軽いことは間違いなさそうだ。ということは……。
「『頂点(ヴァーテックス)』がとてつもなく重たい?」
「まさか。もしそうなら『頂点(ヴァーテックス)』の質量は十京トンのオーダーってこと――そんな小惑星なみの質量を結びつけておく力が通常物質である『辺(エッジ)』にあるはずない。ほんのわずかでも歪みが加わったら最後ジオデシック構造そのものがばらばらに砕け散ってしまうはずよ……」
「そうだよなあ。それじゃ重力はいったいどこからわいているんだ? やはりこれは『重力制御装置』しかないんじゃないか?」
「ううむ。でも、それってほとんど『神の奇跡』と言っているのと同じよね」
 それからかなり長い時間黙り込んだあとでカシルは言った。
「重力を制御できるってことはたとえブラックホールの内部からでも戻ってこれるってことよ。そんな時間も空間も因果律さえも超越した存在は文字通り神にも等しいわ。いくらなんでも『長老機械』たちが全能の神そのものになったなんてわたし到底受け入れられない。これには必ずなにかちゃんとした説明があるはず……」
 カシルはきゅうにコンソールに背をむけると操縦席へと漂い移った。
「何をするつもり?」
「あなたがいつも言ってるじゃない? 実証精神の武器は実験と観察以外になにもないって――ここで仮説をもてあそんでいても仕方ないもの。もっとあそこに近づいてじっくり眺めてみるのよ」

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