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 『サガ』の展望窓の外いっぱいに破壊された『辺(エッジ)』の先端部分の眺望がひろがっていた。まずは断崖絶壁にうがたれた巨大な洞窟という印象。しかし折れて砕けた破片はすべて『蜘蛛』たちが運び去ったうえでさらに材質表面を規則正しく削り取っていっているためちょっと方向を替えて眺めると上空から鳥瞰する広大な石切り場にも見えなくはない。洞窟そのものは果てしなく奥へ続く暗がりでしかなく、すでに『西』――というか世界の反対側へと傾いた赤暗く弱い陽光のもとでは内部を観察することはほとんど不可能だった。
「残念ながらめぼしい発見といったものはないわね。……そっちはどう?」
 カシルが反対側の『頂点(ヴァーテックス)』に狙いをあわせた船外望遠カメラを難しい顔で操っているウィリアムに尋ねた。
「薄暗いうえにときおり雲が邪魔をしてあまりよく細部は見えないんだ。全般的な印象としてはこちらの付根部分はすっかり整地されて新しく『辺(エッジ)』を架ける準備万端終わっているといったところかな。一見えらく端正なクレーターだよ。内部には放射状や同心円状の線が見える。配電ケーブルなのか、通信ラインなのか、ひょっとしたらメンテナンス用の通路かも知れない。加えてきちんと等間隔に並んださらに小さなクレーターが六つある。これもなんのためのものかはわからないな。あるいはあれがきみの予想している超強度構造材の土台かも知れない。各々の小クレーターのすぐ外側、大クレーターの縁の部分六カ所に『蜘蛛』たちが群がっている。どうやらなにか大きな構造を造ろうとしているところらしい……」
「それってたぶんケーブルの敷設装置よ。こちらの破断面にもそれらしきものが見えるから――まずカーボンナノケーブルをわたして足場を造り、それから『辺(エッジ)』本体を造っていくのでしょう」
「なるほどむかし地球で吊り橋を造ったのと同じ工法か……」

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