[3−8]

「それにしても妙だなー。内部は完全にがらんどうみたい。これって結局のところ『頂点(ヴァーテックス)』の間に架け渡された巨大な中空のチューブにすぎないんだわ。けっして何かを支えるための構造物じゃない……」
「ねー、ぱあってやって? ぱあっ、て」
 展望窓にひっついて熱心に外を眺めていたミヒョンが唐突に言った。
「なんだい、そのぱあっ、て?」
「照明弾のことよ。『辺(エッジ)』の中が暗いから照らし出してくれって言っているの」
「おいおい? ぼくらのちいさな提督はなんでそこまで知っているんだ? この子のまえで照明弾なんて使ったことないぞ?」
「まえに『キュアレス』探検の記録を見せたのよ。わたしたちがあの惑星で海溝のなかを照らしたときの映像」
「ああ、なるほど。あれは綺麗だったからなあ」
「この子の知っている世界といえばそんな映像だけなのよね。考えれば可哀想――そうね、ミヒョンの提案をいれて試しに何発か撃ってみましょうか? 照明弾」
「うーん、大丈夫かな? 敵対行為ととられない? 『ハルバン』のときみたいに怒った『蜘蛛』に襲われたくはないからな」
「穴の中心線を狙えば『辺(エッジ)』にはかすり傷ひとつつきゃしないわ。すくなくとも内部のかなり奥まで見通すことができるでしょう。『蜘蛛』なら心配ないわよ。いくらなんでもここまで飛びついてはこられないはず」

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