[3−9]

 カシルは船を巧みに操り傾いた『辺(エッジ)』の中心線にもっていくと慎重にランチャーの狙いをすませた。
「いい? 撃つわよ――3、2、1、発射!」
 ひゅん!というこごもった発射音を残して照明弾が撃ちだされた。それは狙い通りまっすぐな軌跡を描いて『辺(エッジ)』内部の空洞を飛翔していき、数秒のち暗がりのなかで閃光が炸裂した。
 手を叩いてはしゃぐミヒョンと歓声をあげるユルグをしり目にふたりは倍率最大のモニター画面を凝視した。
「完全にからっぽだわ。少なくとも数キロ奥まで同じ調子――これはやっぱりただの大きな紙筒ね」
「どうだろう? 『蜘蛛』たちが内部の構造材をすでにかたづけてしまった後だとしたら……?」
「うーん、ふつう順序が逆でしょ? 仮にこの『チューブ』が雨風よけのカバーだとして、内部にしっかりした構造があったなら、解体業者はまず外壁を取り去ってからおもむろに骨組みのほうにとりかかると思わない?」
 そうだな、とつぶやき何気なく観測窓の外に目をやったとたんウィリアムの心臓は凍りついた。子供たちがすがりついている透明樹脂の外、ほんの十数メートルの位置にいつのまにか見たことのない形状の巨大な機械が浮かんでいたからだ。

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