[5−13]
突然、耳元で警報音が鳴った。びっくりしてリスト端末を見るとレーダーシステムが接近してくる何かをとらえている。立て続けに起こる事態の変化に少々浮き足だったウィリアムがあわてて周囲の空間に目を走らせているうちにカシルの緊張した声が通信機から響いた。
「ウィル! 南の方角から何か急速に接近してくるものがあるわ。秒速約二十メートル……ひとつじゃない……反応はふたつ――」
「……了解、正体はわかるか?」命綱をたどりながらウィルアムは尋ねた。この場所からでは岩塊自身が邪魔をして南の空は見えないのだ。
「わからないけど、すくなくとも岩のような浮遊物じゃないわね。動きながら時々方向を変えているから……」
――あの『矢印』だ。直感的にそう確信してウィリアムは子供たちのところまでいくとふたりを少し手荒く揺り起こした。
「目を覚ましなさい。ユルグ、いまミーちゃんを船に運んでいくから、その間ここでじっとしているんだぞ」
「ん……なに?」
「心配いらない。すぐにもどってくるからここを動くなよ」
彼はまだ寝ぼけ眼で瞼をこすっているミヒョンを小脇に抱きかかえると片手でロープをつたわりながらサガへと向かった。
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