[6−6]
まるで嵐のなかの凧のように、ずぶぬれになり目まぐるしく風に煽られながらも、彼は着実に距離を縮めていった。じらすように近く寄ったかと思う次の瞬間にはまた遠くへと吹き流されていくプラットホームを辛抱強く追いつめつつ、ウィリアムは慎重に『タッチダウン』の機会をうかがった。この調子ではそれはかなり手荒いものになりそうだが――なあに骨の二、三本折れたって……。
チャンスは不意にやってきた。風向きが突然正反対に変わりプラットホームが急接近してすぐ脇を通過するのをウィリアムは見逃さなかった。とっさに腕と足を丸め抵抗を減らすとつぎの瞬間彼の身体はハニカム格子に嫌というほどの勢いで叩きつけられていた。
「ぐうっ!」
勇敢な父親らしくもない少々情けない声を発しながらも溺れる者のように必死で彼は磁力格子にしがみついた。見回すと数メートルも離れない位置にユルグがいた。身体を丸めるようにしてぴったりとプラットホームに伏せている。そちらへ移動したウィリアムが腕をさしだし抱きかかえるとうっすらと目を開け黙ったまましがみついてくる。濡れて冷たくなった息子の身体を自らの腕に抱きかかえたとき思いがけなく彼の目に涙がにじんだ。
「カシル! ユルグを保護した」
「ああ……マシンよ!」
「プラットホームを離れる。こいつを抱いているから姿勢のコントロールは無理だ。オートパイロットに切り替えてきみが命綱をたぐり寄せてくれ!」
「わかったわ!」
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