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白い砂漠
doru

 白い砂漠がありました。
 砂漠は白いさらさらしたお砂がたくさん集まってできたものです。
 砂漠の上には白く美しいお月さまが輝いています。
 お月さまの光は砂漠のお砂のひとつひとつに優しく照らします。
 白いお砂はお星さまのようにきらきらと輝きます。
 お空にお星さまがきらきら、砂漠にもお星さまがきらきら輝いています。
 このきらきら光るお砂は本当はお星さまで、ほんの少しおねむするためにこの砂漠
まで降りてきたのではないでしょうか。
そして白い砂漠があんまりお空と似ているので、お空に帰るのを忘れたのではない
でしょうか。
 白いお月さまがそのお顔をのぞかしたころ、ほんの少し昔、お空を思いだしてきら
きらと輝いているのではないでしょうか。
 お月さまは砂漠に良く似合います。
 お星さまのかけらでできた砂漠だからお月さまと良く似合っているのかもしれませ
ん。

 ある夜のことです。
 砂漠を渡る大きな行列がありました。
 お月さまの光は行列の影を砂漠に落としています。
 その行列はらくだをたくさん持っていました。
 いろいろな物をらくだに乗せていました。
 いろいろな人がらくだに乗っていました。
 らくだはずっと旅をしていたはずなのに疲れたようすを見せません。
 この白い砂漠を渡るために強いらくだを選んでつれてきたのでしょう。
 らくだの両脇にはどこかの異国で創られた見事なつぼがくくりつけられていました。
 そのつぼには金と銀のつぼで、周りには見事な紅玉、青玉の石がついていました。
 つぼの中にはもっとすばらしい宝物が入っているのでしょう。
 らくだの上には男の人がたくさん乗っています。
 男の人の腰には銀色の剣をつけています。
 銀色の剣は月の光にあたってとってもきれいです。
 どの人も強そうです。男の人はどこかの国の商人さんかどこかの国の兵隊さんのよ
うに見えます。
 そして男の人の中心には女の人がいました。
 一番大きくて美しい白いらくだの上には薄い被りものをした女の人です。
 女人のまわりにはとっても強そうな男の人がいました。
 男の人は女の人のまわりを守るようにしていました。
 らくだの上の乗る女の人は位の高い人か、それともどこかの国のお姫さまでしょう。
 どこかの国のお姫さまはどこかの国の王子さまに逢うためにはるばる旅をしてきた
のではないでしょうか。
 お姫さまの父さまや母さまはこの美しいお姫さまのためにこの長い行列をくださっ
たのではないでしょうか。
 それでも心配で強い男の人をおもりにつけてくださったのでしょう。
 優しい父さまや母さまの国はもうありません。
 だってお姫さまのためにたくさんの強い兵隊さんをあげたので、国を守る人がいな
くなってしまったのかもしれません。
 優しい父さま、母さま、それほどお姫さまのことを愛してくださっていたのです。
 どこかの国の兵隊さんはどこかの国のお姫さまを守って歩きます。
 それにしてもなんて静かで美しい行列なのでしょう。
 砂漠に生きる動物たちもこの美しい行列を邪魔しないように遠慮しています。
 動物たちもただ遠いところからそっと覗くだけです。
 夜にらくだのたてる足音がさくさくと音をたてています。
 さくさくさく音をたてているのはらくだだけです。
 月の光はとっても綺麗ですけど、この行列には負けています。
 姫さまの行列は美しい月の白い砂漠にしか見ることができません。
 だって・・・。

 ああ、夜明けです。
 遠くから太陽が昇ってきました。
 月は隠れてしまいました。
 ああ、なんということでしょう。
 らくだが白い砂になってしまいました。
 兵隊さんが白い砂になってしまいました。
 そして美しいお姫さまも白い砂となってしまいました。
 そうです。美しいお姫さまの行列は白い砂漠を渡るのに、とってもつよい兵隊さん
も守ることができなかったのです。
 とっても太陽さんが強かったから、みんないなくなくなってしまったのでした。
 母さまや父さまがたくさんの行列を姫さまにお与えになさったものだから砂漠を渡
る前に、みんなの水がなくなっていなくなってしまったのでした。
 姫さまの行列がとっても美しくて、とってもかわいそうだったので、お月さまは哀
れに思って、太陽のないとってもきれいな月の夜にだけ姫さまのために魔法を使って
あげているのです。
 砂でできたお姫さま。とってもきれいだけど太陽の光でなくなってしまう、とって
もかわいそうなお姫さま。
 一体お姫さまはどこにいこうとしているのでしょうか。
行くところも戻るところもないというのに・・・。

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