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痛くないきず

doru

 

まあちゃんは七つ、えっちゃんは四つ、とっても仲のいい姉妹です。今日はおばあちゃんとお風呂にはいっています。まあちゃんは一人で頭も身体も洗えるけど、えっちゃんは小さいので、おばあちゃんに洗ってもらっています。
そしてざぶーん、3人は湯船にはいりました。3人もいっぺんに入ったものだからお湯がざざざざざとあふれ出ました。
まあちゃんはおばあちゃんの足に残っているきずあとに気がつきました。10cmはある大きなきずあとです。
「おばあちゃん、このきずどうしたの」まあちゃんが聞きました。
「このきずは痛くないきずだよ」おばあちゃんはまあちゃんのあたまを軽くなぜながら答えました。
「話を聞きたいかい?」
「うん、聞きたい」まあちゃんもえっちゃんもおばあちゃんの話に耳を傾けました。
「まあちゃんが3歳ぐらいのときだったかねぇ。おばあちゃんはひいおばあちゃんに玄関で電話をかけていたのだよ。知らない怖い人がはいってくるといけないから玄関にかぎをかけてね。電話をかけている最中、スーパーから自転車に乗ったおかあさんとまあちゃんが帰ってきたのだよ。おかあさんは玄関がしまっているのを見るとまあちゃんを先に自転車から降ろして、裏側から家の中に入るようにいったのだよ。」おばあちゃんはあひるのおもちゃをぽいっとまあちゃんに投げました。
「それからどうしたの?」
「うん、それからおかあさんは、まあちゃんを降ろして後からたくさんの買い物したものを持って家の中にはいったのだよ、裏口からはいって、まあちゃんを呼ぶとまあちゃんの声が聞こえないのだよ。変だなと思って、二階にあがってもいない。トイレかなと思って探してみるけどいない。おかあさんはけっそうかえてまあちゃんがいなくなったといっておばあちゃんにいってきたよ」
まあちゃんもえっちゃんも興味津々といった顔で見ています。
「おばあちゃんはひいばあちゃんとの電話をきって、まあちゃんを通りにでてさがしたさ。大事な大事なまあちゃんがいなくなったら大変だものね。道を歩いていた、おばあさんと女の子に聞いてみたよ。黄色い服と赤いスカートをはいた3歳ぐらいの女の子みかけませんでしたか? って、おばあさんと女の子はみかけなかったというじゃないか。それで電車の踏みきりにでもはいっているのじゃないかと、踏みきり工事の警備員のおじさんにも3歳ぐらいの女の子がはいってこなかったと聞いたけどみかけないといったよ。
それで、おじいちゃんとよくボール投げにいった公園にも自転車でいった。でもいなかった。おばあちゃんは気が動転して、段差のある歩道に自転車を乗り越えてこけてしまったよ。すりむいて血が出たのがわかったよ。痛かったはずだけど、まあちゃんのことが心配でそれどころじゃなかった。自転車は前の輪が曲がってキイキイいう。それでもおばあちゃんは必死で探した」おばあちゃんは一息ついて顔をお湯でぴしょんと洗った。
「お母さんもよくさがして、まあちゃんは3軒隣の家で干していたお花の土で泥遊びをしているのを見つけたらしい。おばあちゃんもきっと一生懸命探しているだろうからと思って、まあちゃんを前の座席に乗せて、おばあちゃんを迎えにきたよ。まあちゃんが泥だらけの顔でおばあちゃんと手を振ったとき、嬉しさで涙がでたよ」
「まあちゃん触ってごらん」おばあちゃんは、まあちゃんに傷あとを指でさわらせました。
まあちゃんはそうっと触りました。
「痛くないきずだよ」おばあちゃんはぎゅうっとまあちゃんを優しく抱きしめました。


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