私が青春時代を謳歌していた頃、欲しかったものが二つあった。それは中国製のジュータン 6畳で10万円はしたという、一般庶民にしては、唯一高級品が味わえる品物だった。そのころ堅い仕事にもついていたし、冬のボーナスの何割か出せば買える品物だった。毎年冬になると物産店には中国じゅうたんが並び欲しいなぁという思いがあった。
もう一つ欲しかったものが、自動車の座席にかけるムートン(白とか黒の長い毛がついて動物の毛皮のようなもの)、こっちも暖かそうだなと、ずっと憧れていた。
そのうちに月日は流れバブルの最後の頃になって、近所のホームセンターでムートンのバラ売りがあった。流行りが終わったムートンをホームセンターが捨て値で仕入れ、少しの利益をいれて、一般庶民に売り出したのだった。もう季節は桜の咲くころ、極寒の冬は終わっていたら、値段の安さにまけたのと昔から欲しかったのとあいまって、買った。家族のものはこれから暑くなるのにと言われたが、バブルの頃流行ってずっと憧れていたといったら、半分呆れたように笑われた。
初夏の6月には暑くなり、袋につつんでしまい、夏用のクッションを出して、11月の秋には出して椅子にかぶせていた。 一度も洗うことなく10年、そろそろ匂ってきたので、今日洗濯機で洗った。真っ黒い汚れた水になった。バブルの終わりから今まで10年分の歳月が流されて落ちていった。
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