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お留守番

doru

 

 まあちゃんは七つ、えっちゃんは四つ、まあちゃんはしっかりもののお姉さんで、妹のえっちゃんは少し泣き虫です。二人はときどきけんかもするけれど、とても仲のよい姉妹です。
 ある夏の日、お母さんは美容院に出かけることになりました。
 「お昼までには帰ってくるね。二人ともよい子でお留守番できるわね?」
 まあちゃんは「だいじょうぶ」と言いました。
 えっちゃんはちょっと心配そうに「早く帰ってきてね」と言いました。
 「それじゃ行ってきますね」と言ってお母さんは出かけていきました。
 まあちゃんとえっちゃんは初めのうちは、お人形で仲良く遊んでいましたが、一時間が過ぎ、二時間が過ぎてもお母さんは帰ってきません。
 晴れていた空はどんよりした雲におおわれて、いつの間にか真っ黒になってしまいました。
 ピューピュー。風が吹いてきました。庭の木がゴウゴウとゆれています。あたりは一瞬ピカッと光りました。そのとたんドーンというものすごい音が聞こえてきました。
 「いやだ。こわい」
 「だいじょうぶ。おへそをかくしておけば、かみなりさまは来ないから」まるでお母さんがするように、えっちゃんの小さなおなかをポンッと軽くたたいて、まあちゃんは言いました。
 でも、あらしとかみなりはやみません。それどころかどんどんひどくなります。
 ピカッ、ドーン、ガラガラ、大風が吹いて大雨が降って、今まで見たこともないようなものすごいかみなりがひっきりなしに落ちてきます。
 えっちゃんはかみなりが鳴ってこわいのと、お母さんがいないさびしさでとうとう泣き出してしまいました。
 「こまったなぁ。えっちゃんを泣きやますためには、いったいどうしたらいいのかしら?」まあちゃんは自分も泣き出したいのをこらえて必死に考えました。
 「そうだ! おいで、えっちゃん」まあちゃんはえっちゃんを連れて台所へ行きました。
 「見ていてごらん。今いいものを作ってあげるから」
 そう言うとまあちゃんは流し台のじゃ口をひねり、勢いよく流れ出た水で手を洗いました。それからおひつのふたをとると、塩をひとつかみ手のひらにのせ、もう一方の手でしゃもじにごはんをよそいました。
 そうです。まあちゃんは妹のためにおにぎりを作ろうとしているのです。でもまあちゃんの手はお母さんの手のように大きくなかったので、ごはんは床にボロボロこぼれています。それでもまあちゃんは一生懸命です。ごはんを何度も何度もしゃもじでよそって、大きな大きなおにぎりを二つ作りました。
 「いただきまーす」まあちゃんはそう言うと、大きな口を開けて大きな大きなまんまるいおにぎりをパクリとほおばりました。
 「いただきます」えっちゃんも小さな口を開けて大きな大きなまんまるいおにぎりをパクリとほおばりました。
 「あんまりおいしくない」
 「文句を言わない」
 まあちゃんにとっては初めて作ったおにぎりでしたから、お母さんが作るようなおいしいものとはいえませんでした。それでもまあちゃんとえっちゃんはおにぎりを全部食べました。おなかがいっぱいになりました。
 そうしているうちに、いつの間にか雨はやみ、かみなりはどこかに行ってしまいました。お日さまがでてきたころにお母さんは帰ってきました。
 突然かみなりが鳴り始めたので、心配していたお母さんは、二人の話を聞いてびっくりしました。
 「まあ? まあちゃんがお昼をこさえたんだって?」お母さんは台所へ行ってみました。床は水でビショビショ、テーブルは塩とごはん粒でベトベトです。でもお母さんは小さく笑って、台所を汚したまあちゃんをしかりませんでした。
 「あの子がねぇ・・・」
 まあちゃんとえっちゃんは、お母さんからお留守番をしたごほうびにおもちゃをもらいました。けれども本当にうれしかったのは、お母さんが帰ってきたことだったのです。


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