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桜の下で

doru

 私には好きな人がいました。生涯の伴侶になってくれたらいいなと思うぐらい愛していました。相手も若くて綺麗な私を愛してくれていたと思います。そのうち毎日かかってきた電話がなくなり、私から電話をかけても着信拒否になっていました。とうとう私は会社からでてくるあの人を捕まえて問いただしました。するとあの人は仕事が忙しくなったのだよとぶっきらぼうに言って、これから仲間と飲み会をするんだ。今日のところはこのまま帰ってくれないかと言いました。
 私はそれでも信じていました。そして2週間たってもあの人からの連絡は一切ありませんでした。私は再びあの人の会社の前で待ち、会社から出るあの人の後をつけました。そして見たのです。あの人は私より若い娘と食事をし、笑いあい、肩を組んでホテルにはいっていきました。
翌日私はあの人に話したいことがあるといって二人の思い出の場所、桜の樹の下で待ち合わせました。迷惑そうな様子でたばこを吸ってそっぽを向いています。優しかったあの人は今見知らぬ他人の顔になっています。私はそんな顔を見たくありませんでした。後ろから忍びよるとあらかじめ隠し持っていたナイフであの人ののどを一文字に切り裂きました。テレビでやっている殺人と違い、男の血は威勢良く私の白い服をまだらの朱色に変えました。身体をエビそりにし、ひくひく痙攣が続く中、男のズボンをおろすと一物を握りしめ、そしてばっさり切りました。悪い枝は剪定しなければなりません。息をしなくなった男を復活させるために桜の樹の下に切ったものから新しい芽が出てくるようにあおむけにして埋めました。

 桜は埋まっているあの人の養分をすっていつもにまして綺麗で花見客をたいそう喜ばしたそうです。

開花の時期は終わり、花が散った後から、青々とした葉が春の風を受けています。そろそろ復活しているのじゃないかと、深夜男が埋まっている桜の樹の下を懐中電灯で探しました。私の考えは間違っていませんでした。あの人は無事発芽していました。それは桜の樹のようであり、また一物でもあり、いってみれはこれは両者の中間のような存在でした。桜の妖気と人間の気、両方の性質をうけついだものが生えてきているのです。まだ誰も使っていない初々しいものです。これぞ私が求めていたものです。私は全裸になり、その上にまたがりました。冷たくて暖かい感覚です。植物とも動物ともつかないそれを自分のなかにおさめました。新しいそれは私に刺激されて少しづつ膨張していくように思えます。私はあの人が出すものはすべて汲みつくすところまでとってやろうと思いました。じゅくじゅくじゅく、粘液質の音がどれぐらい続きましたでしょう。気がついたら空の彼方が薄明るくなっています。もう朝なのです。何時間もやっているので、それは今でも爆発しようなぐらい巨大になっています。私はぐいぐいぐいと押し込め刺激を繰り返します。そしてぱーんと音がして、それが裂け、中から大量の花粉がでてきました。私は満足し、その場を立ち去りました。

私は今妊娠しています。まもなく生まれる子供は、桜のように美しくて妖艶な女になるでしょう。この私がそうだったように…。子供を私はあの人と思って大事に育てていくことにします。

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