| TOP Short Novel Long Novel Review Interview Colummn Cartoon BBS Diary |

蜘蛛の糸

doru

 

 今日お風呂に入ってシャワーをしようとすると壁に一匹の蜘蛛がへばりついていた。血を吸う蚊のようにぱちんと殺してもよかったが、芥川の蜘蛛の糸みたいに私が死んだらいいこともあるだろうとそのままにしてやった。シャワーが終わり、蜘蛛がいた処を見るといなくなっていた。テレポートして逃げたかシャワーの水がかかって流れて行ったのかもしれない。

 数年前、夏の暑い日大きな蜘蛛が部屋の中に出て、捕まえて外に逃がしてやった。ところが屋根がやけていたのだろう。蜘蛛は二三回痙攣すると気絶したのか動かなくなった。1時間後見るとずっとそこにいた。次の日もそのままの格好でそこにいた。次の日も次の日もそのままの格好でそこにいた。ある雨が降った翌日蜘蛛がいなくなっていた。気絶から目が覚めて逃げ出したのだろう。

蜘蛛はできるだけ殺さず生かすようにしている。私はおそらく地獄に落ちても一本の蜘蛛の糸をお釈迦様が落して、極楽にいざなってくれると思う。


トップ読切短編連載長編コラム
ブックレビュー著者インタビュー連載マンガBBS編集部日記
著作権プライバシーポリシーサイトマップ