短編小説


書棚の育て方
THE WAY OF GROWING BOOKCASE
桓崎由梨
(Yuri Kanzaki)

この作品につきまして

 最近は、コンビニ感覚で気軽に入れる明るい古本屋が増えてきたので、私のようにほとんど古書業界のことを知らない人間でも、手軽に本を探して安く買うことができるようになりました。店によっては、若い女性がたくさん出入りするところもあり、プロではなく、アマチュア作家の描いた漫画同人誌までが入手可能な古書店まであることなど、この道に詳しい方から教えて貰うまで世事に疎い私は全く知らず、世の中進歩しているのだなぁと吃驚したのが数年前の話。今や古書も、インターネットで売買できる時代となりました。

 別に新刊本でなくていいから、安く買えるのなら古本でもよいので読んでみたいなぁあの本・この本――という感覚で古書店に行く人のほうが本来は多い筈なのですが、世の中には「あの特別な一冊をぜひ自分の手に!」と情熱を燃やし、古書探求の世界にのめり込んでゆく、実にロマンチックな人々が存在します。

 古書売買の世界の面白いところは、ある人にとっては紙屑同然の古本が、それを欲しがっている人にとっては、何百万、時には一財産投げ出しても買いたいと思わせる魔力のようなものを孕んでいることです。鑑定団がはっきりと値段を出せるお宝と違って(勿論、そういう本もあるにはありますが)値打ちが結構あいまい。そんなところが面白い。面白いというと不謹慎かもしれませんが、しかし端で見ている私にはとても面白い。自分ではそこまでゆけませんが、その煮えたぎるような情熱だけは妙に実感できます。

 この作品は《古本探偵》の綽名を持つ友人から、いろいろと話を聞かされているうちに思いつきました。私自身は古書コレクターではないのですが、本に対する愛着はあるので、そういう部分と組み合わせたら何か面白いものが書けるのではないかと思ったことが、着想のヒントとなりました。

 古書に関する部分は、古本探偵氏に監修して頂きました。私自身が見聞きした実話も、いくつか混じっています。

 本好きの方に捧げる笑い話のような作品、ほのぼの系のファンタジー小説です。

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