これは、俺が的屋をやっていた頃の話だ。
山奥の村で祭りがあり、祭りが終わると、携わった人たちで、酒宴が催された。
苦労話などを聞かされて、俺は夜遅くまで付き合わされた。残り物を重箱に入れてお土産として貰い、俺は真っ暗な山道を岐路につくことした。
宿は、山道を下った先にあるが、暗闇なので、途中で仲間とはぐれてしまった。酔いもまわり、疲労も激しかったので、座り込んで一休みすることにした。
その時、少し離れた所に、木々の間から小屋の明かりが漏れているのを見つけた。
休ませてもらえるといいなあと思い訪れると、その場所にはふさわしくはない若い女が出てきた。
意に反して、朝まで休ませてもらえることになったが、女が着ている服の色柄を、何処かで見た様な気がするなあと思った。
略満腹であったが、女からキノコ汁や酒を勧められると、男のサガで、そのまま、ご馳走になった。そして、いつしか寝込んでしまった。
未明に目が覚めると、小屋は消えていて、誘蛾灯近くの草むらに１人で裸で寝ていた。
更に、嘔吐や下痢などの食中毒の症状が現れ、見るものが青く見える中毒症状も併発していた。
悶え苦しんでいると脱水症状も現れ、これで、俺も終わりかなと思ったが、幸運にも、心配した仲間が探しに来てくれていたので無事生還することができた。
救命センターの医者によると、嘔吐物からツキヨタケ中毒であるとつきとめたそうだ。
また、体中に付いた粉は蛾の鱗粉だったそうだ。
補足
夜祭りの最中、屋台の灯に２匹の蛾がもつれあって飛んで来たんだ。
１匹は、段ボールの切れ端を使って叩き落とし、踏みつけて退治したんだった。
しかし、もう１匹は、逃げられてしまった。
後になって、女が着ていた服の色柄が、逃げた蛾の羽模様と同じだったことに気がついた。
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