ひとりの女がいる。彼女の頭のなかでは、絶えず数を知らせる音が鳴っている。女はそれに合わせて歩く。右に五歩、左に三歩。ひとりの男がいる。かれは女に興味を示し、女のやり方に理解を示す。男は彼女に寄り添って彼女に合わせて歩く。右へ六歩、左へ二歩。そうして築き上げられたふたりの穏やかな関係。けれどもやがて、男は旅へ出る。そうして帰ってこない。なぜ? なぜ? 女は歩き続ける。やがて……
男と女の関係は、とにかく難しい。好きになったり嫌いになったり、近づいたり離れたり。どうしてなんだろう、という問いと答えを、わたしなりにファンタジーのなかに織り込みました、というか、織り込んだつもりです。主人公の女は、彼女にしかわからない世界に生きていますが、けれども、彼女はそんなに特異な人物ではない、とわたしは思っているのですが、どうでしょうか。ご感想をお待ちしております。
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第49号 |
ひとりの女が夢を見る |
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