まだ不登校になるまえ――小学生のころの楽しい日曜の朝の夢をみていたらひそひそ声の会話で目がさめた。K1と友彦のおっちゃんだった。
「……東京近郊に武器を何カ所にもわけて隠しておく――無学なおれでもあんたの正体はなんとなく見当がつくな。あの国についちゃ普段からあまりいい噂は聞いていないしね……とはいえあんたはいろいろ生き残るための算段をご存じだし、あんたがいなけりゃおれもこの子たちもいまのいままで生きてはこれなかったろう。少なくともおれは気にしてないし、たぶんみんなべつになんとも思っちゃいねえよ」
「どう思われようと関係ない。教えてきたのはそれが必要だからだ。目が見えない自分の手足代わりになってもらわねば困る。生きのびてやらなければならないことがあるんだ」
「そうかなあ――一緒にいて感じるけんど、あんた自分で思わせようとしているほど計算高くもないんじゃないかな? ただ最後にあんたがたどり着こうとしている場所へはこの娘たちを連れていくことはできないかもしんねえな――」
その返事はなかったけど、あたしにはあいつの頬がぴくりとひきつるのが見えるような気がした。
「この娘たちは死にかけてたあんたを助けた。津波に溺れかけたうえに覚醒剤中毒の仲間をかかえているってのによ……たしかに利口っちゃ言えねえが、でも誰にもできることでもないよ」
「――べつに恩を返しているつもりはない。こうして助けあっている間はギブアンドテイクの関係として力を貸すだけだ」
「それだけかい?」
「――それだけとは?」
「覚醒剤のために苦しんでる娘っこを目の前に見て感じるものでもあるかなと思って――あんたらそっちの商売も仕切ってたんだろうからね。間違っていたなら謝るけどよ」
「……そんなことはまったく関係がない」
それきりおっちゃんたちは黙り込んだ。
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