食料倉庫の出口で待ち伏せしていたあたしはその連中ともろに目をあわせてしまった。撃たなきゃ!――でもだめ。膝ががくがく揺れて引き金にかけた指にもまるで力が入らない。やっぱ無理だよー。男のひとりがそんなあたしを見てにやりと笑うと手にした拳銃を構えた……え? あたしここで死ぬのかな? 悪い夢でも見ているみたい……。
銃声が聞こえたと思った瞬間、身体にショックを感じて目の前が真っ赤に。どこか遠くでカラシニコフを連射している音がする。ふっと気がとおくなった。
気がつくと地面につっぷした頬に暖かくぬるっとした感触。かたわらを見ると佑があたしを抱きかかえ重なるように倒れていた。上着が真っ赤に染まっている。何が起こったかだんだんわかってきた。佑があたしを突き飛ばして身代わりになってくれたんだ……。
「血止めをしないといかんな。起きあがれるか?」友彦のおっちゃんがきな臭い銃を背中にまわしながら顔をしかめる佑ちゃんを抱きかかえた。
「必要なときに武器を使えない者は死ぬぞ。死ぬだけならまだいい。臆病者はまわりの仲間も巻き添えにすることになる。そんな奴は無用である以上に有害だ」
夜、佑の腕の包帯を巻きかえていると後ろから例のごとく冷たい声……うー、むかつく! ふん、そうさ、確かにあたしはろくでもない奴。パパやママを心配させたくてわざと自分を粗末にして生きてきた。でも、まだ人を傷つけたことも殺したこともないんだ! ――うっかり力をいれちゃったみたい。佑がうめいた。
「……ミホをせめないでよ。もとはと言えばあんたたちの裏切り者とかのせいで裏社会に大量に銃が流れてしまったためなんじゃないの?」ふだん大人しい佑の反論に「K1」は不意をつかれて相当むっとしたみたい。怒り出すまえにあたしはすばやく言った。
「いいんだよ、佑ちゃん――あんたのことは確かにこいつの言うとおり……あたしのせいで死ぬとこだったね。ごめん。たぶんこんな奴、生き残る資格なんかないんだよね」
「そんなことぜったいにない。いままでぼくはずっと孤独だったから……仲間はひとりも欠けて欲しくないんだ――」佑は反対の腕をあげて包帯ごとあたしの手を強く握った。
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