「やぁ」
「わっ。ミハルな。こんな時間にどうしたん?」
「デートや」
「デート? こげな淋しい場所で誰と」
「あんたや。他に誰もおらんだろーが。‥‥嫌か」
「いや。嫌なことないけど、でも、俺、面白かないぞ」
「今日、あんたテレビのニュース出てるの見とったで。端っこの方で固くなってた。どうしてもっと真ん中で映らんと。彗星発見したの、あんたやろ」
「俺だけじゃない。みんなで見つけたんだ。それに、あんまり騒がれるのは好きじゃない」
「欲ないなぁ。これきっかけに、コータローみたいにバーッと売り出したらよかったに」
「コータロー?」
「小泉コータロー。首相の息子や。あんたの見つけた星、見えんと?」
「まだ遠すぎて見られんよ。軌道もはっきりしちょらん。今、世界中の天文台が俺らの見つけた星――『スサノオ』って名前付けたんやけど、それを追って覗いているはずや」
「ふーん。世界中かぁ。凄いなぁ。けど『スサノオ』いうたら荒ぶれる神様やね。乱暴者で手ぇつけられなかった神様の名前や」
「そうなのかぁ。なんかカッコ良いから思いつきで俺が付けた」
「乱暴者やから、そのうち地球に当たるかも知れないで」
「まさか。そしたら地球は破滅やで」
「さむ」
「これ、着れな」
「ありがとう。‥‥なあ。星の光って静かやね。何十年も何百年も昔から届くんやろ」
「ああ。そんなのは一番近いやつだ。もっともっと遠いところからやって来る」
「あたし時々な、この星の光の生まれた頃に戻りたいと思うんよ」
「変なこと考えよるな」
「そしてそのまま光に乗ってずーっと飛んでゆくんや。そしたら悲しいことなんかなくて、ずーっとずーっと何処までもいけるのにって思えて‥‥」
「あれ。急にセンチになってどうしたん。ミハル、お前、‥‥泣いてるんか」
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