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ウルル

中条卓

陽射しに温められたわたしの吐息が光を踊らせるころ、またあの小さな生き物たちがやってくる。墜ちてきた星のかけらがわたしの姿を変えたあと、しばらくわたしがまどろんでいたあの暗くて寒い日々には、わたしの中で暮らす連中の数もずいぶん減ったようだが、またこの頃になってようやく息を吹き返してきたのだろう。連中はわたしを貫く力の線が集まる場所を探し、清め、祭壇を築いては供物を捧げに来る。ここの生き物たちの暮らしは、彼らがわたしを見つけたときから少しも変わっていない。そうかと思うと、わたしの裏側では海から上がってきた生き物と陸にとどまった生き物との間にまたしても争いが起きているらしい。だがそうやって小さな生き物たちが互いに殺し合い、数を減らせば今度はもっと小さな生き物たちがその死骸を食らって増えるだけのこと。この星の上にあるいのちと知識の総量は今も昔も少しも変わっていないのだ。わたしの上で眠りにつく生き物たちよ、わたしは静かにおまえ達を運びながら、星座がゆっくりと形を変えていくのを見守ろう。

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