Tarot-- Spiritual Journey

　それが、どこで生まれたのか、わたしは知らない。
　それが、いつから在るのかも・・・。
　わたしが知っているのは、ただ、その美しさ。
　わたしが感じるのは、ただそれと共に在る喜び・・・。

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　名前を持たない若者が、歌いながら、踊りながら、気ままな旅に出かけます。
　彼は魂の旅人。
　無垢なハートと、クリアな精神を持つこの若者は、“Fool--愚者”と呼ばれ、７８枚のタロットカードの中を、自由に旅をしています。
　“Fool”とは、誰でしょう？
　誰でもあり、そして誰でもないこの若者は、何も知らない愚か者で、同時にすべてを知る者です。
　ピュアなハートを持ちながら、ユニークな個性を持つ者です。
　“Fool”、プレイフルに旅を続けるこの若者は、実はわたしたちの分身。
　自由に旅をする、魂のシンボルです。
　“Fool”の姿を通して、Tarotは、わたしたちをスピリチュアルな旅へと誘ってくれるのです。

　「魔術師」、「母なる女神」、「恋人たち」、「悪魔」、「死神」、「星」、「月」、「太陽」・・・。不思議な絵柄の描かれた、『Ｔａｒｏｔ=タロット』と呼ばれる１組のカードは、占いに、メディテーションのツールに、またギャンブル用のカードとして今に伝わりました。一般に７８枚１組で、普通、メジャー・アルカナ（大アルカナ）と呼ばれる２２枚のグループと、マイナー・アルカナ（小アルカナ）と呼ばれる５６枚のカードで構成されます。“Fool=フール”は、このメジャー・アルカナの２２枚の中の１枚として登場することが多く、ここにタロットの核になるストーリー、“Fool”の旅の物語が、無数のシンボルとともに描かれているのです。自意識の目覚め、愛、運命の変転や死を体験しながら、“Fool”は、自己（セルフ）へと続く変容の旅を生きていきます。
　何色でもなかった彼の魂は、メジャー・アルカナを旅するうちに七色の光を帯びて、そして再び真っ白な魂へと生まれ変わっていくのです。その旅の１つ１つのステップが、メジャー・アルカナにシンボリックに、そして生き生きと描かれていきます。
　マイナー・アルカナには、もう少し日常的なこと、“Fool”の小さな旅のストーリーが描かれています。 普通５６枚から成るマイナー・アルカナは、４つのスート（組）に分かれ、それぞれが１〜１０までの数札と４枚の人物カードで構成されます。“wand”（ワンド・棒）のスートには直感と生のエナジー、“cup”（カップ・聖杯）はハートと愛、“sword”（ソード・剣）はマインド・思考、“pentacle”（ペンタクル・五芒星）には物質や存在自体と結びつく物語がそれぞれ描かれ ています。パートナーシップや家庭のこと、仕事や体に関することといった身近なテーマが、ここでは豊かに描かれ始めます。
　“Fool”はこのメジャー、マイナーの両アルカナを、そのどこにでも存在し、どこにも属さない形で、自由に旅をしていくのです。

　そんな“Fool”の物語を描いた美しいタロットが、今では、数多く存在します。タロットに出会い、インスピレーションを刺激された人々や、秘密結社やニューエイジのグループなどが、それぞれのイメージにあったカードを生み出したのです。あるものは伝統的なイメージのままに美しく描き直され、あるものはまったく新しいデザインに生まれ変わり、それらは、わたしたちを無限に存在する宇宙へ旅立たせてくれるかのようです。
　マルセイユ系として知られる一連のタロットは、木版の香りの残る中世的な伝統的デザイン。色彩も、タロットに描かれたシンボルもシンプルですが美しく、静かに、そしてクリアにメッセージを伝えてくれます。初めて出会うタロットとしては、付き合いにくいと思う人も多いようですが、余計な説明のなく、うるさくないマルセイユを、わたしは、わりと好きなようです。
　そして、ライダー版（ウェイト版）として知られる１組のタロット。“The Rider Tarot Deck”は、作者のウェイト（A.E.Weit）がそれまでのタロットにみられる伝統的なデザインを一新したものです。マルセイユ版など伝統的なタロットは、マイナー・アルカナの１〜１０までのカードはトランプのような数札で（トランプの原形はタロットという説もあります）、全体にシンプルな絵柄。直感力の優れた人ならともかく、一般の人々が占いやメディテーションのために、あるいは魔術のテキストとして利用するには、語りかけてくることの少ないカードだったもしれません。
　ウェイトはそれを、カラフルで寓異に満ちたタロットに描き直しました。中でもメジャー・アルカナのカード位置の変更と（後述--タロットのタイトルを参照して下さい）、マイナー・アルカナの変更が斬新で、１〜１０までの数札を絵札に書き直したおそらく最初のタロットです。シンプルな数札を色彩豊かな絵札に変えることで、これまでのタロットでは感じにくかったイメージが、一目見て沸き出すようにしたのです。これは、タロットの世界に新しい風を吹き込みました。そして、この変更以来、フルカラー＆オール絵札という新しいタロットが創られるようになり、優れたメディテーションのツールとしてのオリジナリティ豊かなタロットも、数多く生み出されるようになったのです。

　もし、あなたがタロットを今から始めてみようと思ったら、このウェイト版を薦められることが多いでしょう。カードの基礎を勉強するのには最良のタロットだと、多くの人が言うかもしれませんね。確かに、ウェイト版は間違いなく良質のタロットです。また、手に入りやすいタロットでもあるということも魅力の１つです。
　けれども、もし、あなたがタロットと友達になりたいと思うのなら・・・、それが最初のタロットであってもそうでなくても、かまわないから自分が好きだと思うものを選んでみて下さい。あるいは、偶然出会ったタロットが、最良のファースト・コンタクトかもしれません。タロットは、リーダー（読み手）にとって楽器のようなものです。それは、あなたに内在するものを引き出し、共に生きる友人です。そして、あなたに驚きと発見を与え続けてくれるものです。プレイヤーが楽器を選ぶように（あるいは楽器がプレイヤーを選ぶように？）、それぞれの人には、それを待っているタロットが存在します。あなたのハートに響く音色を持ったタロットを、どうか選んでみて下さい。
　“感じる”ということは、素敵なこと。自分の好きなものを感じる、自分に語りかけるカードを感じる・・・。それは、タロットの創り手からのメッセージを感じ、カードから伝わってくる自然を感じ、宇宙の音楽を感じ、あなた自身を感じること。あなたが何に魅かれ、どんなタロットに感動するのか・・・、その発見は、タロットがあなたに与えてくれる最初の贈り物かもしれませんね。
　だから、タロットの旅を始めたいと思ったら、まずあなたの好きなタロットを選んでみて下さい。マルセイユにはマルセイユの香りが、ウェイトにはその知恵があります。そして、まだまだたくさんの魅力溢れるタロット--魔術的なもの、シンプルでナチュラルな感じのもの、ユーモラスなもの、ファンタジックなもの、宇宙的なイメージを持ったもの・・・etc、が存在します。タロットは、それに関わる人によって様々に愛され、時には恐れられながら、姿を変え、時を生きてきたのです。そして、今では、何百という素晴らしいカードが、それぞれに見合った、タロット・リーダーのもとで生きています。そして、それぞれのユニークな旅を続けているのです。

　今、あなたの手にタロット・カードがあるのなら、旅はもう始まっているのかもしれません。カードを１枚ひいてみましょう。あなたのハートは、何を感じるでしょう？　不安、喜び、それとも驚き？　タロットは、見る者の心に微妙で、そして大きな波紋を投げかけます。ヒーラーのような優しいヴァイブレーションを送ってくることもあれば、受け入れがたいメッセージを携えてくることもあります。けれどもタロットは、決して不可能なことは言いません。なぜならそれは、わたしたちの内側からのメッセージだから。エゴに追いやられ、見失ってしまっているわたしたち自身からの。タロットは、心のブロックを壊し、シンプルな“わたし”を思い出させてくれます。ただ、あるがままのわたしを・・・。そして、深いところからやってくるメッセージは、わたしたちを新たな始まりへと導きます。ここではないどこかへ行きたかったわたしたち、深い森で迷っていたり、ボンヤリと眠りこけていたわたしたちに、新しい生命と、ここに存る喜びを伝えてきます。カードのメッセージを受け入れた時、ハートは不思議とくつろいで、わたしたちが宇宙と分かたれてはいないことを感じます。その喜びが、どうかあなたのもとにも訪れますように・・・。

　最後に、一般的なタイトルと、それぞれのカードに当てられた数（一般にメジャー・アルカナには番号がふられています）を挙げておきますね。