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Tarot-- Spiritual journey

魔術師たちのおくりもの

Soma

魔術師と呼ばれた賢者たち・・・、
魔術師と呼ばれた愚かもの・・・。
彼らの見ていた神秘とは、
いったい、どんなものだったのでしょう・・・。

 魔術師と自称し、あるいはそのように呼ばれた人々。いにしえの神々を蘇らせ、太初のエナジーを呼び覚ました魔術師たち。彼らの残した素晴らしいタロットは、今なお、神秘の輝きに溢れています。

 緑の服に見開いた目、頭には角をつけたクレイジーな男が、画面から飛び出さんばかりに描かれています。ヨーロッパの祭りに登場するグリーン・マンにも似て、また獣人のようにも見えるこのカードは、“Clowley Thoth Tarot”のFool(フール)。『トートのタロット』、『クロウリーのタロット』として日本でも知られている“Clowley Thoth Tarot”の1枚です。“Clowley Thoth Tarot”は、その名の通り、稀代の魔術師、かの悪名高きAleister Clowley(1875〜1947)の手によるタロットです。クロウリー自身については様々な見方もあるでしょうし、そんな名前は初めて聞いたと言われる方もいるでしょうが、彼のタロットからは、その人物とエナジーが溢れ出し、わたしたちを魅了するかのようです。
 ここには、それまでのタロットにはなかった、強烈なエナジーの放出があります。セクシャルで本能的なエナジーは解放され、日常的な思考や常識を撃ち破っていくかのよう。「Fool」1枚をとってみても、まさに夢見る旅人といった雰囲気のウェイトのそれとは違い、常軌を逸した何をしでかすかわからない人物、その存在の自由さと、ユーモアで世界を笑い飛ばしてしまうような人物が描かれています。また、『Strength』(力)のカードも『Lust』とタイトルを変え、『黙示録』の「獣の王」と自ら名乗ったクロウリー自身が描かれています。ここにもまた、クロウリーの主張と自意識の強さが現われているようです。

 20番のカードは、『Aeon』。『Judgement』という最後の審判をイメージさせるキリスト教的なデザインは一新され、いにしえの神々の叡智と、新しい神の誕生が描かれています。すべての色を放つこのカードのオーラは、わたしたちを覚醒させ、新しい次元へと導くかのようです。

 クロウリーが夢見たものはなんだったのでしょう? 自意識が強く、自己顕示欲を捨てることもなかった彼は、同時に自由な新しい時代を創ろうとしていたのかもしれません。クロウリーのタロットの中、征服され打ち捨てられた古き神々とその知恵は蘇り、やがて来るニューエイジ・ムーブメントに繋がる、新しい時代の到来を予感させます。

 さて、魔術師というか、魔術結社(秘密結社)の流れを汲む、もう1つの美しいタロットも忘れてはいけませんね。イスラエル・リガルディー(Israel Regardie)が禁を破って発表した“Golden Dawn Tarot”。こちらも『ゴールデンドーン・タロット』として、日本でもよく知られたデッキです。“Golden Dawn”=ゴールデンドーン(黄金の夜明け団)は、先のクロウリーも一時在籍していた魔術結社ですが、マグレガー・メイザース、A.E.ウェイト、ダイアン・フォーチュン、アイルランドの詩人のイェイツなどが所属していたとして、ご存じのかたもいるかもしれませんね。クロウリーのタロットは、彼が一時関わっていたということもあって、ゴールデンドーン内のタロットの盗作、または模倣したものと言われることがあるほどです。もっとも実際手にしてみると、そのヴァイブレーションの違いに、そんな話は吹っ飛んでしまいますが・・・。
 リガルディー発表の『ゴールデンドーン・タロット』のFool は、子供の姿で描かれています。無垢で美しく、そして好奇心一杯の子供、未来を手にする子供、スピリチュアルなたからものを持つ子供です。『Lovers』のカードには、ギリシア神話のアンドロメダとペルセウス。神話のイメージを通して、インスピレーションと恋の予感が、夢のような光の中に描かれています。

 それにしても、本当になんと美しいカードたちでしょう。『ゴールデンドーン・タロット』は、そこに流れるやわらかな色調と静かなヴァイブレーションが、わたしたちをタロットの世界に引き込み、内なる旅へと誘うかのよう。その1枚1枚が、神秘の扉を開いていくかのように・・・。そして、『トートのタロット』のダイナミックなエナジー。内なるものを活性化し、眠りこけているわたしたちの意識を叩き起こすような衝撃。既成概念が剥がれ落ち、内側にあった生のエナジーが押し寄せてくるような感覚。わたしたちを酔わせ、また覚醒へ導くこの2つのタロットは、静と動、2つの全く違った個性を持つ2人のマスターのように、わたしたちに語りかけてきます。

 この2つのタロットはまた、マイナー・アルカナにも新たな息吹を吹き込みました。
それぞれのマイナー・アルカナは、数札とも絵札とも言い切れない中庸のデザイン。どちらも従来の、一見するとオブジェが並んでいるだけのようなデザインに手を加え、絵札とまではいかないまでもその意味合いが汲み取りやすいように、また完全な絵札では限定されてしまうイマジネーションを、豊かに膨らませる作用も持っています。例えばカップのスートは、そこに水の流れを描き加えるなどで、エモーショナルなハートを感覚的にも知性的にも感じやすくなっています。『トート・タロット』では、さらにヴィヴィッドな色彩が、カードの意味を際立たせる感じです。

 また、マイナー・アルカナのもう1つの新しい流れ。人物カードにも、変化が起きてきています。従来の人物カードは、各スートふつう、
「キング」・「クィーン」・「ナイト」・「ペイジ」の4枚でした。
『ゴールデンドーン・タロット』では、
これが、「キング」・「クィーン」・「プリンス」・「プリンセス」に、
『トート・タロット』では、
「ナイト」・「クィーン」・「プリンス」・「プリンセス」に変わっています。
この変化は、現在の新しいタロットにも受け継がれ、さらにユニークなタイトルに変わったものも存在します。いずれにしても、人物カードの性別や個性をはっきり描き分けることにより、それぞれのカードのエナジーが感じやすくなったようです。

 この2つのタロットの登場のあと、実に多くのカードが創られるようになりました。魔術師たちのタロットには、人々の潜在意識を揺さぶり、創造力を呼び覚ますエナジーがあるのかもしれません。 そして、その多くには、彼ら魔術師たちの残した知恵と様々な想いが、無数の星々のように煌めいています。次代のタロットに多くの影響を与えた『トート』と『ゴールデンドーン』。その素晴らしさ、その感覚を、少しでも味わっていただけたら良いのですが・・・。どうかあなたに、それを手にするチャンスが訪れますように・・・

*Illustrations from the Golden Dawn Tarot reproduced by permission of U.S.Games Systems, Inc., Stamford, CT 06902 USA. Copyright D"m1982 by U.S. Games Systems, Inc. Further reproduction prohibited.

 

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