太陽の神、月の神----、
常若の国に、黄泉の世界----。
さまざまな神話の底流に歌われる、
どこかよく似た旋律は、
無意識の世界から溢れ出る、魂の歌なのかもしれません----。
運命の糸を司る3人の女神、うずまきもよう、生命の木、荒ぶる海の神や光の神など、神話の中に今も生き生きと歌われる神々は、タロットカードの中にも数多く登場します。それには、さまざまなバリエーションがあり、1つのデッキが単一の神話を扱っていることもあれば、たくさんの神話を網羅することでその世界観を伝えようとしたものなど、色とりどりです。
神話----それは、単なる昔話としか受け止められないこともしばしばですが、そこに語られる不思議な物語は、わたしたちを魅了し、感動を生み、時には今を生きるメッセージとして心に響いてくることさえあるようです。神話には、タロットカードにも流れているエナジー、ユングが「元型」と呼んだ、あのエナジーが力強く脈打っています。いえ、そういう意味では、タロットもまた1つの神話と呼べるのかもしれません。
世界にはたくさんの神話があります。そして、その一見バラバラの異なった世界の神話の中に、不思議と共通するイメージが見え隠れしています。それは黄泉の国へ行って戻ってくる話だったり、すべてを産み出す母なる女神の物語であったりするのですが、それらの合い通じるイメージを通して、わたしたちの無意識に潜む共通のイメージ、共通のエナジーを感じることが出来ます。多くの人々を魅了する、この元型的なイメージが、タロットの中に、さまざまなシンボルとなってちりばめられているのです。
“The Arthurian Tarot”は、アーサー王の伝説をもとに、元型的なイメージを強く表現しようとしたタロットです。有名な聖杯探究の物語と、そのベースにあるケルト神話からのイメージが、落ち着いた静かな絵柄と豊かな色彩の中に描かれています。
カードの中の登場人物と1つになって旅するうちに、神秘的な探究へと誘ってくれるかのような、深くハートに染み入ってくるタロットです。
『神話・伝承事典』(大修館書店)の著者でもあるバーバラ・ウォ−カーが発表した、“Barbara
Walker Tarot”は、北欧やケルト、ヒンズーの神々など、キリスト教以前の神々が、ふんだんに描かれたタロットです。とりわけ、キリスト教によって異端とされ、悪魔や忌むべきものとされてしまった、いにしえの女神たちへの想いが強烈に感じられてなりません。かつては神であったその存在たちは、このタロットの中、まるで闇の中から甦ってくるかのように、強いオーラを放ち圧倒的なエナジーで、わたしたちに迫ってきます。
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decks at www.usgamesinc.com)
“Haindl Tarot”(1999年)のマイナー・アルカナには、さまざまな世界からの神々が舞い降りました。神々は人物カードとして登場し、ワンド(棒)のスートにはヒンズーの神々、カップ(聖杯)にはヨーロッパ、ソード(剣)はエジプト、ペンタクル(五芒星)にはネイティヴ・アメリカンの神々が描かれています。
他にも、ギリシア神話の世界を描いた“Mythic Tarot”(1986年)、同じくギリシア神話からテセウスとミノタウロスの迷宮を描いた“Mino
Tarot”(1982年)、ケルト神話の世界を幻想的に描いた“The Celtic Wisdom Tarot”、世界各地の女神をメジャー・アルカナに描いた“The
Goddess Tarot”などなど、神話を主題にしたタロットは次々に生み出されています。元型的という意味では、“Jungian
Tarot”(1988年)なんてタロットも発表されています。もしかしたらそんな中に、不思議なノスタルジーを感じるタロットに出会うようなこともあるかもしれませんね。
そしてもちろん、これら神話をテーマに扱ったタロットだけが、元型的なイメージを伝えるタロットではありません。『デビル』や『死神』は言うに及ばず、タロットカードの1組には、「グレートマザー」や「オールド・ワイズマン」を想わせるもの、アニマ的な光を放つカードなどが存在し、タロットを持っている人なら「あぁ、あのカードね」と、すぐにイメージが湧いてくるに違いありません。ワンドやカップといった、マイナー・アルカナのシンボルそのものが、すでに元型的でもあります。
とは言え、これらのシンボルが伝える意味やメッセージは、それぞれのカードの意味やメッセージと同様、頭で覚えたり分析しようとしても、感動を呼ぶこともリアリティを感じることも難しいでしょう。それは神話と同様、無意識からのメッセージであり、魂の歌う歌。それらがリアリティを持つのは、わたしたちのハートがオープンで、さまざまな神秘に感じやすくなっている時かもしれません。
世界は神秘に満ちています。吹き抜けていく風に、月や星の光に、水のヴァイブレーション、音楽や詩、そして夜の夢の世界にも、忘れられた神々が住んでいます。そうして神々は、わたしたちの旅の始まりからそこにいて、見い出される時を待っています。ドラゴンの側を通り抜けさせたり、悪戯をしかけたりしながらも、インスピレーションという贈り物をいつも与えてくれる存在。永遠の生命を持つ神々は、今も、わたしたちがやって来るのを待ちながら、歌い続けているのです。
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