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Tarot-- Spiritual journey

ファンタジー世界の住人たち

Soma

ここではない何処か――、
そして、どこにでもある不思議な世界――。
ファンタジックな異世界の住人たちは、
タロットカードの中にも入り込み、
わたしたち自身の物語の、道しるべであるかのように、
時には、旅の道づれにもなりながら、
予想もしていなかったファンタスティックな旅へと誘いだしてくれるのです。

 素晴らしいファンタジーやロールプレイング・ゲーム、そこには神話と同様の、あの元型的なエナジーが流れています。「むかし、むかし・・・」で始まるどこか聞き覚えのある物語は、いつの日も、わたしたちの心を揺さぶり、異世界へのドアを開くかのよう。エルフやドワーフ、ユニコーン、そしてドラゴンたちが生き生きと住まう世界、見たこともない花々が咲き乱れる世界、そして、そこに紛れ込んだ子供たち――。不思議な旅を続ける若者が、いつしか英雄になる話が語られるかと思えば、死と再生の物語も当たり前のように描かれます。それはまるで、いにしえの神話が忘れ去られたり薄れてしまっていく中、そのエナジーを蘇らせ、ハートに空いた空虚感を埋めるかのようです。
 わたしたちの無意識の世界からやってくる圧倒的なエナジー、それが形になったファンタジーやRPGは、現代に姿を変えて語り継がれる神話であると言えるのでしょう。

 そんな素晴らしいファンタジーと言えば、やはりJ・R・R・トールキンの書いた『指輪物語』を忘れることは出来ないでしょう。それこそ、「神話」と呼んでもさしつかえのないこの物語。数々の絵画に描かれ、たくさんのファンタジーやゲームにも影響を与えたこの物語に、感動を覚えた方も多いのではないかと思います。
 その『指輪物語』の世界をそのままタロットカードに写したのが、1996年に発表された、“The Lord of the Rings Tarot”(The Lord of the Rings Tarot Deck & Card Game)です。カードには、物語の中の様々な名場面が描かれ、フロドやサムやガンダルフはもちろん、ゴクリ、アラゴルン、エルフの王妃ガラドリエル、大鷲グワイヒア、川の娘ゴールドべリなどなど、ありとあらゆるキャラクターが登場します。見つめていると、まるで物語そのままを読んでいるようなこのデッキは、タロットというより、物語の挿し絵のような感じさえしてきます。そして、『指輪物語』を読んでいる時の感動が甦り、もう1度、本を読んでみたい気分さえ呼び起こしてくれるタロットです。

 また、このカードはタイトルにもあるように、ゲーム用にもデザインされているようで、簡単な遊び方のブックレットもついています。残念ながら、わたしはまだ遊んだことがないのですが、このカードの持つ雰囲気は、もしかしたらゲームとして遊ぶ方が、リーディングするよりも面白いかもしれませんね。

 そして、もう1つ、物語の世界がそっくりそのままタロットになっているのが、1989年発表の“The Wonderland Tarot”です。

 ご覧になれば、一目瞭然。あの『不思議の国のアリス』&『鏡の国のアリス』の世界が描かれたタロットです。こちらもオールキャストといった感じで、アリスをはじめ、白ウサギに帽子屋、ハートの女王、チェシャキャットにハンプティ・ダンプティが、ユーモアたっぷりに、そしてちょっぴりシニカルに描かれているタロットです。また、マイナー・アルカナのそれぞれのシンボルが、物語にも登場する、ペッパーミル(ワンド)・シルクハット(カップ)・フラミンゴ(ソード)・オイスター(ペンタクル)になっているのも、個性的な感じがするカードです。

 とは言っても、ライダー版(ウェイト版)がベースになっているので、ウェイト系のタロットしか手にしたことがなくても、比較的、違和感は感じないかもしれません。もっとも、リーディングには、頭をひとひねりしないといけないかもしれませんが・・・?

 その他、登場人物のすべてがドラゴンに変わってしまっている“Dragon Tarot”、不思議な猫族の住人の世界が描かれた“Tarot of the Cat People”、ハロウィンの夜がファンタスティックに描かれた“The Halloween Tarot”などなど、ファンタジー世界からの乱入騒ぎはあとを絶ちません。
 また、特定のタロットでなくても、78枚の中の何枚かに彼らが忍び込んでいるタロットは、それはもう数え切れないぐらいです。そうして、無意識の世界からやってくる住人たちは、時にはワケの分からないことを呟きながら、時にはインスピレーションをたずさえて、こちらとあちらの世界を行き来しています。タロットカードという、異世界へのドアを通って・・・。

 わたしたちの無意識の世界は広大です。そして、それは、無限の神秘へと繋がる素晴らしいポイントです。その内なる宇宙を通ってスピリチュアルな旅をした人々が、かつてはたくさんいたのでしょう。魔術師と呼ばれた人々、ニューエイジの魂、大地の声を聞いていたネイティヴ・アメリカン、神々と共に生きたわたしたちの祖先、そして異世の住人をこちらの世界に招いた人々――。
 彼らが旅した宇宙は、もちろんわたしたちの内にもあって、いつでもそこを訪れる旅人を迎え入れてくれます。
 タロットは、その旅の良き友人です。カードは、わたしたちをスピリチュアルな旅へと誘います。それは、宇宙船のようにわたしたちを未知なる世界へ運んでくれることもあれば、人とも妖精ともつかない者の姿をとって、不可思議なアドバイスを残していくこともあります。
 そして、たくさんのタロットたち――先人たちの知恵に溢れ、想いを伝え、神秘の世界へ誘う彼らとの出会いは、なんと素敵なハプニングでしょう。そうして、わたしたちがどんなタロットと旅をしようと、その友人を大切に想うなら、その旅は素晴らしいものになるでしょう。そして、その想いがある限り、タロットは、わたしたちの魂の歌を歌い続けます。それは、わたしたちの深い源泉から溢れ出る歌、大いなる宇宙とわかたれることのない神秘の領域からの歌です。
 どうか、あなたのハートに、その歌が響きますように。そして、タロットとのユニークな出会いが、あなたの素晴らしい“Spiritual journey”の始まりでありますように・・・。

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