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BookReview


レビュー:[雀部]&[おおむら]&[モズ]&[彼方]

星のパイロット

星のパイロット
ISBN:4-257-76802-9 C0193

笹本祐一

 

朝日ソノラマ 515〜578円 1997/3〜2000/10
 美紀は新米宇宙飛行士、経験は浅くとも、腕は確か。中小航空宇宙会社に雇われ、最初の仕事に赴くが・・・
 近未来の個人で宇宙パイロットになるのが手の届く夢になっている世界。 趣味に「ロケット打ち上げの見物」と書く著者が楽しみながら書いているんだからまあ、書き込み(ロケットのスペックとか)の細かさと来たら。良くも悪くも、ここらあたりを面白がれるかどうかで評価が別れると思います(大藪さんが、銃器のスペックを細かく書くのと同じ感覚)  ドラマ的な面白さは、続編の『彗星狩り(上・中・下)』の方が上で、あくまでこの作品は導入部ということのようです。

ロケットガール
ISBN:4-8291-2618-3 C0193

野尻抱介

 

ロケットガール
富士見書房 1996/12〜1999/8
 ソロモン諸島で国産衛星を打ち上げようとする第三セクター<ソロモン宇宙協会>。この怪しげな団体に、父親を探しにやってきた女子高校生が出会ったことから物語は始まります。なんと彼女の体重が、たった38kgであることに目を付けた協会は、早速彼女を宇宙飛行士に仕立て上げようと、あの手この手で篭絡しようとするが。
 爆笑ハードSFクレギオン・シリーズで名を馳せた著者の、ノンストップお笑い満載なおかつ超真面目和製ライトスタッフヽ(^o^)丿 ハードSFファンは見逃せない一冊!

《星のパイロット》シリーズ
《ロケットガール》シリーズ

[雀部]  野尻さんの「ロケット・ガール」が'95年で、笹本さんの「星のパイロット」が'97年なんですけど、作品が醸し出す雰囲気はどことなく似てませんか?
[彼方]  数年先のNASDAと数十年先の米国企業ってことで、一見違うように見えるんですけど、少ない予算とシビアな物理的な制約とあり合わせの資材で、ミッションをこなしていく所と、野尻さんも笹本さんもスラップスティックなノリの中にも、ディテールに凝ったリアルな描写で引締めてくれるので、そういった所が毛並が違うんだけどなんとなく似ているのではないかと。
[雀部]  どちらも、近未来の個人(もしくは一企業)で宇宙パイロットになるのが手の届く夢になっている世界ですね。早くこういう世界に住みたいです〜(泣)
[おおむら] 現在も有人ロケットを商業ベースでやろうという企業は存在しますね。
 ただ、信頼性、安全性、コストの面から、そんなに早くは実現してくれそうもないのが悲しいんですけど。
[雀部]  やっぱり(苦笑)  そう言えば「2001年富豪の旅」ついにやりましたね。25億円かぁ・・・
 金で宇宙旅行を買った最初の人物として、歴史に名を刻んだと考えれば、高くないような気がしないでもない^^;
[彼方]  「星のパイロット」なんかで、F-18とかスペースシャトルとか前世紀のが出てきて、当時は近未来の世界だとか思ってましたが、現実にも前世紀の代物になってしまって、読み直していて感慨深いものがありますね(^^;。
 さすがに宇宙パイロットになるのは無理ですが(^^;、気楽に・・・てのは無理にしても、ちょっと頑張れば月旅行に行けるぐらいにはなって欲しいです。
[雀部]  書き込み(ロケットのスペックとか)の細かさと来たら。良くも悪くも、ここらあたりを面白がれるかどうかで評価が別れると思います。大藪さんが、銃器のスペックを細かく書くのと同じ感覚と感じたのですが(笑)
[モズ]  この3行で、むっちゃんこ読みたくなりました(笑)
 なんせ、サターンVのリング綴じの社内プレゼン資料みたいなのまで欲しがる、オヂでして(苦笑)
[彼方]  そうですね。「星のパイロット」とか「ロケット・ガール」とかマニアックな小説ですから、拘ってナンボですからねぇ(^^;。彼方なんかはこーゆーディテールの細かいのって好きなんでOKなんですが。
 「ロケット・ガール」はむっちりむうにぃさんのイラストでほんわか路線ですけど、「星のパイロット」は鈴木雅久さんのイラストがディテールの細かさをさらに際だたせていますし。
[雀部]  ありゃモズさん、乱入ありがとうございます(笑)
 モズさんには『夏のロケット』(川端裕人著、'98/10/10、文藝春秋社、1762円)もお薦めかもしれませんね。
[モズ]  で、ワタシ、この本、去年の今頃だったか、読んでます。たいへんにおもしろかったです。いっちょかみしたくなってきましたよ!(笑)ロケット技術に関する部分は、ただ好きなだけのワタシですけど、なんとなく納得できる説得力でありました。
[雀部]  あ、やはり読まれてましたか〜。この本、基本的には野尻さんが『ロケットガール』でやっていることを、高校時代の仲間たちと一緒にやるお話ですよね。
[モズ]  今、SpaceCowboys、見ているんですが、あの映画は、年くってる人(失礼、笑)であればあるほど、楽しめるっす!
 ♪Flymetothemoon...このエンディング、サイコーだわさ!
 そういえば、昔、エリック・バードンとアニマルズっちゅうバンドが「SkyPilot」ってのをヒットさせちょりましたな。古!
[彼方]  そういえば、笹本さんってflymetothemoonに思い入れがあるのか、ちょこちょこ出てきますね。最初の妖精作戦シリーズの時には、jazzのスタンダードだなんて知らなくて、ちょっと前、evangelionのエンディングでこういう曲だったのかと初めて知りました:-)。
 で、「ロケット・ガール」シリーズの最新刊のタイトルもこの曲名をモチーフにしてますね。
[雀部]  『私と月につきあって』ですね(笑)
 これは、どういう感想を持たれましたか?SFマガジンでは、フランス娘たちがけっこう遊んでいるという設定が現実的でないとの指摘もありましたが。
[彼方]  現実的でないって指摘は無粋ですけど(^^;、確かに遊びすぎかも。早々にプロジェクトからフランス娘を二人ばかりリタイヤさせるためとは言え、重要なプロジェクトに関わる人間にしては、ちょっといい加減に過ぎるし、いくら小型・軽量と見栄えを優先にしたとしても、その人選はいい加減じゃないのと言われてもしょうがないかも。
 でも、そんな事は気にならないぐらいに、月へのミッションはトラブルたくさん、ピンチたくさん(^^;で、その切り抜け方は読んでいてぞくぞくしちゃいますし、最後の最後サンプルの中に生物らしきモノを見つけるくだりは感動しちゃいます。
[雀部]  個人的には訓練部分をもうちょっと詳しく書いて欲しかったというのはありますね。彼女たちにとっては、やはり初めての月ですから。
 そもそもの前提である“体重が少ないということは、全てに優先する。だから女子高生をパイロットに”という発想には、私は大いに関心したのですが、彼方さんはいかがでしたか?
[彼方]  言われてみると、シリーズを通して訓練の描写が少ないような気がしますね。一応やってはいるみたいですけど(^^;、さらっと流してるから、ぶっつけ本番みたい。まぁ、何事も訓練なんてつまらないことと相場が決っていますが(^^;。
 “女子高生をパイロットに”については、完璧な論理(^^;で脱帽ですね。何か違うだろうと突っ込むのを忘れるぐらいに。小型軽量化がお家芸の日本らしい取組みです。
[雀部]  では、<星のパイロット>の最新刊である『ブルー・プラネット』はどうでしょう。いよいよ行き着くところまで行った感もあるのですが、続編は書かれるんでしょうねぇ?
 私は、次のシリーズ名は<星々へのパイロット>となると思うんですが(笑)
[彼方]  是非とも書いて欲しいし、「星々へのパイロット」になってくれれば「ブルー・プラネット」から綺麗に繋がって良いんですけど、「星のパイロット」シリーズの世界では12光年先までのミッションは、ブレークスルーでもおきない限り無理でしょうから、それはちょっと残念ですけど無いかなと。
 となると、捕えた彗星の使い方とか、冷凍睡眠の実験台(^^;になるとかですかねぇ、次のネタは。
[雀部]  冬眠ですか、それが一番現実的かな。ラストで、反物質エンジン開発が示唆されてますから、その線もありかもしれませんね!それとあのレーザーセイラー発射シーンには、じ〜んと来ちゃいました(泣)
 思うに、このシリーズの山場といえばなんと言っても上中下とある『彗星狩り』じゃないかと思うのですが、この戦利品の彗星、狩っただけでは何かもの足りませんよね。彼方さんのおっしゃるとおりこの後何かありそうな気がしてなりません(笑)
[彼方]  個人的に冬が嫌いなのでぜひとも冬眠技術を・・・。と言うのはおいといて。
 レーザセイラーのシーンからマリオとスウの会話まで、なみだうるうる状態でしたけど、一番感動したのはマイケル・フェルナンデスの所で画像解析した結果が出てきた所でした。
 「ブルー・プラネット」の次は「レッド・プラネット」だろうってのはあまりにベタですか(^^;。この世界だと、温暖化が進んでるみたいだし、彗星の使い道もあるみたいですね。そうでなければ、金星に落してテラフォーミングの足しにでもと思ったのですが。とりあえず、スウ博士に彗星で遊んでもらうのが無難なところでしょうか。
[雀部]  最後になりますが、この二つのシリーズ、どういう人に読んで貰いたいでしょうか?私は、宇宙とか科学に興味を持つ中高校生に読んで欲しいなぁと。
 それで、SFとか宇宙開発に興味を覚えて、そっちの方面に進んでくれれば言うこと無しです(笑)
[彼方]  理科の補助教材にして欲しいぐらいですが(^^;。
 まぁ、宇宙に興味のある人とかいろいろありますけど、役人、それも財務省とか文部科学省(でしたっけ?)の役人に読んで欲しいですね。技術立国だのIT立国だの寝ぼけたこと言ってる暇があったら、これらの本読んで勉強して欲しいですね。円周率を3にしてる場合じゃないでしょ(^^;。
[雀部]  今回は、彼方さんをはじめ、おおむらさんモズさんも加わり賑やかになってうれしいですね。締め切りがあれでしたが(これは、毎回だな^^;)

[雀部]
48歳、歯科医、SF者、ハードSF研所員。
ホームページは、http://www.sasabe.com/

[おおむら]
同人作家。ホームページは http://www.t3.rim.or.jp/‾yutopia/

[モズ]
モズ中野(モズライト中野=不良中年ロケンローラーでもある)
海外向けセールス・プロモーション・ツール制作ディレクター。
いちおう、社内肩書きは「Chief Planner」。
幼い頃から、SF好きだった父親に連れられ50年代、60年代のSF黄金期の映画をたっくさん見て育ち、トラウマとなって現在に至る。映像制作プロデユーサーも兼務のため、特に「SFX」系作品に関しては「一家言」も持つ。平ったく言えば「文句言い!」(笑)

[彼方]
コンピュータシステムのお守となんでも屋さん。アニメとSFが趣味。最近、ハードなSFが少なくて寂しい。また、たれぱんだとともにたれて、こげぱんとともにやさぐれてるらしいヽ(^^;)ぉぃぉぃ  ペンネームの彼方は、@niftyで使用しているハンドルです。

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