コニー・ウィリスは、『犬は勘定に入れません』、『わが愛しき娘たちよ』と読み進み、折角なので、もう一冊と思い、本屋の棚で見つけたのを幸い『マーブル・アーチの風』(早川書房)を購入、読了しました。 『白亜紀後期にて』、『ニュースレター』、『ひいらぎ飾ろう@クリスマス』、『マーブル・アーチの風』、『インサイダー疑惑』の5編を集めた短編集ということなっていますが、最後の二つは、中編といってもよい長さです。 本のタイトルになっている、ややシリアスな『マーブル・アーチの風』以外の4編は、いずれも彼女らしいコメディSFで、大変楽しく読めました。 彼女のSFは、ややS分が少ないですが、SFが好きな人が読むと、逆に内容のS分がじんわりと染み出して来るように感じます。 それにしても彼女は、ロンドンの地下鉄(tube)と第二次世界大戦の空襲、いんちき霊媒師に、かなりご執心のようで、いろいろのところでお目に掛ります。 また、折に触れて出てくる、いろいろな映画のタイトルも、「これは観た、これも観た」と、確かめながら読み進むのも、ひとつの楽しみ方だと思います。 「訳者あとがき」によると、本書に収録されている、『ひいらぎ飾ろう@クリスマス』(deck.halls@boughs/holly)は賛美歌第二編、129番から、また、最新作の『All Seated on the Ground』は賛美歌21・251番から取ったタイトルとのこと。 また、この「あとがき」には書かれていませんでしたが、2003年に書かれた、『Just Like the Ones We Used to Know』(本邦未訳?)のタイトルは、何処かで聞いたことがあるフレーズだと思い、口ずさんでいましたらば、メロディが出てきました。 かの有名な映画『ホワイトクリスマス』(1954)で大ヒットした主題歌の一節でした(ただし、『ホワイトクリスマス』では「Just like the ones I used to know 」。彼女の小説のタイトルでは、何故か「I」が「We」になっています・・・?)。 そんなわけで、また本屋で『最後のウィネベーゴ』(2006, 河出書房新社)が目に留まれば、また衝動買いしていしまいそうです。 10月30日には、池袋のサンシャインシティで開かれている“JAPEX(全国切手展)”に出掛けた序でに、今年も屋上のプラネタリウム“満天”で、13:00からのCGプラネタリウム番組『STARS ディスカバリー・ザ・宇宙』(40分)を観てきました。 最初の10分ばかりは、『AUTUMN SKY』と題して、普通の秋の星空案内。 続いての、CGプラネタリウム番組の案内役は、一人の少年と一匹の犬。 先ずは、太古より語り継がれてきた星の神話や星座、近代科学者たちの偉大なる発見の物語。 更に、「星とは」ということで、燃えさかる太陽の表面からスタート、次第に太陽系、銀河系を通り抜けて宇宙の彼方まで旅に出ます。 終盤は、パルサーにも立ち寄り、次は降着円盤を抜けてブラックホールの直前、時間が止まるところまで接近。そこで、「このブラックホールの中に入るとどうなるのでしょうか?時間は止まった侭なのでしょうか?または、別の宇宙に繋がっているのでしょうか?それとも、全てがバラバラになってしまうのでしょうか?答えは未だ分っていません」というナレーションと同時に、我々はブラックホールに飛び込み、番組は終了となります。 このCGはイギリスで製作されたプラネタリウム人気番組で、“満天”での上映は日本初公開とのことです。 なお、この他、“月夜の魔法”、“星のせせらぎ”、“銀河鉄道の夜”などの番組も交互に上映されています。 今月紹介する映画は以下の三作品のみです。 『マーシャル博士の恐竜ランド』『ATOM』『きみがぼくを見つけた日』 ■『マーシャル博士の恐竜ランド』 10月2日は「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで、雨の中、『マーシャル博士の恐竜ランド』を観に出掛けました。 公開後、未だ2週間だというのに、上映は、早朝(09:15)1回と、夕方から夜にかけての2回の1日3回だけ。ともかく頑張って、早朝の08:20に我が家を出発。 08:50に映画館のあるビルへ着いたのに、先ず、エレベーターが動かない。9時になって、やっとエレベーターが動き出し、ガラガラのところで切符を買い、スクリーン12(客席:180)へ。 そして、日頃、恐れていたことが、今回は遂に起きてしまいました。最初から、最後まで、観客は私ただ一人!
物語: いつも奇妙キテレツな研究を発表し、本を出版しているマーシャル博士。 テレビ番組「TODAY」でインタビューをしている論説委員も、彼のことを馬鹿にしているし、学会も彼のことを相手にしない。 そんな中、彼を尊敬する若い女性科学者、ホリーに励まされ、タキオン増幅装置を完成、これを持って彼女が異次元への入り口があると信じている、寂れた砂漠の遊園地の洞窟に向う。案内役は、この遊園地の男、ウィル。 しかし、タキオン増幅装置に反応した洞窟は異変を起こし、この3人は異次元世界に転落する。が、そこは、ありとあらゆる古今東西の地球のものが転がっており、芥溜め状態。恐竜もいれば、類人猿もいる。何故か、大仏様や壊れたUFOまでもある。 また、一方、そこには、マーシャル博士が異次元に転落したときに紛失したタキオン増幅装置を使い、地球征服を目論む異次元人の集団、スリースタックたちもいた。 果たして、3人はこのハチャメチャな騒動の中から、失ったタキオン増幅装置を取り戻し、現実の世界に戻ってくることができるのであろうか? 「キネ旬」の評論によると、「下ネタの連続で、これは誰を対象に作った映画なのだ」的なことが書かれており、評価は最低。 子供だって、今の子供は、あの程度の下(H)ネタにはびくともしないと思います。 「キネ旬」では、この前の『プール』の評価もかなり低かったのですが、評論家が分っていないなと思う点が多々あったので、今回も敢えてこの映画に挑戦した次第。 その結果、評論家の中で、“タキオン”を知っている人は何人ぐらいいるのかな〜、などと考えながら、それはそれなりに面白く楽しめました。 昔、淀川さんは、テレビでSF映画を紹介するときは「凄いですね、怖いですね」を連発していましたが、ある時、何かで「私はSFは分らないのだ」といっているのを聞き、より淀川さんが好きになりました。 この前、ご紹介しました「Newsweek 映画 ザ・ベスト 300 完全保存版」の中でも、デービッド・アンセンは「シリアル=名作、コメディは軽んじる傾向がある」と書いています。この映画は決して素晴らしい映画とは思いませんが、欠点だけを論い(=あげつらい)、面白いところは無視されているような気がします。 もっと回りに沢山の観客がいて、一緒に笑って観られたら、より楽しかったと思います。 どうも今回は、評論家の評論になってしまい、失礼しました。 この映画も、エンドロールの途中で、『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』(1986)の最後を思い出させるような、ワンカットが入ります。 矢張り映画は、最後、場内が明るくなるまで席に座っていてください(転ばないためにも!)。 (原題)LAND OF THE LOST 2009/アメリカ/ユニバーサル映画 監督:ブラッド・シルバーリング 脚本:クリス・ヘンチー、デニス・マクニコラス 出演:ウィル・フェレル、アンナ・フリエル、ダニー・マクブライド、ヨーマ・タッコン 2009/09/18公開 1時間41分 ◇ 今回、初めて映画館で観た予告編。
★ | 『レイトン教授と永遠の歌姫』(日) | 2009年12月19日 |
| 人気ゲームの映画化。 永遠の命をかけた謎解き。 |
■『ATOM』 10月20日は、上映10日目、11:40からの『ATOM』を観に、「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで出掛けました。上映開始10分前に場内に入ったときは無人。また、一人かと悪い予感がしましたが、開始寸前に2人入場。スクリーン3、座席数:120に、取り敢えず3人で観ることができ、ホッとしました。
物語: ここは未来の空中理想都市“メトロシティ”。ロボット実験中の事故で、息子、トビーを死なせた科学省長官、テンマ博士は、トビーのDNAから、記憶を含めて息子そっくりなロボットを作り上げる。原動力は、お茶の水博士が発見した、善の究極エネルギー“ブルーコア”。しかし、いくらそっくりでも、本当の息子でないことを知るテンマ博士は、悩んだあげくトビーを見捨てる。 地上に降りたトビーは、人間の子供たちや、捨てられたガラクタロボットと仲間になり、新しく“ATOM”と名付けられ、人間として暮らし始める。 一方、地上との戦いを企み、究極の兵器ロボット“ピースキーパー”を開発中のストーン大統領は、このロボット用に、ATOMの“ブルーコア”を手に入れようと画策を始める。 果たして、ATOM対ピースキーパーの戦いの結末は。 そして、また、テンマ博士とATOMとの関係はどうなるのか。 この『ATOM』の映画化は、手塚プロダクションからの依頼で、香港とロサンゼルスに拠点を置く、IMAGIスタジオが手掛けた由。そんなわけで、この映画のATOMは英語を話します(私が観たのは、日本語吹替え版でしたが)。 面長で、青白いCGのATOMは、何となく馴染めませんでしたが、観ている中に段々気にならなくなりました。しかし、テンマ博士の心の葛藤と、アトムが消沈する前半は、いささか冗長で何となくだらけます。ATOMが地上に追いやられ、そこのガラクタロボットと仲良くなるシーンは、映画『A.I.』(2001)を彷彿させられます。また、 ワンカット、手塚治虫氏が登場しますので、見逃さないようにお気を付けください。 最後、本編が終わっても、何となく、ちょっともの足らない感じがしていましたが、長いエンドロールの途中で、突然“♪空を越えて ラララ 星の彼方 ・・・”とテーマソングが流れ出し、そこで、その原因が分りました(英語版にも、歌は入っているのでしょうか?)。 それにしても、過去『メトロポリス』や『フランケンシュタイン』の時代から、人造人間に生命を吹き込むシーンには、何故か電気火花が必要なようです。 (原題)ASTRO BOY 2009/アメリカ=香港映画/角川映画、角川エンタテインメント配給 監督:デビッド・バワーズ 脚本:ティモシー・ハイド・ハリス、デビッド・バワーズ 出演(吹替):上戸彩(ATOM)、役所広司(テンマ博士) 2009/10/10公開 1時間35分 ◇ 今回、初めて映画館で観た予告編。
★ | 『Disney's クリスマス・キャロル』(米) | 2009年11月14日 |
◇ 今回、初めて映画館で入手したチラシ。 ■『きみがぼくを見つけた日』 台風明けの10月27日、上映4日目、11:50からの『きみがぼくを見つけた日』を観に、「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで出掛けました。 上映開始6分前に場内に入ったとき、私は二人目。しかし、開始寸前に3人入場。スクリーン11、座席数:116に最後まで5人。 宣伝では、“本年最高の恋愛映画”とのことでしたが、女性は二人でした。
物語: 凍て付くクリスマスの夜、小さな息子、ヘンリーを後部座席に乗せて母親が運転していた車がスリップ、衝突する。車は大破炎上するが、何故かヘンリーだけは裸で車の外に残され助かる。そこへ、ヘンリーと名乗る若い男が来て、「理解できないかも知れないが、私はきみの将来の姿だ。怖がらなくても良い」と慰める。 シーンが変わって、ここは図書館。司書として働く若い男、ヘンリーのところへ、若い女性が本を探しに来る。クレアと名乗るこの女性に「ヘンリーでしょ、こんなところにいたの」といわれても、全く理解できないヘンリー。その晩、彼女と一夜を過ごすが、ヘンリーは姿を消し、次に裸で現われたのは茂みの中。近くの草原では、6歳のクレアが一人で遊んでいる・・・・・。 ・・・・やがて、クレアと結婚、未来へトラベルしたヘンリーは、動物園で10歳になった自分の娘、アルバと会うが・・・。 オードリー・ニッフェネガーのSF小説『タイムトラベラーズ・ワイフ』の映画化。 ほぼ原作に忠実ですが、最後の部分はカットされています。しかし、この方が映画としては綺麗で余韻があり、成功していると思います。 脚本は、異色の恋愛映画、『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990)のブルース・ジョエル・ルービン。 映画は、上述したようなシーンが、次々と続いて行き、アメリカ上映時にも、どうなっているのか理解できない観客が沢山いたとか。 多分、日本でも“本年最高の恋愛映画”だと思って観に行った女性たちは、戸惑ったことでしょう。大変でも、一度、原作を読んでからの方が、余裕を持って観ていられます。 昔、ダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』(1968)が映画化されたときも、日本ではタイトルを『まごころを君に』(映画の原題は“Charly”)に替え、大恋愛映画と宣伝、若い女性を動員しました。今回も同じ“どぜう”を狙ったようですが、果たして・・・。 製作総指揮の一人に、同じく時間的に“すれ違う恋”を描いた『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2009)で主演した、ブラッド・ピットが入っています。 (原題)The Time Traveler's Wife 2009/アメリカ/ワーナー・ブラザース映画配給 監督:ロベルト・シュベンケ 脚本:ブルース・ジョエル・ルービン 製作総指揮:ブラッド・ピット、リチャード・ブレナー、ミシェル・ワイス、ジャスティス・グリーン 原作:オードリー・ニッフェネガー 出演:レイチェル・マクアダムス、エリック・バナ、アーリス・ハワード、ロン・リビングストン 2009/10/24公開 1時間50分 蛇足:原作、『タイムトラベラーズ・ワイフ 上・下』(ランダムハウス講談社、2004年12月発行、各:1600円)は、その後、『きみがぼくを見つけた日』と改題され、同社から文庫本の上下として発売されています。 尚、この映画の原作『タイムトラベラーズ・ワイフ』のコメントは、「AKIのキネマまんぽ 第111号」の“まくら”に掲載されておりますので、合わせてお読み頂けますれば幸甚です。
◇ 今回、初めて映画館で観た予告編。
★ | 『ホワイトアウト』(米) | 2009年10月31日 |
| 地球上で最も寒く、最も孤立した大陸が、人間に仕掛けた罠。 南極で発見された、奇妙な死体の謎に迫る。南極で起きた“初”の殺人事件。 |
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