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4. 背景放射 Cosmic Microwave Background Radiation

白田英雄

1965年、アメリカのベル研究所では、ペンジアス Arno Allan Penzias (1933- ) とウィルソン Robert Woodrow Wilson (1936- )が電波望遠鏡の精度を上げるために、電波望遠鏡に入ってくる雑音の測定をしていました。雑音をみつけたら、その方角に電波源があるかどうかを特定していくのです。
ところが、ふたりは、どの方角からも漏れてくる一定のレベルの雑音をついに除去することができなかったのです。もしやアンテナにハトのふんでも落ちてるのではないかとまで疑ったのですが、結局雑音は除去できませんでした。これは、宇宙全体から来てる電波だと考えるしかありませんでした。
量子論の黒体輻射のところで説明したのですが、ある温度に対しては電磁波がプランク分布という分布で検知されることがわかっています。ペンジアスとウィルソンの検知した電波も電磁波です。
測定の結果、宇宙は3Kの温度でみたされているという結論になったのです。ここでいうKというのは絶対温度の単位で、0Kというのはこれ以上温度を下げることのできない限界の温度を示しています。温度の目盛のはばは普通のセ氏温度と同じです。
このことから、宇宙の温度は3Kだと言われますが、この温度はどこから来てるのでしょう。
現在では、この温度は次回に説明する予定のビッグバンのなごりではないかと考えられています。大昔にピカっと光った光が、膨張する宇宙によるドップラー効果によって引き延ばされて、波長の長い電磁波になり、ついには3Kの温度にまでなってしまったというのです。
ペンジアスとウィルソンはこの発見の功績で1978年にノーベル賞を受賞しています。ペンジアスとウィルソンの測定による宇宙の背景放射はほぼ一定でしたが、そのことは宇宙がほぼ均一であることを意味しています。その一方で、均一すぎる温度は銀河の集合やボイドなどの、宇宙の星のかたよりを説明することができませんでした。
ところが、1989年にアメリカの NASA が打上げた天文衛星 COBE (Cosmic Background Explorer = コービー) によって、10万分の1のオーダーでゆらぎがあることが判明しました。そのゆらぎによる濃淡によって、星の多いところと少ないところができてきたというわけです。
現在では COBE のあとを継いだ WMAP (Wilkinson Microwave Anisotropy Probe = ダブリュー・マップ)によってさらに精密な観測ができるようになり、多くのことがわかるようになってきているのでした。

提供:NASA/WMAP Science Team

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