量子力学の基本方程式であるシュレーディンガー方程式ですが、厳密に解くことができるのは次の3つしかなかったりします。
- 自由粒子
- 調和振動子
- 水素原子
シュレーディンガー方程式を作るときに、ハミルトニアンというのがでてきて、そこにポテンシャルが出てきたのを憶えてるでしょうか?
この解のパターンはそのポテンシャルのパターンによって分類できます。
- ポテンシャルがないとき
- 1次元ばねのポテンシャルのとき
- 中心力のポテンシャルのとき
自由粒子というのは文字通りなにものにも拘束されていない自由にふるまう粒子のときです。ただ、そのままでは解けないので、箱の中に閉じ込められていると考えます。粒子として考えるときは粒子が箱の壁ではねかえってるというイメージで、波としては弦のような定常波になってる状態だと思ってもらえばいいと思います。この場合波動関数はサインカーブを描くことになります。ちなみに、これをエネルギーについて解くとエネルギーがとびとびの値を持つことが出てきたります。
さて、ここでおもしろいことがあります。箱の中にいるということは以下の図のように無限大のエネルギーの壁にかこまれていると考えることができますが、もしエネルギーが有限で薄い壁があると考えてシュレーディンガー方程式を解くと、なんとその壁をすりぬけて壁の外側にも粒子が漏れ出してくることがわかります。このことはトンネル効果と呼ばれていて、量子は一定確率で壁を通りぬけることができるというものです。この効果はトンネルダイオードなどの電子部品で実際に用いられていたりします。 2番目の調和振動子ですが、これはちょっと説明を要しますね。ばねのポテンシャルのときの解なのですが、ばねのポテンシャルというのは、中心からの距離の二乗に比例して大きくなるようになってるものです。調和振動子みたいなポテンシャルの量子というのは想像するのが困難ではありますが、実はこれはそのうち説明する予定の場の量子論でよく使われるポテンシャルだったりします。実際に何かが振動しているというわけではないのですが、ポテンシャルの形が古典力学の単振り子とおなじことからこの名前がついています。ここでおもしろいことなのですが、調和振動子について調べてみるとエネルギーが一番低いときの値が0にならないのです。これ以上下げることができないというエネルギーの限界が存在するのです。
エネルギーはとびとびの値を取りますが、そのそれぞれのエネルギーの間隔は一定になります。これは、そこに量子が複数個存在することを暗示してます。ハミルトニアンを加工すると生成演算子と消滅演算子というのを作ることができるのですが、エネルギーがあるレベルのとき、波動関数に生成演算子を作用させてやると粒子が1個あらわれて、エネルギーが1個分上がります。逆に消滅演算子を作用させると、粒子が1個減って、エネルギーが1個分下がります。消滅演算子をつぎからつぎへと作用させていくと最後には真空になりますが、そのときのエネルギーは0にはなりません。
さて、水素原子の場合ですが、式の形は一番複雑になってきます。この解から、水素原子核のまわりをまわる電子が、実は雲状に存在していて、しかも、いくつかの軌道を取り得ることがわかります。 ここにきてようやっと、ボーアの原子説であった困難が解決されます。ボーアの原子説では電子はある軌道をぐるぐるまわってるようなイメージでしたが、そうではなく、シュレーディンガー方程式で解かれた、確率的な『状態』で原子核のまわりに存在するのです。ぐるぐるまわってるわけではないので、電磁波の放出は起きません。ですから原子は安定して存在できるわけです。
次回はこの水素原子の場合についてもうちょっと見てみましょう。
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