力がはたらく時に交換される粒子の質量は0でないとくりこみができないことがわかっています。
電気力と弱い力の統一理論において、光子とW粒子が対となります。光子は質量0でくりこみできますが、弱い力で出てくるW粒子は質量を持っているのでくりこみができないのです。
これはゲージ対称性という概念を導入することで解決できます。ゲージというのは光の偏光の向きのようなものなのですが、あるゲージを選択すると、計算で害をなす項が消えることがあります。ゲージ対称性がなりたつという意味は、あるゲージでこのような消える項があるとき、その項は別のゲージを選んだときも考えなくてよいということなのです。
このゲージ対称性を使ったとき、光子とW粒子の質量の差はなくなり、理論はくりこみ可能となるのでした。
ではなぜ自然はゲージ対称でないのでしょう。この問いに対しては現在の自然ではゲージ対称性が自発的に破れているためだと説明しています。自発的破れとは大体次のような感じのことです。丸いテーブルに人が席についていて、その両脇にコップが置かれてるとします。このとき人に対してコップは対称的なので、対称性は保たれています。ところが、だれかひとりが片方のコップを取ると、とたんにどちらのコップがどの人に属するかが決まってしまうため、対称性が破れてしまうのです。自然でもこのようなことが起きてるということです。 さて、ゲージ対称性が解決することで、強い力を説明することができるようになります。
強い力を発生する素粒子はハドロンと呼ばれています。核子(陽子と中性子)やπ中間子などです。
これらは現在はクオークという粒子が組み合わさってできていると説明されています。核子とπ中間子を作っているクオークの種類には
u (アップ)と d (ダウン)の2種類があって、陽子は uud 、π中間子は u反d という組合せになっていることが知られています。 このクオークを結びつけている粒子がグルーオンと呼ばれる粒子で、質量を持っているため、強い力はそのままではくりこみができません。核力ではπ中間子を交換していると以前説明しましたが、π中間子はグルーオンで結びつけられたuと反dのクオーク対にすぎません。結局、強い力の源はグルーオンだということになります。
クオークにおけるゲージ対称性とはどんなものなのでしょうか。実はクオークは色と呼ばれる量(チャージ)を持っていて、ハドロンはトータルとしてその色が打ち消されるように組み合わさっているのです。(色のことを19回では色価と呼びましたが同じものです。)
色の選択には任意性があります。トータルで色がなければいいので、それぞれのクオークにはどんな色が割り振られていてもいいのです。結果としてハドロンが無色であるように計算するとクオークの組み合わせが無制限になることはなくなります。
クオークの色は光の3原色になぞらえて、赤青緑と呼ばれています。
クオークと同時にグルーオンも色を持っています。このクオークとグルーオンの色の種類による対称性を考えるのがQCDと呼ばれる理論で、これによって理論はくりこみ可能となるのです。
グルーオンはクオーク同士が近付くと力が弱くなって、離れると強くなるという性質があります。このため、核子などの内部を調べようとしてエネルギーをあたえても、グルーオンがのびてなかなかその内部が見られません。糊(グルー)のようにのびるのでグルーオンという名前がついたのです。グルーオンがのびきってちぎれたときには、そのちぎれた先にクオークができてきて、結局中間子がちぎれて飛びでた形となります。このようにしてクオークは閉じ込められているため、通常は観測にかかることがないのです。 さて、電気力に弱い力、強い力とそれぞれの力を媒介する粒子はみなゲージ対称性を持っていました。そのため、これらの粒子はゲージ粒子、もしくはゲージ・ボソンとも呼ばれます。
質量を持つゲージ粒子によって媒介される力は有限の距離しか伝わらないことが知られています。質量0の光子による電気力は無限遠まで到達しますが、質量が0でないW粒子による弱い力やグルーオンによる強い力は有限の距離しか到達できないのです。
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