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Author Interview

インタビュアー:[雀部]&[無頼庵]&[浅野]

Project Blue1
『ProjectBLUE 地球SOS 1』
> 東野司著/原作=小松崎茂/カバー絵=松竹徳幸・松本文夫
> ISBN 4-15-030860-8
> ハヤカワ文庫JA
> 640円
> 2006.9.15発行
粗筋:
 西暦2000年、メトロポリタン市中央駅では、G反応機関を搭載した弾丸列車イナズマ号の完成レセプションが執り行われようとしていた。しかし、そのイナズマ号は突然の虹色の閃光と共に空中に浮かび、大勢の人々の前から忽然と消え失せてしまった。

『ProjectBLUE 地球SOS 2』
> 東野司著/原作=小松崎茂/カバー絵=松竹徳幸・松本文夫
> ISBN 4-15-030864-0
> ハヤカワ文庫JA
> 640円
> 2006.10.15発行
粗筋:
 侵略者バグア遊星人の操る巨大円盤によって世界各都市は完膚無きまでに叩きのめされてしまった。対する人類も地球防衛組織「迷宮機関」を結成し、海底都市に最高頭脳を集結し、侵略者たちに敢然と立ち向かっていく……
Project Blue2
『日本漫画代表作選集 6』
日本漫画代表作選集6
> 手塚治虫監修/日本漫画家協会編 松本零士責任編集 SF漫画
> 実業之日本社
> 1300円
> 1980/12/25発行
目次 地球SOS扉絵
目次(左):
松本零士「ヤマビコ13号」、藤子不二雄「カンビュセスの籤」、石森章太郎「窓」
吾妻ひでお「めざめの時」「すーぱーがーる」、萩尾望都「左ききのイザン」
小松崎茂「地球SOS」(1948年10月号「冒険活劇文庫」)
永井豪「都市M1」、手塚治虫「安達が原」

「地球SOS」の扉絵(右):
「明々社超特作科学冒険」「第29回」「作画・小松崎茂」
インタビュー中にも言及がある、逓信総合博物館で開かれた企画展『ぼくらの小松崎茂展』では、『地球SOS』の復刻版を売っていたそうです。5cm程の厚さで、4200円だったとか。

雀部 >  今月の著者インタビューは、10月に『ProjectBLUE 地球SOS』のノベライズ(全二巻)を出された東野司さんです。東野さんお久しぶりです、『真夏のホーリーナイト』の著者インタビュー以来ですね。今回もよろしくお願いします。
東野 >  よろしくお願いいたします。どうぞ、お手柔らかに……。
雀部 >  え〜、《ページ11》シリーズ、『展翅蝶−昭和80年、夏−』『展翅 撩乱―昭和76年、春』が2002年ですから、この間どうされていたのでしょうか。ファンの方はきっとやきもきされているに違いないと(笑)
東野 >  え、そんなに経ってるの?
雀部 >  毎年、今年こそはと(笑)
東野 >  あ、ほんとだ。なんかオリンピック作家、いや、ワールドカップ作家になっているなあ(笑)。なんて、笑ってる場合じゃないか。
 えー、どうもすみませんです。えっと、ライティングで大きなプロジェクトが動いていてばたばたしていたのが、時間的な原因ですが、それは言い訳です。
 あるプロットがあるのですが、それがちょっと調べものが必要となるもので、それの資料やらなにやら調べていたら、そんなに経っていたということで……これもいいわけですね。すみません。
雀部 >  おお、なんか秘密裏に進行しているプロジェクトにご参加されているんですね。その全貌が明らかになるのは、いつなのでしょう?
東野 >  えっと、ライティングのプロジェクトのことでしたら、すでに全貌は明らかになっております(笑)。テクニカルライティング業界の教材みたいなものの執筆で、みなさんが眼にするようなものではないのですが……。
雀部 >  なんと、教材を書かれる立場になられましたか。
 もうひとつのプロットのほうは、何でしょう。ひょっとして次回作とか?
東野 >  ええ、そうです。ほんとは「地球SOS」の前に出るはずだったのですが、いろいろあって遅くなっております。すみませんです。調べたものの一部を使っての作品です。
雀部 >  それはファンとしては待ち遠しいですね。
 さて、今回の本《ProjectBLUE 地球SOS》は、我々の年代には懐かしい小松崎先生の原作と言うことなのですが、東野さんから見た小松崎先生の魅力とはどういう所なのでしょうか?
東野 >  超科学力ですね。私がリアルタイムで触れた小松崎先生の世界は、プラモデルのボックスアートや、少年雑誌の図解だったのですが、とくに、図解に描かれた未来の科学世界に惹かれましたね。
 現在のように、一般の人々の前ではブラックボックス化してしまった科学ではなく、目に見える、わかりやすい形での、超科学です。鉄と原子力が作り上げる、夢のような超科学。それは、努力すれば手が届くような科学の世界です。それが目に見える形で示されているところ、その指針を示してくれるようなところが魅力ですね。
雀部 >  なるほど。私も子供の頃わくわくさせて頂きました。その一端は、小松崎先生のオフィシャルサイトでうかがえます。
 東野先生のご著書に、プレイステーションソフト『ムーンライトシンドローム』のシナリオを脚色したノベライゼーションがありましたが、今回はアニメのノベライズですね。やはりゲームとアニメでは、ノベライズするにしても違いがあるのでしょうか?
東野 >  ゲームとかアニメとかではノベライズに基本的なちがいはないと思います。むしろ、原作側がノベライズに何を要求するかで違うと思いますね。
雀部 >  今回要求されたのは何だったのでしょう。差し支えなければお教え下さい。
東野 >  というか、今考えてみると、原作側というより、自分で自分に課した縛りのようなものかなあ。
 『ムーンライトシンドローム』は、選択肢を選んで進めるアドベンチャーゲームなので、当然プレイヤーによっていろいろな話ができるわけです。それをすべて網羅するわけにもいかないので、原作側がけっこう自由にさせてくれたわけです。人物関係も変更してもOKでした。だから、ゲームとはまったく違う物語になっています。
 『地球SOS』は、アニメのノベライズなので、もうストーリーラインは決まっているわけで、できるだけそれに沿ったものをと考えていました。しかし、アニメ製作側から、「2巻目が出る時期はまだアニメが放映中である。したがって、できたら、ネタバレにならないように、小説はアニメとは違った結末にしてもらいたい」といわれまして……。これは強制されたものではなく、『できたら』ということだったのですが、「できたら」といわれて、「できません」とはいえませんよね(笑)。
 それで、自分に縛りをかけることにしたのです。人間関係、エピソードの種類、エピソードの順序、なんかもアニメとまったく同じにして、でも、結末はまったく異なる話を作ることにしました。それが、小説版「地球SOS」です。
 ……あ、でも、こうやって見ると、自分の中でゲームとアニメでノベライズの違いを考えていますね。「基本的にちがいはない」は撤回ですね(笑)。
雀部 >  ありゃ(笑)
 ちなみに「バンダイチャンネル公式サイト」にて、アニメが見られます。「第1話 怪円盤襲来! スカイナイト発進せよ! 前編」は無料試聴可能。
 『日本漫画代表作選集第6巻』(日本漫画協会編 監修 手塚治虫 SF漫画 責任編集 松本零士)に「小松崎茂 地球SOS 23年10月号 『冒険活劇文庫』」が掲載されてますね。読んでみると、ロッタ嬢も出てきてるし、クレイトン大尉も出てる。そしてバグア人共も。
 元の『地球SOS』はともかく、この《ProjectBLUE 地球SOS》で、ロッタ嬢のほうを主役にしなかったのはなぜでしょう? 最近の流行りから行くと少女が主人公のほうが多いような(笑)
東野 >  たしかに最近は少女が主人公というケースが多いですねえ。私もそうですし……。
 まあ、今回の場合は、人間関係やキャラクターの立ち位置はアニメ版を踏襲しようということを決めていたこともありますから、主人公は少年ということもあります。しかし、大きな点は、この話の骨格は信用できる大人と少年との物語であるということですね。『少女』は、社会規範などのしがらみから解き放たれた存在であり、世界から飛翔するような話を描くときには有効な主役ですが、今回は世界と協同して、その一員として世界を引っ張っていく話ですから、少年が主役という形になったのだと思いますね。
雀部 >  そうなんだ>>“『少女』は、社会規範などのしがらみから解き放たれた存在”
 《ProjectBLUE 地球SOS》でも、主人公のライバル、可愛い少女、頼りになるペット、おまけに極悪非道の異星人と冒険活劇の陣容は揃っていますが、東野さんが一番重要視されるキャラは、何でしょう。
東野 >  一般的な話ですか? それとも、今回の話でしょうか? 今回に限れば、クレイトン大尉のようなキャラですね。過去をもち、主人公に寄り添い、その背を押してやる。これは主人公を行動しやすくさせますし、特に今回では物語に厚みを与えます。このようなキャラの扱いをきちんとすると物語が落ち着き、推進しますね。
雀部 >  うんうん。特に今回は子供が主役なので、協力する大人の存在が不可欠ですよね。
 《ProjectBLUE 地球SOS》のラスト近くで、雪が効果的(?)に使われてますよね。東野作品には、ラストで雪が出てくるシーンが多いように思うのですが、なにか思い入れでも?
東野 >  思い入れという方向では、雪は浄化という意味で使っているような気がしますね。
 ただ、今回は、アニメ版に重要な意味を持って出てきますので、それを使うという感じで、あまり思い入れということでは使わなかったように思います。むしろ、いかに雪をアニメ版と違った意味で使うかということに気を使った覚えがありますね。
雀部 >  アニメ版の“雪”は、また違うエピソードなんですね。放映が楽しみです。
 さて、今月はもう一人。東野司さんの熱烈なファンである無頼庵さんをお招きしました。無頼庵さん、よろしくお願いします。
無頼庵 >  東野さんを師匠とあがめる無頼庵です。私をネットワークの世界にいざない、色々な知識を与えてくれた方が東野さんなんです。
 それもあって、私の文体は東野さんに影響されてます。(笑)。よろしくお願いします。 
東野 >  あ、どうも。こんなところでお会いするとなんか変な感じですが。よろしくお願いします。
無頼庵 >  《ProjectBLUE 地球SOS》は上下巻を一気に読み終わりました。閉じた瞬間の一言は「あーおもしろかった!」です(笑)。
 次々と起こる事件、目の離せない展開、そして新たな謎。まさしくエンターテイメントだと思いました。
 この作品に「一気」感を与えているスピード、テンポのフィーリングは、アニメを意識されてのことでしょうか。
東野 >  そうですね。アニメが、基本的にはアクション物ですから、できるだけそれに合わせるように「ぶっとばす感」を出すようにしました。
無頼庵 >  作品の中に鉄腕アトムで育った私たちの世代には懐かしい真空管などが登場して、なんともいえない懐かしい未来の姿が浮かびます。このような表現を変えなかった意図をお教えください。
東野 >  小松崎さんの世界が根底にありますから、ここが「『レトロフューチャー』の世界である」ことはしっかり押さえようと思っていました。ただ、最初はかなりカタカナが多かったのです。道具立てはレトロでも表現は今風(笑)、になっていました。
 でも、書き進んだときに、アニメの第1話と第2話の試写会を見る機会があったんです。そこで、監督が「画面の色調にレトロフューチャーを意識した」と発言されて、ううむとうなったわけです。小説版も、今のままでは、古びた道具立ての中でただの今風アクションになってしまうなあと。レトロフューチャーを出すために、文章ではどうしたらいいのかと……。それで、カタカナを極力なくすことにしました。
 それまで書いていたものを、全部点検して、できるだけ日本語に、それもちょっと古びていて、小さかったときわくわくした言葉に書き直しました。意図がうまく伝わったらよかったのですが……。
無頼庵 >  原作が当時の少年達に伝えたかったメッセージのうち、特に現代の少年達に伝えたかったメッセージはなんでしょうか。
東野 >  ここは、アニメの原作というより小松崎さんの原作からになりますね。
 あとがきにも書きましたが、小松崎さんの原作では14歳の子供が大人と対等な、いやそれ以上の活躍をします。そこが一番伝えたいメッセージですね。
 自立すること。親に頼らず、自分で考え、責任を取って行動すること。そうすれば、信頼できる大人は必ず現れる。そして、子供であっても世界を変えることができる。
 まあ、大きく言えばそういうことでしょうか。
雀部 >  なるほど。14歳と言えばSFの黄金時代(笑)
 少年を主人公とするにあたってというか、少年少女を読者対象とした本を書かれるに当たって、特別注意されたこととかは?
東野 >  大人向けより、メッセージ色を強めに出すということですね。まあ、あまり意識しすぎて強く出しすぎても、逆効果になるので、そのあたりはバランスを心がけていますけれど……。
雀部 >  メッセージ色は、確かに感じました。主人公の精神的な成長も。
 この《ProjectBLUE 地球SOS》とか《ミルキ〜ピア》シリーズ、《ページ11》シリーズに共通しているというと、友情、信頼、あきらめない気持ち。少年漫画の王道ですよね。「少年ジャンプ」あたりだとアニメ化されてる「ナルト」とか「ONE PIECE」。ここらあたりは、今も昔も変わらないんでしょうか?
東野 >  今こそ大事ですね。ぼんぼん子供たちが死んでいる今では。まあ「少年ジャンプ」を意識しているわけではないのですが、あのようにストレートなものもわかりやすくていいですけれど、心がけているのは、かつての少年少女文学全集にあるような世界ですね。「清く正しく美しい世界」ですね。
雀部 >  子供時代に読む漫画やアニメは、その子の人生観に多大な影響を及ぼしますからねぇ。
 東野さんが子供時代に読んで(視聴して)大きな影響を受けた小説・マンガ・アニメは、おありでしょうか。
東野 >  うーん。そうですねえ。タイトルをあげていくときりがないのだけれど……。わたしの子供時代というと、文学全集花盛りのころでしたから、さきほど言ったように、今振り返ると、それになりますねえ。小学館の『少年少女世界の文学全集』を中心として、名前は忘れましたが、講談社の全集もの。アンデルセン全集も一部を持っていたし、知り合いからもらった偉人伝記集なんかも。それに、ホームズものや、少年向けのSFシリーズ(『赤い惑星の少年』や『地球最後の日』)ものなどなど。そのへんを浴びるように読んだことが、結局今の自分に影響を与えているのかもしれませんねえ。
雀部 >  私も全集持ってました。まあ、こういう名作全集は、頼めば親が買ってくれる(笑)
 無頼庵さんにお聞きしますが、東野さんの作品の魅力はどういったところにあるでしょうか?
無頼庵 >  私は友人に「踊るコンピュータ」と「電脳セッション」を紹介されたのが東野作品との出会いでした。
 そのとき想像性豊かでユーモアたっぷりでありながらも、技術的な部分の正確さに裏打ちされた確かさがあるところに惹かれましたね。
雀部 >  コンピュータ関係の題名のついた一連の短篇群は、私の知り合いのシスアドの人たちには大受けでした。電脳と情感という相反するように思える要素を取り込んで、笑わせたりほろりとさせたり。
無頼庵 >  そのあと、ミルキーピアやページ11の長編系を読み進むようになってからは人物設定の面白さやストーリーに加えて、要所要所に感じられる切り口の鋭さが気に入っています。
雀部 >  では、《ミルキ〜ピア》シリーズでは、どの作品が一番好きでしょうか。
無頼庵 >  なんという酷な質問(笑)。あの世界にはまり込むと全編通して読むため、どれが一番かという気持ちにはなりにくいです。
 しいて挙げろというのなら…つかのまの間奏曲(インターミッション)です。理由は片山秀人の転職先であるシーサイドキララの場所が私の元地元近辺だから(笑)。この作品の風景描写は地元民にとってリアリティが感じられるんですよ。
雀部 >  ということは、無頼庵さんはあそこらあたりのご出身なんだ。
 《ミルキ〜ピア》以外で特にご贔屓の作品は何でしょうか。
無頼庵 >  よろず電脳調査局ページ11の『鋼鉄の天使』です。理由は不覚にもラストで泣いちゃったからです(笑)
雀部 >  東野司さんには、これからどういった作品を書いて欲しいですか?
無頼庵 >  ミルキーピアやページ11のようなシリーズもリクエストしたいですけれど、「踊るコンピュータ」のような視点の鋭さとユーモアたっぷりの作品を久しぶりに読みたいのでぜひお願いします。
雀部 >  私も私も。またああいった短篇が読みたいです。『赤い涙』系もぜひに。
東野 >  そうですねえ。「踊る〜」のような短編は、どこか掲載できる媒体があれば、やりたいですね。『赤い涙』系は考えている途中です。ネタはあるのですが……。がんばりますです。はい。
雀部 >  もうお一方、戦後間もない頃から小松崎先生の絵を見て影響された経験のある浅野さんです。
 浅野さんは、いつ頃から小松崎先生の画をご覧になっていたんでしょうか。
浅野 >  戦中、小学生だった私は『機械化』などの雑誌に掲載されていた小松崎茂のメタリックな新兵器に目を見張ったものです(戦後は、東宝系SF映画に登場する彼の宇宙船や兵器に夢中!)。
雀部 >  私は、少年漫画の口絵とかに登場する兵器とかメカに夢中になったくちですね。
 丁度読まれたのが〈ぼくらの小松崎茂展〉(10/7〜12/3)が開かれていた時だったとお聞きしましたが。
浅野 >  たまたま逓信総合博物館で開催されていた特別展示『ぼくらの小松崎茂展』を観て帰ってきたところへタイミングよく『ProjectBLUE 地球SOS東野 司著 原作=小松崎茂』の上・下2冊が手に入りました。
 早速、『ProjectBLUE 地球SOS』読み始めましたが、私の頭の中では観てきたばかりの彼のメタリックな総天然色の絵が物語と並行して流れていました。
 そして、これまたタイミングよく、たまたま納戸を整理していたところ、『日本漫画代表作選集第6巻 日本漫画協会編 監修手塚治虫 SF漫画 責任編集 松本零士』の本を発見。パラパラとめくってみましたらば、わずか12ページですが『小松崎茂 地球SOS 23年10月号 「冒険活劇文庫」』が載っていました。絵はメタリックなカラーとはほど遠い白黒、終戦直後で紙も印刷技術も悪かった時代のSF絵物語でした。正に隔世の感です。この『地球SOS』の掲載が始まったのが今から60年ほど前、終戦間もない昭和23年(1948年)。
 『ProjectBLUE 地球SOS』の舞台は数年前、既に通り過ぎた2000年。
 登場人物、シチュエーションなどはほぼ原作に従い、その後に登場した新技術や話題がふんだんに盛り込まれ、物語はぐんぐんと進行していきます。この中に出てくるインビンシブル号は宇宙戦艦ヤマトを彷彿させますし、フィラデルフィア・エクスペリメント(映画にもなりました)やUFOにまつわる話なども登場、終わりの方ではハインラインの『人形つかい』を連想する場面もあり、最新技術(?)の核磁気共鳴検査(= MRI)まで登場します。
 もともとはジュブナイルものであると思いますが、懐古趣味を別にしても、大人にも面白く、一気に読んでしまいました。
 別に、このアニメのDVDも発売されている由、是非、観てみたいと思っております。
雀部 >  《ProjectBLUE プロジェクトブルー 地球SOS》のオフィシャルサイトのニュースを見ると、テレビ放映が決まったようですね。
東野 >  あ、ほんとうだ。地上波で見られると、ぐっと身近になりますね。ぜひ、小説版との違いを味わってもらいたいなあ。
 浅野さん、ありがとうございます。
 今回の小説版はアニメ版とともに、できるだけ小松崎さんの重厚な超技術や超兵器のイメージを盛り込むように努めました。そして、今はともすれば疑似科学的に扱われている、UFO(円盤)などの現象や特殊技術の中にある奇妙な高揚感、わくわく感を取り入れようと思いました。伝わっていればうれしいなあ。
浅野 >  あの頃、UFOは疑似科学ではなく、科学として推進エンジンの構造予想図などが雑誌に載っていたりして、楽しい時代でした。
 今回、このご本を読ませて頂き、お陰様で大分若返りました。
 有り難うございます。
雀部 >  あ〜、全然ご著作と関係ないのですが、最近、東野司さんが日本SF作家クラブの17代目事務局長になられたことを知りました(汗)
 事務局長職って、何をなさっているのでしょうか?
東野 >  それはもう独裁者ですよ。自分の思いのままに、好き放題にして、酒池肉林の左団扇……。
 嘘です(笑)。
 真実は、ただただ雑用です。もうそれに尽きます。会長の意思の元、会長をサポートして、運営のもろもろを行います。
 日常的には、会費や住所録、サイトや会員用メーリングリストの管理を行います。イベントを企画したときには、会場探しから始まって、内容を詰め、お知らせを出し、出席者を把握し、受付をして、司会をして、清算をする。SF大賞などの賞の選考会では、それに審査員の日程調節から、候補作の選び出しの事務が加わりますね。あと年に何回かクラブの発行物の執筆、編集もありますね。
 要は、会社の総務とか、自治会の事務職と同じようなものです。
雀部 >  ひゃ〜っ、大変ですね。雑用係というのはよく分かります。私も似たようなことしてますから(汗)
 ここでついでに聞いちゃいますけど、東野さんの電脳シリーズは、《ミルキ〜ピア》→《よろず電脳調査局ページ11》と受け継がれてきたわけですが、《ページ11》の続編の予定はないのでしょうか?
東野 >  今のところないです。ページ11は最初から3巻の予定で始めたのですが、出すうちに、もうちょっと続けられるようになったので、4巻目のプロットも作ったのです。でも、そこでもろもろの事情でストップ。結局今に至っています。その4巻目プロットで続けることもできるのですが、いまさらページ11は……といった感じもあり、やるとしても違うものになるでしょうね。
雀部 >  今回はお忙しいところありがとうございました。
 最後に現在執筆中の作品、また近刊予定がありましたら教えて下さい。
 以前、今年中に、二作品出る予定だと聞いたような気がしますが……
東野 >  あ、先に言いました作品が今年……にはならないなあ。来年には出るかと思いますが、時期はまだわかりません。すみませんです。
雀部 >  来年ですか、楽しみに待ってます。四年待ったことを思えば(笑)


[東野司]
1957年愛媛県生。テクニカルライターを経て、1986年「赤い涙」でSFマガジンデビュー。コンピュータや仮想現実世界を題材にしたSFを発表。シリアスな作品からちょっとホロッと来るウェットな作品まで、守備範囲は幅広い。スラップスティックなギャグをかましているときでも、その根底には温かい視点があって、どこかほのぼのとしている作風が一番の持ち味かも(《ミルキ〜ピア》シリーズがその代表)。他の著書として『恋人はインタフェース』『踊るコンピュータ』、《ミルキ〜ピア》シリーズの後継作《よろず電脳調査局ページ11》等がある。
[雀部]
「東野司オンライン・ファンクラブ」ホームページ管理人です。
http://www.sasabe.com/SF/THONO/ どうぞよろしく〜。
[無頼庵]
家族に加え椎間板ヘルニアとも仲良く暮らす無頼庵であります。だいぶ痛みが引いたからと再びジムで走っているアフォな自称ジジイ。都内某所の電子絵描き&IT屋さんで番頭をしております。
[浅野]
小学校入学以前(戦前)、浅草で母親と『キングコング』、『透明人間』の映画を観たのが切っ掛けで、その後、SF映画にはまってしまいました。現在でも、年間、SFものを中心に三十数本の映画を映画館で観ております。
また、私の叔父が東京三鷹の天文台に勤めておりましたので、子供の時から天文の話を聞かされ、そんなことも、私をSF好きにさせたのかも知れません。

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