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Author Interview

インタビュアー:[雀部]

『落下する緑―永見緋太郎の事件簿』
> 田中啓文著/森山由海カバーデザイン
> ISBN-13: 978-4488475017
> 創元推理文庫
> 740円
> 2008.7.11発行
 唐島英治クインテットのメンバー、天才肌のテナーサックス奏者永見緋太郎は、音楽以外の物事にはあまり興味を持たないが、ひとたび謎に遭遇すると、軽やかに解決してみせる。逆さまに展示された絵画の謎、師から弟子へ連綿と受け継がれたクラリネットの秘密、いけ好かない音楽評論家の陥った罠など、鮮やかに解決していく。

『辛い飴―永見緋太郎の事件簿』
> 田中啓文著/森山由海・森川結紀乃カバーイラスト・デザイン
> ISBN-13: 978-4488025304
> 東京創元社
> 1900円
> 2008.8.25発行
 唐島英治クインテットの面々が遭遇した不思議な出来事や謎。
「渋い夢」では、“密室”からグランドピアノが忽然と消失し、表題作の「辛い飴」では、40年前に録音されたジャズのレコードがヒットする!

『ハナシがちがう! 笑酔亭梅寿謎解噺』
> 田中啓文著/たなかしえイラスト/月亭八天監修
> ISBN-13: 978-4087460742
> 集英社文庫
> 533円
> 2006.8.25発行
 金髪トサカ頭の不良少年・星祭竜二は、かつて噺家を目指していたことのある体育会系の元担任教師に、上方落語の大看板・笑酔亭梅寿のもとに無理やり弟子入りさせられた。大酒呑みの師匠にどつかれ、けなされて、逃げ出すことばかりを考えていたが、古典落語も面白いかもと思ったのが運の尽き(笑)。

『ハナシにならん! 笑酔亭梅寿謎解噺 2』
> 田中啓文著/たなかしえイラスト/月亭八天監修
> ISBN-13: 978-4087462982
> 集英社文庫
> 619円
> 2008.5.25発行
 飲んだくれの落語家・笑酔亭梅寿の内弟子となって一年。梅駆の名前はもらったものの、相も変わらずどつかれけなされの修業の日々を送っている。そんな中、師匠の梅寿のいいつけで、売れっ子芸人の武者河原ハテナの付き人をすることになったが。
 東西落語対決、テレビ出演からラジオ番組、果ては、師匠が所属事務所の松茸芸能と大ゲンカ、独立する羽目に……

『ハナシがはずむ! 笑酔亭梅寿謎解噺 3』
> 田中啓文著/たなかしえイラスト/月亭八天監修
> ISBN-13: 978-4087465389
> 集英社文庫
> 667円
> 2010.2.25発行
 万年金欠状態の梅寿の個人事務所“プラムスター”に時代劇オーディションの話が舞い込んだ。一門をあげての参加の末に、合格したのはなんと金髪トサカ頭の竜二。主演女優の吉原あかりの父親は、なんと落語家だった。しかし、撮影中にその吉原あかりが……。
 曲者ばかりの芸人の巣である地方のボロ劇場に送り込まれた竜二が見たモノは……
 さらには東京vs大阪の襲名を賭けた世紀の対決が勃発する(笑)。

『ハナシがうごく! 笑酔亭梅寿謎解噺 4』
> 田中啓文著/たなかしえイラスト/月亭八天監修
> ISBN-13: 978-4087467567
> 集英社文庫
> 762円
> 2011.10.25発行
 落語ブームのはずなのに、なぜか笑酔亭梅寿一門だけは食うや食わずの極貧生活、バイトに明け暮れる竜二も、気がつけば入門三年目、大きな節目を迎えていた。
 事務所に内緒の闇営業(怪しい船でのバイト)に励んだり、落語CDリリースのハナシが転がり込んだり、漫才師の登竜門「M壱(エムワン)」に挑戦したり、なんと師匠の梅寿はついに人間国宝に……?
 元同門の梅寿と不覚。今は折り合いが悪いが、心の底ではお互いを評価している。今は人気のない不覚師匠が、化け猫騒動が契機となり、芸が化ける「仔猫」が好きだなぁ。

『ハナシはつきぬ! 笑酔亭梅寿謎解噺 5』
> 田中啓文著/成瀬國晴装画/月亭八天監修
> ISBN-13: 978-4087714265
> 集英社
> 1900円
> 2011.10.30発行
 内弟子の年季が明けて(宿と飯が無くなって)師匠・梅寿から独立した竜二。テレビ番組で口にした一発ギャグで一躍売れっ子タレントに。しかしこのギャグは元々は兄弟子梅雨のものだった。事務所からは落語を禁じられ、竜二のストレスはマックスに(笑)

『チュウは忠臣蔵のチュウ』
> 田中啓文著/とり・みき装画
> ISBN-13: 978-4167801304
> 文春文庫
> 762円
> 2011.4.10発行
赤穂浪士の討ち入りは本当に義挙だったのか?じつは謎が多い「忠臣蔵」。そのエピソードの大半が講談「赤穂義士伝」からきていて、史実といりまじっていることは意外と知られていない。本当は討ち入り事件の背後に、幕府を揺るがす陰謀が存在したかもしれない…。斬新な視点で「忠臣蔵」を読み替えたユーモア時代小説。

『罪火大戦ジャン・ゴーレ 1』
> 田中啓文著/増田幹生カバーイラスト
> ISBN-13: 978-4152092076
> ハヤカワSFシリーズ Jコレクション
> 2000円
> 2011.4.25発行
 西暦2192年、世界中で600億の死者の復活が始まった。この人口が一挙に増えるという未曾有の事態に、従来の国家は崩壊した。人々は“魂摘出装置”によって、他者の肉体に“寄宿”する運命を余儀なくされた。2217年、宇宙軍に入隊した桃屋ピンクは、一休さんら5人で肉体を共有するクインテットだったが、対エゾゲバロ・ログロ人の戦況悪化に伴い、イエス・キリスト、ジャンヌ・ダルクらとともに宇宙甲殻類ジャン・ゴーレによって惑星“ジュエル”へと向かう。しかし“エデンの園”と噂される星でピンクらが目にしたのは、神のあまりにも残酷な意志だった…。前回のインタビューで執筆中とうかがった、ワイドスクリーン・バロックSFは、これだったのか!!

『ハナシをノベル!! 花見の巻』
> 田中啓文他著/坂野公一装幀
> ISBN-13: 978-4062143967
> 講談社
> 1905円
> 2007.11.12発行
収録作品:田中啓文「真説・七度狐」「時たまご」、北野勇作「寄席の怪談」、田中哲弥「病の果て」、我孫子武丸「貧乏花見殺人事件」、浅暮三文「動物記」、牧野修「百物語」、飯野文彦「戯作者の恋」、森奈津子「正直課長」
特別付録:月亭八天師匠による実演をCD化 「真説・七度狐」「寄席の怪談」

雀部> 先月号から引き続き、田中啓文先生・牧野修先生よろしくお願いします。
 「ガラスの地球を救え!」と「嘔吐した宇宙飛行士」の大森望さんの序文に“『罪火大戦ジャン・ゴーレ 1』がまだ出ない”と書かれてますが、やっと今春刊行されました。おめでとうございます、後書きにも書かれてますが、1ということは、当然2巻目も出るはずですよね。
田中> 話も終わってないし、設定の謎解きもまったくしていないので、もちろん続きを書く気はまんまんです。書かせてくれさえすればですが。
雀部> もうSFマガジンでの連載は無理なのかなぁ?←教えて偉い人(笑)
 以前から聞きたいと思っていたのですが、最初にSFマガジンの「SF BOOK SCOPE」に書評が載ったときから、もの凄い書かれようだったので、驚いてしまいました。それ以降も、やはり同じ調子の書評が多いですよね。
 ということで、私の中では田中先生は、SF界きってのいじられキャラと認定されているんですが、間違いないでょうか(笑)
牧野> いじられやすいタイプですよね。
 でも書評に関して言うなら、そう言うキャラだからこそいじる側のセンスが問題になるんじゃないかと思います。
 ちょっと間違えたらすぐに「素人の悪口」になっちゃいますからね。
雀部> けなしているようで、なおかつ読者に読んでみたいという欲求を起こさせる書評というのは、難しいです。私にはとうてい無理です(汗)
牧野> 恋愛小説に「恋愛のことしか描かれていないから駄目」とか、ホラー小説に「怖ろしいことばかり書かれてあるから駄目」とか言うことを批評とは言えないように、とことん馬鹿馬鹿しいことをやってやろうと思っている小説に「馬鹿馬鹿しいから駄目」ということは書評として成り立たないわけです。なのに田中さんの小説はそのように言われることが多い(まあ、多くは素人評ですけどね)。
 『ジャン・ゴーレ』は一番評するのが難しいタイプの小説だと思うのですけどね。
田中> 我孫子武丸さんがエキレビに書いてくれた「田中啓文『罪火大戦ジャン・ゴーレ 1』を読むのに半年かかった」というのが、一番的確にけなしてくれてました。本人は「褒め殺しならぬ『けなし活かし』だと言ってましたが。
雀部> 半年間も読む意欲を持ち続けることが出来たということでしょうね。
 各章が、順番に「復活の日」「宇宙の戦士」「宇宙兵ブルース」「宇宙戦争」「宝石泥棒」「生命の木」「人形つかい」「南総里見八犬伝」となっていますが、これはどういう基準で選ばれたのでしょうか。
田中> これはですね、ストーリーの流れを考えて、それにふさわしいものをそのときそのときでチョイスしました。とくに基準はありません。ただ、「宝石泥棒」だけは、この章題にしたいがために、惑星の名前を「ジュエル」にしました。
雀部> 駄洒落がやりやすいものを選ばれたのかと思ってました(汗;)
 『宝石泥棒』に出てくる奇天烈な動植物にもちゃんとリスペクトしてあって感心したんですよ。
 個人的には、“老魔砲O”が一番うけたんですけど(笑)あと、<生命の木>と<知恵の木>のアイデアも。
 『罪火大戦ジャン・ゴーレ 1』のような小説だと、謎解きも考えておかなきゃならないし、各有名作品のエッセンスも取り入れなきゃいけないし、読者が期待しているおバカもやらなきゃいけない、当然うまい駄洒落もとしたら、書かれるのに普通の小説の何倍も苦労されませんか。
田中> ギャグはなかなか理解されません。苦労するわりに、すごく低く見られるので、割に合わないです。このあたりのことは愚痴になるのであまり言いたくないのですが、小説やマンガで真剣に「笑い」を追求している「同志」の皆さんにはわかってもらえると思います。
雀部> 「笑い」を追求するには大変エネルギーが要るというのは、もっともっと喧伝されても良いと思います。
 パロディというか結果として「笑い」も追求した作品になっている『チュウは忠臣蔵のチュウ』は、いやはや大変な力作ですね。読みながら大爆笑したり、目を剥いて唸ったりでお腹一杯になり大満足です(笑)
 なんか作者もとても楽しんで書かれているような感じがしたのですが……
田中> あれは、自分では時代小説の王道だと思っております。真面目な話をすると、あれは忠臣蔵のパロディとして好き放題やる、というより、もし〇〇が〇〇だったら……という枠組みのなかで、忠臣蔵という人口に膾炙した物語の見方がどう変わるか、というのを講談+史実+歌舞伎を混ぜこんだなかでやってみたかったのです。一種の伝奇だと思っています。
雀部> そのいかにもありそうな“もし〇〇が〇〇だったら”がいっぱいあって、凄かったです。
 伝奇的というと、個人的には“ダカツ”がお気に入りのキャラです。卓越した技の持ち主なんだけどどこかとぼけていて。半村良先生だと、なんとか一族が出自だな(笑)
田中> 狂言回しなんですが、とくに正体とかのないキャラでしたね。見切り発車だったので、書きながらいろいろ正体を考えたのですが、ま、ええか、と思ってそのままにしました。
雀部> そうなんですか、敵味方で言えば敵役のほうなんですけど、なんか憎めない面白いキャラでした。
 今更ながらですが、「渋い夢」(『辛い飴』所載)第62回日本推理作家協会賞短編部門受賞おめでとうございます。正直なところジャズには全く詳しくないんですが、面白かったです。
 しかし、この短編集と『罪火大戦ジャン・ゴーレ 1』とでは、同じ作者が書いたとは思えないですよ(笑)
田中> なんでも書くように心がけています。私はジャンル作家ですが、ひとつのジャンルではなく、そのとき思いついたいちばん書きたいことを書くようにしています。結果的にジャンルにしばられないように見えるかもしれませんが、まあ、コウモリみたいなもんです。
雀部> そういえば、田中先生は“永見緋太郎の事件簿”シリーズの「落下する緑」がデビュー作ということで、元々SF作家であると同時にミステリ作家でもあられたんですよね。『郭公の盤』のインタビューで、音楽探偵の話が出てましたが、この“永見緋太郎の事件簿”は、音楽家探偵とでも言いましょうか、魅力的な主人公ではあります。
 で、前から疑問に思っていたのですが、近畿のSF作家の方には、ジャズと落語(お笑い)がお好きな方が多いですよね。筒井康隆先生を筆頭に、かんべむさし先生・堀晃先生の大先輩の方々もそうですし、これは何か理由があるのでしょうか?(笑)
田中> ほかのかたのことはわかりませんが、関西で少年時代を過ごすと、落語や漫才、新喜劇、コントなどはごく日常的に周囲に存在するので影響を受けないひとはいないと思います。落語は小学生のころから好きで、ラジオでエアチェックしたテープを飽きることなく毎晩聴いてました。
 ジャズに関しては、うーん、どうでしょうか。私に関してはたまたまとしか言いようがないですが、高校生のときにラジオで山下トリオの演奏(「ホット・メニュー」の1曲目)を聴いたのがきっかけです。もしかすると影響もろかぶりの筒井さんの潜在的な影響があるのかもしれません。とにかくそれを聴いて、ただちにアルトサックスはどうすれば入手できるのか、と近所を駆け回りました。
雀部> どちらも筋金入りなんですね。特に落語は小学生からだったとは。落語と言えば、《笑酔亭梅寿謎解噺》シリーズの最新刊『ハナシはつきぬ!』の帯に“波瀾万丈のクライマックス!”とあるんですが、ほんとうに最終巻なのでしょうか?
田中> できればいつまでも続けたかったのですが、版元の意向でしかたがありません。
 じつは、あのラストのあとに、もともと用意していたラストが続く予定だったのですが、ちょっと入りきらなかったので(100枚以上必要)、泣く泣くあそこでエンディングにしました。いつでも復活の用意はできております。
雀部> このシリーズの大ファンなのでもっと続けて読みたかったのですが、そういう大人の事情があったとは。しかし、ぜひ復活して欲しいものです。
 このシリーズ、最初は確かに謎解噺(落語ミステリー)になっていたんですが、途中からだんだんとミステリ要素が薄れて、青春落語噺がメインになってきたように思います。これは当初からの予定だったのでしょうか。
田中> 一回70枚という限られた枚数のなかで、落語ネタしばりで話を作り、謎解きミステリとギャグと竜二の成長譚を詰め込むのは無理だということを、3話目ぐらいでさとりました。基本的にあのシリーズはミステリだと思っていただかないほうがいいですね。
雀部> 本格ミステリではないかも知れませんが、ミステリ要素は結構濃厚ですよね。
 田中先生のジャズのCDは、前回のインタビューの折りに聴かせていただいたのですが、落語を演じられた、または落語家を志されたことはないのでしょうか。
田中> 人前で落語会としてちゃんと演じたことは、一回だけあります。三味線と鳴り物も入れて、「初天神」をやりました。25年、いや、もっとまえの話ですけど。
雀部> そうすると大学を卒業された頃でしょうか。どういう経緯だったのでしょう。
田中> 自分のジャズグループのライヴのとき、1ステージ目と2ステージ目のあいだに落語を挟もうということになり、落研のひとに稽古をつけてもらって、二カ月ぐらい練習してからやりました。
雀部> なんと、ジャズの演奏の間に落語とは、そりゃユニークですねえ。
 大阪とか神戸あたりでは普通のことなんでしょうか。
田中> まったく普通のことじゃないと思います。
雀部> あ、やはり普通じゃなかったか(笑)
 大学時代はなにか部活をされていたんでしょうか?
田中> 軽音楽部フルバンドというところに所属して、授業にはまったく出ず、ひたすらサックスを吹いてました。そのおかげで「落下する緑」が書けて、デビューできたので、留年しましたが、お釣りが来たなあと思ってます。
雀部> それって、本当に因果関係があるんですか〜(爆笑)
 「ハナシをノベル」についてお聞きしたいのですが、《笑酔亭梅寿謎解噺》のような落語ネタの小説を書かれるのと、新作落語を書かれるのとではどういうところが違うのでしょうか。
田中> もう、まるっきり別のものです。
 これは話せば長くなるのでかいつまんで言いますが、新作落語をかれこれ10本以上書いてようやくなんとなくわかってきたことがあります。それは、落語というのは案外不自由なものだということです。たったひとりで何人ものひとを演じられる、とか、時代も場所も設定も勝手に選べる、とか、どんな不条理な場面もSFXを使わず演出可能、とかいろいろすぐれた部分も多いのですが、落語というものは、
「こんにちは」
「おお、おまえかいな。こっち入り。今日はなんの用事や」
「じつは私、こういうことを考えつきまして」
 と卑近なところから話をはじめて、ふたりの会話のなかから順々にストーリーをつむいでいかねばならないので、ポーンと話を飛躍させたり、時間や空間をぶっ飛ばしたりすることは困難なのです。講談だと釈台を張り扇でパーンと叩くとそういうことができるのですが、落語で見台を小拍子で叩いて同じようにやると、どうも「落語っぽくない」感じになります。つまり、あまり壮大なネタを展開することはできないと思います。もちろん、そういう大胆なネタをやっておられるかたもいらっしゃいますが、それは一種の飛び道具であって、やるほうも聴くほうもそれを心得ての新作ということで、落語っぽさは希薄だと思います。ちょっと説明しにくい話なので伝わっているかどうかわかりませんが、今のところはそう思っています。
雀部> 『ハナシをノベル!!』に収録されてる作品だと、「真説・七度狐」が前者で、「時たまご」が後者という理解でよろしいのでしょうか。
田中> いや、あれはまだそういうことがわかっていなかったころの習作です。わかってきたのはごく最近です。
雀部> 了解です。ひょっとしたら分かってないのかもしれませんが(汗;)
 全然小説とは関係ないのですが、東京創元社で『辛い飴』のサイン本を購入したのですが、カレーがよほどお好きなんですか?(笑)
田中> え? なんのことですか?
雀部> 頂いたサインに「カレーが好き カレーうどんも好き カレー焼きそばも好き」と書いてあるんですが……
  (『獅子真鍮の虫』と『辛い飴』に頂いたサインはこちら)
田中> そんなことを書いた記憶は一切ございません。でも、カレーは大好きです。昔、六甲にあった「モンク」というカレー屋さんのカレーがいちばん好きだったのですが、三宮に移転したあと閉店してしまったので、今は甲東園の「カレーの市民アルバ」という店のカレーを愛好しております(いわゆる金沢カレーのチェーン店です)。インディアンカレー的な、かなり甘くてあとでガーッと辛さが来るタイプや、なんかやたらとトマトの味が強いタイプは好みではありません。家でもよく作りますが、作り方を述べだすと長くなるので省略。トッピングはラッキョもいいんですが、カレーに一番合うトッピングはじつはキムチだと思います。とろみの強いルーに辛めのキムチをまぶし、ご飯とともに口に運ぶと最高です。福神漬けにはそれほど思い入れはありません。
 カレーうどんも好きですが、専門店の高級カレーうどんより立ち食いうどん屋のカレーうどんが好みです。家で作るときは、カレーの翌日に和風出汁で伸ばして、カレー粉で味をととのえ、水溶き片栗でとろみをつけます。レトルトのカレーうどんもけっこう好きで、いつも常備しています。
 カレー焼きそばは……あんまり好きじゃないかも。ソース焼きそばや上海風焼きそば、キムチ焼きそばのほうが100倍好きです。
雀部> う〜ん、キムチカレーは確かにうまそうですね。
 カレーお好み焼きはどうなんでしょう?
 田中さんの作風は、食べ物で言うと「お好み焼き」かなぁと常々思っていました。
 色々な具材(ミステリとかSFとかギャグとか駄洒落とか)を小麦粉でまとめて、田中風ソースで味付けした一品!(笑)
田中> もんじゃ焼きでなくてよかったです。
雀部> 岡山では、あまりもんじゃ焼きは食べないですねえ。
 今回は、牧野先生との共著のインタビューから、長期間お付き合い頂きありがとうございました。
 最後に、執筆中の作品もしくは近刊予定がありましたらお教え下さい。
田中> 二月に、集英社文庫から「茶坊主漫遊記」という時代ものが出ます。同時期に、アスキー新書からジャズ本(小説ではありません)が出るはずです(これは今書いてるところなので)。あと、講談社文庫から「猿猴」という伝奇っぽい長編が出るんじゃないかなーと思います。「JaZZ JAPAN」という雑誌でショートショートの連載をしていますので、興味のあるかたは読んでみてください。
雀部> 楽しみにしております。
 《笑酔亭梅寿謎解噺》シリーズの復活も、ぜひ。←出版社の方々


[田中 啓文]
1962年大阪府生まれ。神戸大学卒。93年『凶の剣士』で第2回ファンタジー・ロマン大賞に佳作入選してデビュー。2002年「銀河帝国の弘法も筆の誤り」で第33回星雲賞日本短編部門を受賞。「渋い夢」で、第62回日本推理作家協会賞を受賞。
[雀部]
柳家金語楼師匠とか、エンタツ・アチャコのコンビとかTVで見ていた世代です。「笑点」も、立川談志師匠が司会の時から、前武さん、三波伸介さんの司会でも見てました。みんな亡くなられてしまいました……。本格的な寄席には行ったことがないのですが、岡山に三丁目劇場があったときは、行ったことがあります。

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