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Author Interview

インタビュアー:[雀部]
『クサヨミ』
> 藤田雅矢作/中川悠京絵
> ISBN-13: 978-4265075034
> 岩崎書店《21世紀空想科学小説》シリーズ
> 1500円
> 2013.8.31発行
 中学に入学したばかりの片喰剣志郎(かたばみけんしろう)は、学校に生えているタラヨウの木に触れたとき、指先に熱さを感じ、同時に燃え上がった火がどんどん近づいてくるのを感じて驚く。
  その後、剣志郎は、理科の梅鉢先生に勧誘されて入った「雑草クラブ」で自分がクサヨミのひとりであることを知らされ、自分と同じく植物を〈読む〉ことができる秋野希林と出会う。「クサヨミ…」「そう、クサヨミだ。草を読む人、つまり植物から何かを感じ取れる人のことをそう呼ぶ」学校のタラヨウの木に触れると見える、赤い炎と女の人。それはタラヨウが過去に見てきた記憶だという……

『日本SF短篇50 IV』
> 日本SF作家クラブ編
> ISBN-13: 978-4150311261
> ハヤカワ文庫JA
> 960円
> 2013.8.15発行
「計算の季節」(藤田雅矢作)収録
  夏になると、複雑な計算を必要とする科学者たちがやって来る村。畑には多くの電算草が茂り、それを使って複雑なデータ演算が出来るのだ。大型電算機を使う代わりに、電算草と精神感応して必要とされる複雑な計算に没頭する科学者と、それを世話する少年の交流を描いた作品。

『ひみつの植物』
> 藤田雅矢著
> ISBN-13: 978-4872902204
> WAVE出版
> 1400円
> 2005.5.5発行
 ピンクのたんぽぽ、虫を食べる草、杖になるキャベツ、脱皮する石ころそっくりの多肉植物、真っ赤なヒマワリ。子供が乗っても沈まないハスの葉。この地球上のどこかに、あっと驚くような植物が生えている。欲しい。育ててみたい。農学博士、ファンタジーノベル作家、本職は植物育種家!?こんな人が、愛とうんちくをこめて、珍品をご紹介します。

『つきとうばん』
> 藤田雅矢著/梅田俊作絵
> ISBN-13: 978-4774607122
> 教育画劇
> 1300円
> 2006.6.10発行
 第26回JOMO童話賞佳作受賞作。
 まあ、ひらたく言うと来年のお月様とお星様を畑で育てる当番に当たった一家のお話ですね。

『まいにち植物 ひみつの植物愛好家の一年』
> 藤田雅矢著
> ISBN-13: 978-4872902990
> WAVE出版
> 1400円
> 2007.5.13発行
 植物カタログを眺めて、タネや植物をお取り寄せして、タネをまき、花を咲かせ、実を食し、植物園へ出かけ、数百円で小鉢を買い込み、植物まわりの変な雑貨も買い集め、落ち葉を拾い、品種改良して世界に一つだけの花を咲かせ…愛しい。かわいい。おもしろい!風変わりな植物と暮らす日々は、異常に素敵。

『キャベツ めキャベツ』
> 藤田雅矢 ぶん/土橋とし子 え
> 福音館書店月刊予約絵本「ちいさなかがくのとも」69号
> 362円
> 2007.12.1発行
キャベツとめキャベツを種から育てるお話

『捨てるな、うまいタネ NEO』
> 藤田雅矢著
> ISBN-13: 978-4872904758
> WAVE出版
> 700円
> 2010.6.8発行
 '03/5/13発行の『捨てるな、うまいタネ』を大幅に改定・改稿したもの。
 リンゴを食べた後のタネ、ブドウの種、アボカドの種、スイカの種……なにげなくゴミとして捨てていたそんなタネを、ふと蒔いてみようと思ったことはありませんか。子どもの頃、アサガオやヘチマの種を学校で蒔いたときのことを思い出してみて下さい。自分が食べた果物のタネを土に蒔いてやることで、タネの命が芽生え、やがてそれは大きく育って、庭で再び実を成らせてくれるかも知れません。これまで花のタネの蒔き方や、果物を苗木から育てるための園芸書はありましたが、捨てていたタネを蒔こうという本はありませんでした。そこで、そんな思いを実現させる手助けの実用書をつくりました。タネの不思議の雑学から実際の種まき体験記まで、読み終えたあとには、あなたもきっとタネ蒔きがしたくなっているに違いありません。



雀部> 今月の著者インタビューは、2013年8月に岩崎書店から『クサヨミ』を出された藤田雅矢先生です。
 藤田さんお久しぶりです。前回の『星の綿毛』著者インタビューからいうと、もう9年経ったんですね。
藤田> お久しぶりです。もう9年ですか、実は『クサヨミ』が久しぶりの長い小説だったりするので、仕事のユルユルぶりがわかりますね(苦笑)。それでも、2013年は電子書籍で昔の短篇が少し読めるようになったり、『日本SF短篇50』に「計算の季節」が載ったりと動きのあった年でした。
雀部>  "eBookJapan"で読める電子書籍のことですね。現在9作品が読めるようです(SFマガジン読者賞受賞の「ダーフの島」も読めます!)
 「計算の季節」は電算草という植物と人間が共同で科学計算をするというお話で、そのアイデアがもの凄く好きなんですが、登場人物が中学生になったばかりということで、ジュブナイル小説としても読めますね。
藤田> 「計算の季節」は、自分でも好きな作品のひとつです。飛野元村はうちの祖父母の田舎がモデルですね。中学生ぐらいまで、夏休みには毎年行ってました。そんな記憶のかけらから生まれたのかも知れません。
雀部> また『NOVA 1』に収録の「エンゼルフレンチ」は、ミスドに始まりミスド終わるお話なんですが、なんとこれが壮大な宇宙空間と悠久の時の流れと愛情を紡ぎ出す心温まる短編になっているんですね。これも、世知辛い世の中を体験する前の中学生くらいにぜひ読んでもらいたいです(笑)
藤田> 世知辛い世の中を体験した大人の一息にもオススメです(笑)
雀部> 親御さんが安心して子供に薦められる作風ではあります。
 藤田さんは、子供向けというと『つきとうばん』とか『キャベツめキャベツ』の絵本を出されていますが、今回の岩崎書房から出された《21世紀空想科学小説》シリーズとどういうところが違ったのでしょうか。
藤田> 『つきとうばん』はイメージ先行、『キャベツめキャベツ』は「ちいさなかがくのとも」だったので、本当に芽キャベツを一シーズン栽培してきちっとまとめる感じですが、ともに絵が付くことが前提で本文は20枚程度です。
 一方、子ども向けとはいえ《21世紀空想科学小説》シリーズは、200枚程度ということだったので、挿し絵は入りますがこちらは小説ですよね。
雀部> 『つきとうばん』のイメージは、ものすごく素敵ですね。うちの孫に読んでやったんですが、ちょっと早いみたいでした(4歳児)
 対象年齢はどれくらいなんでしょうね。
藤田> ありがとうございます。いっしょに植物を育ててということになので、あさがおの栽培をする小学一年生ぐらい?ですかね。
雀部> そうか、ちょっと早かったか(汗;)
 なんと『キャベツめキャベツ』の本は、実際に育てることが前提だったんですか。
 めキャベツ育ててみたいです。
藤田> 「かがくの……」なので、考証がけっこう厳しいですよ。
 絵を描かれた土橋とし子さんも、タネから収穫まで体験して、実物を見て描かれてます。実はこれの原案は杖キャベツ(※注 Walking stick cabbage、英国ジャージー島で栽培される飼料用のキャベツというかケールで、硬い茎を乾燥させて杖にします。画像にリンク)を栽培して、おじいさんの杖を作るって話だったのですが、なじみがないということでボツに……なのでキャベツ、芽キャベツの他に、杖キャベツ、葉ボタン、ブロッコリーまで栽培してます。どこか、杖キャベツの絵本を出してくれませんかね。
雀部> 杖キャベツ、ほんとにでかいでなぁ。
 めキャベツも、絵本の通りに茎のまわりに沢山できるんですね。
 表紙に“ピンクのたんぽぽ,虫を食べる草,杖になるキャベツ,脱皮する多肉植物”と書いてある『ひみつの植物』には、杖キャベツの写真が無くて、『まいにち植物』のほうに紹介と写真がありました。
藤田> 『ひみつの植物』の方は、モノクロ画像でしたね。『まいにち植物』の方は、絵本用に育てている時だったかも知れません。
雀部> 『ひみつの植物』には、「植物SF文学」として『グリーン・レクイエム』『アレックス・タイムトラベル』『並行植物』『地球の長い午後』『星の綿毛』が紹介されてますね。
 そういえば、BsでTVドラマ版の『トリフィドの日』である『ラストデイズ・オブ・ザ・ワールド』をやっていたので見ました。
藤田> あ、それ見逃したかも。残念と思ったら、雀部さんに後編がまだあると聞いてちゃんと観ました。やっぱり、トリフィドいいですよね。
雀部> 『トリフィド』大好きなんです。TVドラマ版でも、女性が強くてうれしかった(笑)
 『クサヨミ』は、体育の苦手な少年が主人公で、昔どんくさい少年だった私は、ぐっと感情移入してしまいました(笑)
 元気な冒険SFもいいけど、こっち系のジュブナイルSFも、もっとあるとうれしい。
藤田> あら、雀部さんも(笑)。わたしも、昔(いまも)どんくさい少年だったので、そういう剣志郎に活躍してもらいたいと願って書きました。わたしは本当に中学校に入ったら運動部に入れと言われて、同じくちょっとどんくさかった友人も入るというので、なんと男子バレーボール部に入部。ま、向かないことはしない方がいいです。
 ますます、運動嫌いになりましたね(笑)。あのとき雑草クラブがあれば……。
雀部> バレーボール部に入られたんですか。チャレンジャーやなぁ。私は中学の時は放送部でした。私は雑草クラブより昆虫クラブがあったら入ったかもですが。
 岩崎書房から、書くにあたっての要望はあったのでしょうか。
藤田> いくつか企画案としてはありました。対象は小学校高学年から中学生。リアリティをともなって、科学分野への夢を育むきっかけになるものとか、ファンタジーと日常の間の話とか。東野さんからは、植物ものでどうでしょうとか。それで、一度岩崎書店を訪ねる機会があって、結局子どもの時に読みたかったもの書いてください、みたいな感じでしたか。
東野> 藤田さんには、ぜひ植物ものでお願いしたかったのです。きちんと受けていただいて、企画立案としてはうれしいかぎりです。ただ、担当編集者が、多数の植物を描きわけられるイラストレーターに頼まないと……と、悩んでいたようですが(笑)
藤田> イラストレーターはどなたがいいですかと聞かれたので、SFマガジンに載った植物系の短篇で「口紅桜」や「トキノフウセンカズラ」(ebookjapanで読めます。)でイラストを描いてもらった中川悠京さんにぜひと、あつかましくお願いしてしまいました。編集者の方も、中川さんの絵はご存知で、剣志郎や希林さんのイメージとも一致したみたいです。
中川> ちゃんと描けているか自信はありません(苦笑)
 専門の藤田先生にお見せするのは大変緊張しました。
 ただ私自身も元々植物を描く事が好きでしたので、資料探しも描く事も楽しかったです。
 小説を拝読するまで知らなかった植物とも会えました。

 剣志郎も希林も、お話の内容と植物の名前からイメージしました。
 剣志郎はカタバミです。よく見かける、特に変わったところはなくどちらかというと可愛らしいんですが根っこが良く伸びて実はとても強い子だと思います。

 希林はアキノキリンソウですね。1つ年上という事もありますが、なかなか気が強いです(笑)
 葉の形の通り尖がっているといいますか…
 でも、薬用にもなるし黄色く小さな花が集まる姿は可憐です。
 最初描いたものはちょっと優しかったみたいで、編集さんからアドバイスを頂いて眼をきつめにしたりしました。
藤田> おお、そんな考察がなされていたとは……(驚)
雀部> あ、中川さん初めまして。「アニマ・ソラリス」にようこそ。
 登場人物のイラスト、そんなところまで考慮されていたとは(驚愕)
 中川悠京さんは、SFマガジンの挿絵とか、「闇の守り人」や「ルーンの子どもたち」、ジョナサン・キャロル氏の著作等々の表紙画をいっぱい書かれてますね。著者インタビューで紹介した中でも菅浩江先生の『五人姉妹』や『カフェ・コッペリア』の表紙画もそうでしたし。よろしくお願いします。
中川> 中川です、横から失礼致します。宜しくお願い致します。
雀部> 子供さん向けということで、イラストを描かれるにあたって特に気を付けられたことはおありでしょうか。
中川> 描く前に編集さんからアドバイスを頂きました。
 表紙はリアル寄りではなく漫画タッチでなじみやすいもの、挿絵は婉曲的なものより場面をそのまま描く位の気持ちでというものです。
 その言葉が私にもとても判りやすかったので、それらに気をつけて描かせて頂きました。
 それでも剣志郎が「読む」場面などは自分も気持ちよくトリップしてしまって(笑)
 気をつけるのもちょっと忘れて、ただ楽しく描いてしまった時もあります。すいません…
藤田> 子どもの頃に読む本って、やっぱり表紙を見て手に取るとかありますもんね。
雀部> 大人でもジャケ買いとかありますし(笑)
 剣志郎の優しさと、中川さんのイラストのタッチは、絶妙にマッチしているのではないかと。ジュブナイル小説のイラストは、子供の理解力(想像力)の助けにもなると思うのですが、そこらあたりは注意して書かれるんでしょうか。
中川> ありがとうございます。子供向けに限らずですが、仰る通りメインである小説のイメージを膨らませるのがイラストの役目だと思っています。
 想像に慣れている子も慣れていない子もお話の世界に入りやすくなってくれたら嬉しいです。増幅器とか、案内所みたいなものでしょうか?例えがずれてるかも知れません(笑)
雀部> 増幅器・案内所、確かに。うちの孫なんかを見ていると、一歳(女児)くらいから「アンパンマン」とか「しまじろう」が大好きで、4歳になる男の子のほうも、文字だけの童話を読んでやっても、なかなか分かってくれないのが現状です。取り敢えずは日本語での理解力を上げてやらないといけないとは思っているのですが。"YOUTUBE"の、「ABC SONG」が大好きで、英語の発音は無駄に良いんだけど、日本語がまだあやふや(汗;;)
 将来的にはこういう世代が《21世紀空想科学小説》シリーズを読み継いでいくわけなので、イラストの重要性は高まってくるんではないかと予想してます。
 アニメとか漫画を否定するつもりは全くないのですが(私も大好きなので^^;)、画で総てを説明してしまうと、想像力を養うというか自分で考える能力を育成するという面から言うとそれだけでは物足りないし、最終的には文字情報だけで理解できるようになって欲しいと思ってます。その鳥羽口としての《21世紀空想科学小説》シリーズ(とイラスト)の存在が必要とされるのではないかと……
 そう思って小学校に上がる前くらいから、孫たちと一緒に音読しようと思ってます。たぶんあまり分からないとは思いますけど、小学校高学年になるころに、もう一度《21世紀空想科学小説》シリーズに戻ってきて、読み返してくれたら面白さを再発見出来て、SFとかファンタジーが好きになると嬉しい(という願望^^;)
藤田> 案内所、いいたとえですね。まず本をめくってイラストを先に見る子っていそうですから。で、なんだろうと読みたくなる。雀部さんも、たのもしい応援団です。そんなふうに読んでもらえたら、作者としてこれほどうれしいことはありません。
雀部> 今回は年末の忙しい時期にインタビューに応じて頂き大変ありがとうございました。
 最後に、平成26年の刊行予定とか、現在執筆中の作品とかがありましたらご紹介下さい。
中川> こちらこそ楽しい機会を有難うございました。
 現在はマンガボックスで「人間でした」という漫画の原作を担当しています。魂移植と青春物語、良かったら読んで頂けると嬉しいです。
雀部> 百雷さん=中川さんってことですよね。医学的に魂を移植するって垂涎のアイデアだと思うのですが、ホストが……ハ、ハムスターですか(笑)
藤田> こちらこそありがとうございます。いま星新一賞に関係したことでちょっと書いてます。3月頃に発表でしたよね。あとは、剣志郎や希林さんはあれからどうしているのかなって、書き終えてから実は気になってます(笑)。
雀部> 私も私も(笑)


[藤田雅矢]
1961年、京都市生まれ。農学博士。1995年、第7回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。同年、「つきとうばん」で第26回JOMO童話賞佳作。2007年、「ダーフの島」でSFマガジン読者賞受賞。著書に『星の綿毛』(早川書房)、イーシングル幻想館『幻視の果実』の小説のほか、『捨てるな、うまいタネNEO』(WAVE出版)などの園芸書もある。
「ふじたまの日々」
[中川悠京]
イラストレーター、漫画家。1972年新潟県佐渡出身。精霊の守り人シリーズ(著:上橋菜穂子/新潮社)」ジョナサン・キャロルシリーズ(著・ジョナサン・キャロル/東京創元社)ルーンの子供たちシリーズ(著:ジョン・ミンヒ/宙出版)SFマガジン挿絵(早川書房)「無限島(モーニングweb/講談社)」など、書籍装画・漫画で活動中。
「中中舎」
[雀部]
"eBookJapan"なんですけど、"ebi.BookReader4"が、なぜかFirefoxでは上手くDLできなくて、IEだとOKでした。例によって、65インチTVにて読書中。

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